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たまには魔王も旅をする  作者: きげん
3章 魔王と守護者の切なき愛情
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盗賊の真意

 ターナとの話を終えて、宿へと戻ったルイス達。

 ルイスの部屋……というより、それ程大きな宿でもないので、男部屋と女部屋で分かれており、ルイスとバレックが休む部屋に四人が集まっていた。


 話題となったのが、ターナの話に出てきた『緑風(ジン)の遣い』という義賊だった。


 「ジェイルを殺した義賊の緑風(ジン)の遣いは、元はシャンデルの義賊だったはずだ。それがなんでこのクロックベルンの地に居て、なんで他の村人を見逃して、ジェイルを殺したかだ」


 ルイスは、シャンデルで緑風(ジン)の遣いの噂を聞いているだけあって、(にわか)に信じられずにいた。

 それほどまでに、この義賊のやっていた事は村や街の人から支持されていたからだ。


 「でも、(あなが)ち間違ってないかも知れない。私がロズネスで聞いた噂では、それくらいの時期に緑風(じん)の遣いの噂を聞き始めたから……良い噂も、悪い噂も、どっちも入ってきてたわ。ま、噂なんて勝手に主観が入って変わるから、鵜呑みに出来ないけどね」


 つまり、緑風(ジン)の遣いの拠点は、今はこの周辺にあり、その行為は昔とは随分と変わってしまっているようだ。

 どんな事情かは知らないが、義賊だった緑風(ジン)の遣いは、今やただの盗賊に成り下がっているという事だ。


 「盗賊か……盗賊のぉ……」


 「そういえば、バレックを殺……じゃない、バレックの知り合いの自警団を殺したのも、盗賊だったのよね?」


 イリアは、バレックが殺された事を言いかけたが、レイチェルが居るので、踏みとどまった。

 そして、確かにバレックの故郷であるマーセルの街の自警団でバレックの親友であるノークが、何者かに殺されたのだ。

 それが、バレックを殺した盗賊と同じ可能性がある。


 「そうじゃ。じゃが、場所が全然違うからのぉ。全てを繋げるのも、どうかとも思っておる」


 「そうだな。可能性で言えば高くはないな。近くに居るのなら、叩いても良いけど……」


 「何故、ジェイルを殺しておいて、他は手を出さんのじゃ? 気紛れなのか? 意味が分からん」


 ジェイルのみを殺して、他の誰も手を出さない。

 何かそれに意味があったのか?

 本当に気紛れで殺したというのだろうか?

 何か目的があったとすれば、それは一体なんだというのだろうか?


 「何か裏はありそう……」


 ぼそりとレイチェルは考えながら呟く。

 殺された理由がある。

 それがジェイルじゃなけれぱならなかったのだとしたら……?


 「考えられるなら、ブラッドが狙いって事かしら?」


 イリアは、レイチェルの言葉に反応して言った。

 確かに、ジェイルを殺す理由があるとするなら、ブラッドだろう。

 では、そのブラッドをどうしようと言うのだろうか?

 その後、ブラッドは塞ぎ込んだ訳だが、それが狙いなのか?

 何の為に?

 結局は、意味が分からない。


 「ブラッドを狙って、そいつに何の得があるんだ? 守護者(ガーディアン)を嫌っていたのか? それとも、その復活を恐れたのか?」


 「どちらにしても、それならば、ブラッドをも殺しておくべきじゃろ。その後、ここへの攻撃や被害はないのじゃろ?」


 「だよな……それとも、もうブラッドが守護者(ガーディアン)としての自信を無くしたから、狙うのを止めたのかも知れない」


 それならば、何とか理由が通る気もする。


 「うーん、なんか納得いかない。大体数百年前に誇りを失った守護者(ガーディアン)に何の恨みがあると言うの?」


 「そうじゃのぉ……うーむ、分からんのぉ!」


 真相に近付けそうで近付けない状況で、バレックも少し苛立ってきていた。

 他のメンバーも唸るばかりで、何も思い浮かぶ事が無くなってしまったみたいだ。


 「じゃあ、もう相手の本拠地見付けて、乗り込みましょ!」


 シンプルが好きなイリアの結論は、当然シンプルなものだった。

 分からないなら、直接問い詰めれば良い。

 だが、その本拠地の場所までは分からない。

 レイチェルの噂が正しければ、この辺りに住処(すむか)があるのかも知れないが、心当たりはない。


 「そうじゃな。まだ奴らの居場所を突き止める方が早いやも知れんの」


 「あぁ、あんな話を聞かされたら、せめて仇討ちくらいしてやりたいな」


 「うん、許せない。見付けたらボコボコ……」


 多分、レイチェルならボコボコではなく、丸焦げである。

 こうして、またルイス達はここに滞在する事を決めた。

 どうやって殺したかは知らないが、ジェイルも相当な守護者(ガーディアン)であるのだから、盗賊の腕もかなりのものであると推測出来る。

 それでも、こちらのパーティーは、それに劣るとは到底思えない。

 むしろ、このパーティーに目をつけられたのだから、可愛そうと言う他ないだろう。


 「では、決まりじゃのぉ! その盗賊を見つけだして、成敗するのじゃ!」


 「腕が鳴るわぁ! やっと暴れられるのかしら?」


 イリアは、この旅が始まってから、まだ全力を出せていない。

 出会う相手が弱かったからだ。

 ロズネスで出会った、レイチェルもカノンも異常な使い手ではあるか、対戦相手としての登場人物でなかったからだ。


 「確かに旅が始まって、それほどのピンチってなかったからな」


 出会う敵と呼ぶ敵は強くなかった。

 ロズネスの村での魔獣の大群も、極論で言えば、ロズネスの街の被害を考えなければ、三人だけでも時間を掛ければ殲滅させる事は可能だったのだ。

 純粋な強い相手は、今までに現れていない。

 バレックを丸焦げにしたレイチェルくらいだろう。


 「何? そんなにピンチになりたいの? 無理よ。私が居るもの」


 規格外にして、史上最強と言っても過言ではないとも言える魔術師がパーティーに居るのだ。

 どう足掻いても苦戦を()いられる事はないだろう。

 それほどまでに強すぎるのだ。


 「良い自信じゃない? レイチェルとも一回お手合わせ願いたいわね」


 「いや。そういうの好きじゃないの」


 「ぶー。残念。」


 普通に断るレイチェル。

 イリアも別段気にする様子はなかった。

 闘う気がないなら、別に無理にまで土俵に引き()り込むつもりはないようだ。


 「それじゃあ、明日から行動開始ね!」


 「あぁ。気合い入れて行こうぜ!」


 ルイス達の盗賊退治がこうして決行した。

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