魔族の復活
バースモアの魔王の根城の一室に数名の魔族が集まって何やら話をしている。
一人は、百八十センチの長身と細目が特徴的なディオス、もう一人は身長は百七十と普通くらいだが、体格は筋肉質で、ボサボサな黒髪をしていて、身体に張り付くような特異な服を着た男、もう一人が黒のロングヘアーに艶かしいまでの細く、出ている所がしっかりと出た身体に、こちらもその身体にぴったりと密着して、露出が高い事もあり、そのボディを一層引き立てている女が居る。
「ねぇ? ディオス、本気であれを魔王様とか言ってるの? あんなの器だけで中身別人じゃん! なんでこんな事になってんのよ?」
女は頬を膨らませながら、ディオスを責めるように言う。
「そう言われましても、私が目覚めた時には、既にそうなってましたので、何ともご説明しようもございませんよ。アネスさん」
「ふん、それは良いが魔王様本人が何処に居るのかは、分かってんのか?」
「勿論です。ロズネスという村に、つい先日まで居られたようですよ」
「ロズネス? なんだその村は? 聞いた事がないぞ?」
男は、アネスと呼ばれた女に目配せするも、アネスも首を横に振って知らないとリアクションして返す。
「ここ二十年程で出来た魔術師の村のようです。何でも、そこに恐ろしい魔力を持った魔術師が居て、魔王様はその魔術師と勇者と一緒に旅をされてます」
「はぁ?」
「はぁ?」
「ちょっと! ディオス! 魔王様が勇者と旅してるってどういう事よ? いい加減な事言わないでよ!」
アネスは、怒りながらディオスへと詰め寄る。
その勢いに押されてディオスも少し後ろへと仰け反る。
「いやぁ、ですから、私に言われましても困ります。何か魔王様にもお考えがあるのでしょう?」
「考えねぇ……」
「まぁ良いわよ、別に。私は魔王様の所へ行く! あんな偽物に用は無いのよ!」
そう言うとアネスは部屋を出ようと扉の方へ向かう。
「それなら、今度はアダインへと行ってると思いますよ?」
「そ。ありがと!」
そのまま返事だけして、振り返る事なく、アネスは部屋を出て行った。
「良かったのかよ?」
「何がですか?」
「勇者とか、他の人間と一緒なら素性は隠してるんだろ?」
「あ……」
ディオスという男、しっかりしているように見えて抜けている所があるようで、それを見て呆れ返る男。
「まぁ、勇者には名乗ってるみたいでしたよ? 大丈夫でしょう」
「勇者に名乗ってるって……どう大丈夫なんだよ」
「何か色々と事情があるみたいです。今回の魔王様は、本当にどうにかするおつもりなのでしょう」
ディオスの言葉に、男は腕を組んで暫く考え込み、部屋の中を少し歩き回る。
「……それで、今の魔王様は、どういう状態なんだ?」
「自警団の人間の身体を借りているようですよ。それほどの力は持っていませんが、魔王様の身体本体と一度やり合っているみたいで、腕一本分の魔力は取り込んでいますね」
「それで、アイツはまだ目覚めてないんだよな?」
「ランディスさんの事ですか? えぇ、まだ目覚めてませんね」
そこまで聞くと男は大きく溜め息をつく。
「どうかしましたか? グラノスさん」
「いや、何でもない。俺も単独で行動させて貰うから、ディオスは、あの偽物をちゃんと見張っておけよ」
「それは、グラノスさんに命令されるまでもなく。私は魔王様の為にしか動きませんよ」
「ふん、大した忠誠心だな」
「それが私ですから」
「今、ランディスが目覚めたら厄介な事になりそうだからな……ディオスの言う事が正しいな、今の魔王様じゃあ、あの偽物もどうにも出来ないだろう」
グラノスは、腕を組むのを止めた。
何を考えているのか、分からないが、ずっと深く悩んでいるようにも見えた。
「ディオス。後は頼んだ」
考える事を止めたのか、そう言ってグラノスも片手を軽く振って部屋を後にする。
「グラノスさんも、何やら思い詰めてましたね。魔王様……今回ばかりは、貴方が思ってる通りにはならないみたいですよ」
一人取り残された部屋でディオスは呟いた。




