ターナの気持ち
ターナの家へと招かれたルイス達は、リビングでそれぞれ椅子やソファーに腰掛けたら、立っていたりする。
村長の家と違って、友達とお茶くらいはするだろうが、これ程の人数を招く事を想定していないので、テーブルを囲んで全員が椅子に座れるという事はなかった。
「ごめんなさい。皆様が寛げるスペースが無くて、本当にごめんなさい」
突然、押し掛けてしまったのはこちらなのに、ターナは必死に謝ってくるので、こちらが申し訳なくなってしまいそうになる。
「そんな、お構いなく! 僕らは全然平気なので!」
「そうじゃ。話を聞きたいのは、こっちの都合じゃからのぉ」
「そ、そうですか? あ、その前にお茶を出さないと……あ、お茶菓子あったかしら……す、すぐ買ってきます!」
「だ、大丈夫です! 気にしないでください!」
どうやら、幸薄い印象を受けたのは、ブラッドのせいではなく、ターナの心配性というか、苦労性のせいなんだろうと改めて感じてしまった。
「本当に大丈夫でしょうか? すぐに買ってきますよ? 話が長くなるかも知れませんし……」
「ターナさん。アタシ達が押し掛けちゃっただけなんで、本当に気にせず話してください!」
何度言っても、お茶菓子を買いに行こうとするのは、最早自分が食べたいだけなのではないか、と疑いたくなる程、全然言うことを聞いてくれない。
村長の苦労が少し分かった気がする。
「そこまで言われるなら……分かりました」
おもてなしをしたかったのか、非常に残念そうに言う。
ようやく、お茶菓子を諦めてくれた。
「では、話して貰おうか」
バレックは座らずに壁に寄りかかって、腕を組んでターナの話を聞く。
「はい……それでは、長くなると思いますが、ブラッドが、守護者の一族がどういう者なのかと言いますと……」
ターナは、落ち着いた口調で淡々と自分達の過去について話し始めた。
━━ブラッドと私は幼馴染みで、小さな時は良く一緒に遊んだりしていました。
ブラッドには守護者としての素質があったみたいです。
守護者は、そもそもがバレックさんの仰られた通りの情に厚い一族だと私も伝え聞いてました。
守護者とは、魔力を防御壁へと転化させる能力を秘めておりますが、その防御壁は決して魔力の力だけではないのです。
精神……強い意志が防御壁のクオリティを左右します。
守りたい、守り抜きたい、そういう意志こそが防御壁を強固な物へと昇華させてくれます。
命懸けとか、自分を犠牲にするような物では、弱く脆い壁しか出来ないのです。
だから、その強く、真っ直ぐで、誰かを守る、自分を守る、皆と共に生き抜く、そんな熱い想いを持った者こそ、守護者として誇っておりました。
いつしか、平和が続くと一族は、周りから必要とされなくなり、好戦的な一族でもなかったので、平和なら平和で、必要とされないなら、それはそれで、静かに暮らそうとなったみたいです。
その暮らしが続いている内に、いつしかそんな熱い気持ちも忘れてしまい、一族の平和のみに甘んじるようになりました。
そんな一族にブラッドは産まれたんです。
どう育ったのか分からないのですが、私と仲良くなった時には、既に頼りになる格好いい男の子でした。
誰もやろうとしない守護者としての修行をして、皆を一族の凄さを他の人にも見て貰うんだって、嬉しそうに夢を語ってました。
本当に天才でした。
周りの大人達も、別に力を使う事に反対をしている訳ではないので、守護者の誇りを継ぐ天才が現れたって賑わってました。
ブラッドは益々、守護者としての自覚を持ち始めて、修行に明け暮れました。
五歳の時には、既に大人達でも壊せない程堅い防御壁を作れるようになっていて、それはもうなんだか私も嬉しくて、最初は力を使うのが怖かったのですが、私も一緒になって修行をするようになりました。
あの時はとても楽しかったです。
ブラッドが自慢気に力の使い方を拙い言葉で説明してくれて、私ったら、全然覚えが悪いもんだから、ブラッドを良く怒らせてしまうんだけど、それでもブラッドも一生懸命になって私にもっと分かりやすく教えようと努力してくれた。
本当に嬉しかった。
時間が経つのを忘れちゃうくらい夢中になって、ブラッドと毎日朝から夕方まで練習してるの。
六歳になった時には、勇者と一緒に旅をして、伝説みたいに魔王の攻撃を防いでやるんだって言ってて、私もブラッドなら出来るって……ブラッドならどんな攻撃からだって守ってくれるって思いました。
今のブラッドとは想像出来ないくらい、真面目で熱くて、眩しくて、格好良くて、真っ直ぐで素敵な守護者でした。
そして、八歳の時、ブラッドに弟が産まれました。
弟の名前は、ジェイル……ジェイルもブラッドの背中を見て育ったせいか、とても才能に溢れてました。
そして、そこからブラッドの運命が変わってしまいました。




