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たまには魔王も旅をする  作者: きげん
3章 魔王と守護者の切なき愛情
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お金は大事です

 ロズネスの村でレイチェルを仲間にした勇者一行は、四人と一匹で旅を続けており、ノーフェンの街へとやってきていた。


 ロズネスの村では、かなりの日数滞在してしまったので、バースモアへと向かう途中の街へと宿を取る為によっていた。

 このノーフェンの街は、主に薬や漢方薬を精製している事もあってか、衛生面にも気を使われた綺麗な街だった。


 そんな街の噴水のある円形の広場で、ルイスは他のメンバーから何故か責め立てられていた。



 「おい! どうするんじゃ? これからどうやって生きてゆくつもりじゃ!」


 あのバレックもルイスをキツく当たっている。

 それも仕方がない事である。

 ここに来て、勇者一行、最大の危機を迎えていたのである。


 「仕方ないだろ!? 俺だって反省してるよ! ちょっと目を離した隙に無くなってたんだ! 皆だって近くにいて気付かなかったんだろ?」


 「だけど、どうするのよ? せっかく街に着いたって言うのに、お金が無いんじゃ泊まれないし、これからの食糧も買い込めないのよ?」


 そう、ルイスは旅の資金を()られたのである。

 本日の宿泊のみならず、今後の旅が(まま)ならなくなってしまう。

 こうなると強さ等関係ない。

 ルイスを責めるばかりで、これからの方針がまるで(まと)まらない。


 「私は平気。お金無くても、ずっと旅してきたから」


 「レイチェルよ。お主程魔力があれば何週間か飯を食わなくとも生きていけるのだろうが、ワシらは違うのだ」


 レイチェルの魔力は、王宮魔術師を遥かに(しの)ぐ魔力を誇っている。

 村を壊滅させてからというもの、これ以上の力は必要無いと感じて、まともな鍛練はしていないのだが、それでも成長盛りの肉体を維持しているので、衰えるという事を知らない。


 「頑張って、掏りを捕まえて、返してもらおう!」


 「で、その掏りって、どんな奴よ?」


 「……………」


 ルイスは気付かない内に掏られていたので、掏った人物等分かるはずがなかった。


 「お主……本当に勇者か?」


 本当に魔王かどうかも分からない奴に、勇者かどうか疑われてしまった。

 それでも、今回ばかりは言い返す事が出来ない。


 「みんなで旅って、大変ね」


 レイチェルは一人旅しかしてなかったので、こんな非常事態でも、賑やかに騒いでいるのが、楽しいらしく機嫌が良い。

 三人のやり取りを見ながら、視線の先に見覚えのある魔術師の姿を見た。


 「あれは……」


 レイチェルは、考えた。

 そして、すぐに結論に至った。


 「みんな、ここで話を続けててくれて良いから、置いてかないで」


 「ぬ? レイチェルよ。どこへ()くのじゃ」


 「すぐに戻る」


 端的に伝えて、レイチェルはその場を離れた。


 レイチェルは、先程見掛けた魔術師を追っていく。

 そんなに離れていなかったので、すぐに姿を捉える事が出来た。


 「待ちなさい。あなた『そよ風の盗人(アウラ)のジャネス』ね」


 「あら、お嬢さん。(わたくし)の事を良く存じてらっしゃるのね」


 黒のローブに包まれながらも、その抜群のプロポーションを隠しきれず、紫のウェイブされた髪が更に(なまめ)かしさを演出しているようだった。

 ジャネスは、その美貌と魔術と手先の器用さから、多くの街でその手腕を奮い、多額の金品を盗み出していた。

 尋ね人とされるも、魔術師の実力も相当な者で、賞金稼ぎ、聖騎士達も返り討ちにあったり、取り逃がしたりと、手に負えなかった。


 レイチェルが何故そのジャネスを知っているのかというと、ロズネスの南の丘の家に閉じ籠っていた時、暇潰しに本を読み漁っている内に、読む本が余りにも無いので、指名手配犯が纏めて記載された本すらも読んでいたのだ。


 「あなた、さっき、男から財布を掏ったわね?」


 「何の事かしら? (わたくし)は、その様な小さな事はしない主義なので、非常に心外ですわ」


 「間違い。それならそれでも良い」


 どうやら、レイチェルはこのジャネスが財布を掏ったのだと思ったが違うようだった。

 泥棒の話を鵜呑みには出来ないが、プライドは高そうなので、本当に違うのだろう。


 「あら、諦めのよろしい事で、助かりますわ」


 「えぇ、あなたを捕まえて引き渡せば、お金になるもん」


 指名手配されている以上、賞金が懸けられている。

 盗んだ本人で返して貰えれば、満点ではあったが、仕方ない。

 余り騒がしくしたくないので、すぐに終わらせるとしよう。


 「うふふ、(わたくし)をですか? お嬢さん、(わたくし)の実力まではご存知無いのでしょうか? 止めておく事をおすすめしますわ」


 そう言いながらも、既に身体の周りには風を纏わせてローブを揺らめかしていた。


 「お互い様。あなたは私の実力を知らない」


 「そ、じゃあ優しく眠らせてあげますわ!」


 優しくという言葉とは真逆に、放たれた魔法は、地面をガリガリと風の刃で削りながら、レイチェルへと襲いかかる。


 まるでレイチェルは、空を飛んでいるような低空飛行で移動し、構わずにジャネスへと向かい、レイチェルを襲う風の刃は触れる前にレイチェルの魔力によって消し去られ、その事態を飲み込めないジャネスは茫然と立ち尽くしていた。

 そこへ雷を掌に凝縮した魔力で、ジャネスを撃った。


 その威力は、言うまでもなく凄まじく、轟音と共にジャネスは黒焦げになって倒れてしまう。

 ジャネスの美貌が見事に台無しにされてしまった。

 その音に街の者も集まってきて、ルイス達も駆け付けてきた。


 「お、おい。レイチェル! 何があったんだ?」


 「この人は、指名手配。賞金はなんと五十万ゴールドよ」


 「かはは! さすがは、レイチェルじゃな! お主となら、どこまでも旅が出来そうじゃ」


 「別に……大した事ないわ」


 レイチェルは赤らめた顔を隠す様に後ろへと向いて、答えた。


 「ふーん、この女がねぇ。ちょっと闘ってみたかった……」


 イリアは不服そうだった。

 こうしてルイス達は、ジャネスを引き渡して、当面の資金を確保する事が出来た。

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