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たまには魔王も旅をする  作者: きげん
2章 魔王と魔術師の哀しき孤独
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二度目の敗北

 魔術師の鍛練所を出て、バレックが先行する形で、ルイスとイリアは、後を追い掛ける。

 バレックには、化け物と呼ばれる者の魔力がハッキリと分かるらしいので、足取りに迷いはない。


 「なぁ、バレック。なんで、最初からその魔力に気付いてたなら、そこに行こうとしなかったんだ?」


 「いや、それは、お主らも気付いておると思っておったから、言うまでも無いと思っておってな。どうやら、魔力を肌で感じ取るのは、魔族の特性のようじゃな」


 そう言うバレックは、いつもの表情に戻っていた。

 やっぱり気分屋なのだろうか、切り替えが早くてついていけない。


 「どんな人なんだろ? 相当凄い魔力なんだよね?」


 「ぬ? あぁ、実際に会っておらんから、何とも言えんが、村長の魔力を遥かに凌いでおるぞ」


 「そんなにか……そういや、さっきのライドって男じゃ、やっぱり駄目なのか?」


 「才能は間違いなくあるのではないか? 十年もすれば、そこそこの魔術師にはなるじゃろう。しかし、今使える程に強いとは感じんかったのぉ。」


 こういう所は素直な評価なのだろう。

 ちゃんと認めてはいるが、現実的な評価と言った所だ。


 「あのシルビアって子は?」


 子、と言う程に子供では無いだろうが、見た目と喋り方がそう言わずにいられないくらい幼い感じではあった。


 「あれは、分からんな。魔力はライドと言う男よりあるのは間違いない。じゃが、技術面と精神面が弱い故に、魔力を使いこなせておらん。地力さえつけば、王宮魔術師くらいには、なるのではないか。まぁ、結局は努力次第じゃ」


 王宮魔術師は、現状で言えば、純粋な戦闘の魔術師では最高位である。

 あの娘が、そんなに強くなるものなのだろうか……。

 才能だけではどうにもならない事もあるので、バレックの言う通り、最終的には努力次第なのだろう。

 って、あれ?


 「おい、バレック! そっちは村の外に出るぞ!」


 「当たり前じゃ、村の外から、魔力を感じるんじゃからな」


 バレックは、首だけ振り向いて言ってきた。

 考えれば、化け物と呼ばれているからには、村の中でのうのうと生活は出来ないのだろう。

 そう思うと、疎外されている分尚更可哀想に感じる。


 「かはは!近付いてみると更に色濃く感じるわ! この魔力は、何やら懐かしさすら感じさせるな」


 「それは、人間じゃなくて、魔族が住んでるのか?」


 それなら、人間じゃない、化け物だ、と言われるのも分かる気がする。


 「お主は馬鹿か。魔族の魔力なら、それこそ、初めからそう言うとるわ!」


 「それじゃあ、何で懐かしいのよ?」


 「分からんな。ワシは、先代魔王から、少しばかり魔力を引き継いでおるから、その魔力のせいか、ワシの知らん事も妙に懐かしく感じる時がある。じゃから、先代魔王が似た魔術師と会っていたのではないか?」


 人間離れをした魔力を持つ魔術師が、何千年も前に存在していた。

 長い歴史を考えれば、異端児や常識はずれの天才が何人か産まれていても不思議ではないか。


 「あの離れのようじゃな」


 村からそれほど遠くない場所に小さな丘があり、そのてっぺんに小屋が建っていた。

 あの小屋の中にそんな凄い人物が居るのだろうか。

 少しばかり緊張してきた。

 あの村の人達の恐れ具合から、いきなり攻撃とかしてこないだろうか、心配もある。

 さすがにそんな危ない奴なら、こんな所に住まわせるような事はしないだろう……。

 いや、そもそも、何故これ程()み嫌われて、村の外とは言え、住まわせているのだろうか。

 それとも、住みついているのか。

 村長のカノンは、どう思っているんだろうか。


 木で造られた普通の家だ。

 近くで見ると、一人で住むには、少し大きめだろうか。

 煙突もついているし、三部屋程はありそうなので、小屋と言う認識は改めよう。


 「おい! 誰かおるか?」


 何の躊躇(ちゅうちょ)もなく、ぶっきらぼうに扉を叩いて、大声で家の住民を呼ぶ。


 「おーい! 早く出て来んか!! 居るのは、分かっておる!」


 お前は取り立てか何かか?

 まだ大して間隔も経ってないと言うのに、容赦なく呼び掛ける。

 堪らずなのか、普通に開けに来たのか、扉が開いた。


 「なんじゃ! うるさいのぉ!! そんなにやらんでも出るから待たんか!」


 家の中から、灰色のヨレヨレのローブを(まと)った、髪の毛は無く、シワシワで白い髭を胸近くまで伸ばした男が出てきた。

 この老人がそうなのだろうか。

 もし、バレックが言っていた通りの魔力の持ち主なら二百年程生きているのかも知れない。

 それなら、確かに人間にしては、化け物のような生命力だろう。


 「す、すみません! 突然騒がしくしてしまって……。僕は勇者のルイスと言います。こっちの連れがバレックで、もう一人がイリアです」


 「……それで、その勇者が何の用じゃ」


 「あぁ、いや、用事と言う程ではないのですが、その、魔王を封印する為の仲間を集めておりまして……」


 「ふんっ! そんな事なら、無駄足じゃったな!! さっさと帰ってくれ!」


 ルイスも老人の威圧感に負けて、言われたい放題に言われて、言い返す事はしなかった。


 「何を偉そうにほざいておる!! お主に用は無い! お主こそ、さっさとこの膨大な魔力の持ち主を呼ばぬか!!!」


 さすがは魔王様、老人の対応にも、ものともせずにその上からものを言うのであった。

 いや、そんな事よりも、目的の人物は、この老人ではなかったらしい。

 すっかりと雰囲気に飲まれてしまって、この老人が化け物かと信じ込んでいた。


 「な、何をぬかす! ここには、儂以外に誰もおらんわ!」


 「ワシにそんな嘘が通じると思うておるのか!? もうバレておるんじゃ、さっさと出せ!!」


 なんか、本当に取り立てみたいになってきている気がするのは、気のせいだろうか?

 この状況を仮に誰かに見られたら……おじいさんを相手に容赦なく取り立てを行う三人組にしか見えないだろう。

 これ以上、勇者のイメージを悪くするのは止めてくれ!


 「き、貴様ら何者なんじゃ? 一体誰に何を聞いてきたんじゃ?!」


 「そんな事は知らんわ!! ワシはとにかくこの魔力の持ち主に会いたいだけじゃ!!」


 完全にバレている上にバレックの勢いに、老人は次第に怯んでしまった。

 切り返す言葉が無くなったのか、唸る声しか聞こえなくなった。


 「うるさい。もう良いから消えてちょうだい」


 老人の後ろから、小さく女性の声が聞こえた。

 暗がりからうっすらと姿を現したその姿は、見た目十五か十八くらいの少女で、黒のローブにフードを被っており、肌は白く綺麗で笑えば可愛いのだろうが、その険しく人を(さげす)む表情が台無しにしてしまっている。

 そして、フードからチラリと見える髪の色は赤かった。


 「おぉ! お主じゃな!! どんな人物かとおも――」


 バレックが少女に話し掛けようとした瞬間に、彼女は(てのひら)をバレックへと向けて、そのまま何の躊躇(ためら)いもなく、風の魔法を放った。


 それはまるでキャノン砲のようなレベルで、バレックを数十メートル先の大木まで、ぶっ飛ばした。

 物凄い音と共に大木にぶつかったバレックは、そのまま倒れ、大木は暫くざわざわと揺れ続けた。


 「大丈夫。死なない程度にはしておいた」


 彼女は、そう言って扉を閉めた。

 取り残された二人。

 ルイスもイリアも茫然と立ち尽くしていたが、暫くして思考が動き出したのか、バレックへと駆け寄った。


 「お、おい! バレック!! 大丈夫か?!」


 「死んでないわよね?」


 バレックは、呼び掛けには全く反応せず、慌てて傍まで行くと、息はあった。

 完全に気絶してしまっていた。

 とりあえずは、安心したが、二人はバレックを両側から担いで、


 「ねぇ、ルイス……」


 「……なんだ?」


 「あの子、呪文とか唱えてなかったわよね?」


 「……あぁ」


 そう、一番衝撃的な事は、セリナの村で棍棒の攻撃に耐え、呪文ありの魔法すらも受けきったバレックが、呪文無しで、しかもあたかも加減したような口ぶりの少女の魔法一撃で気絶させられているのだ。

 セリナの村から、もう一週間程経っているという事は、バレック自身も魔力も身体も馴染んできて、あの時より力もついているにも関わらずだ。


 理解が及ばないまま、とにかくバレックを連れて、カノンが用意してくれている宿へと退散する事にした。

 魔王復活後、通算二度目の敗北である。

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