彼女が欲しい
ツッコミ「はい、こんにちは~。皆さん元気してましたか」
ボケ「こんにちは。俺、新しい彼女出来ました。皆さん元気してました?」
ツ「挨拶にさらっと紛れ込ませてたけど、お前もう新しい彼女出来たの?」
ボ「はい、出来ました」
ツ「前の彼女と別れてから一週間しか経っていないのに」
ボ「そうね」
ツ「いいですねぇ。イケメンは。カワイ子ちゃんとっかえひっかえで」
ボ「人聞きの悪いこと言うな。どうしたの、急にしょんぼりして」
ツ「だって俺、彼女いないんだもん」
ボ「そだね」
ツ「生まれてから一度も彼女がいたことない」
ボ「ホントだね」
ツ「そこ突っ込むとこでしょ?産声上げた途端に彼女出来た奴がいたら見てみたいわ!って、そんな話どうでもいい」
ボ「君が始めたんでしょ」
ツ「俺が言いたいのは」
ボ「はい」
ツ「俺も彼女が欲しい!誰か紹介してくれない?」
ボ「最初からそう言えばいいのに。いいよ」
ツ「え、ホント」
ボ「新しい彼女の友達が彼氏募集してるんだ。お前にどうかなって思っていた」
ツ「嬉しいな。どんな子?」
ボ「スマホに写真撮ってあるから見せるね」
ツ「どれどれ。おおっ。結構、カワイイな」
ボ「そうだろ」
ツ「出てるところは出てるし、引っ込んでいるところは引っ込んでて」
ボ「ボンキュッボンってね」
ツ「だけど」
ボ「なに」
ツ「肌の色が」
ボ「うん」
ツ「緑色、なんですけれど」
ボ「そうですね」
ツ「そうですねって、何で緑色?おかしくない?」
ボ「だって地底人だから」
ツ「ちていじん?!お前の彼女、地底人の友達いるの?すごいな」
ボ「全然。俺の彼女も地底人だから。なんだその疑いの目は。ほら見ろ。これが証拠写真だ」
ツ「別に疑ってもないし、証拠も求めていないって、うわぁホントだ。彼女も緑色!」
ボ「どうだすごいだろ」
ツ「自慢になるのか?」
ボ「すごくカワイイし、ナイスバディだろ」
ツ「確かにそうだけど。どうやって地底人の彼女と知り合ったの?」
ボ「俺と貴様の仲だからな。特別に教えてやろう」
ツ「どうして急に上から目線?」
ボ「あれはバイトの帰り。とある公園の前を横切った時の事だった」
ツ「そして唐突に語り始める」
ボ「男子小学生達が未確認生物を囲んで棒切れで叩き、足で蹴って苛めていた」
ツ「出だしからみんながよく知っている昔話風なんですけれど。で、何その未確認生物って?」
ボ「モグラ」
ツ「モグラかい!まあ、海亀は公園にはいないよな」
ボ「に、よく似た顔のモグラの着ぐるみを着たおっさん」
ツ「続きがあったんか。それもおっさん!」
ボ「これをあげるからモグラを苛めるなと、俺はお前に借りていたゲームを彼らに差し出した」
ツ「勝手に俺のゲームを小学生にあげるんじゃない!あれ十八禁だぞ」
ボ「モグラは、“助けてくれてありがとう。お礼に地底城に招待します”と、俺を背中に乗せてせっせと手で土を掘り出した」
ツ「すごく時間が掛かりそうだな」
ボ「地底には立派な泥の城が建っていた」
ツ「立派そうには見えないな」
ボ「地底城ではモグラ姫が俺を出迎えた。モグ男を助けたお礼にと、飲めや歌えの宴会を開いてくれた」
ツ「モグ男?モグラの着ぐるみのおっさんの事か」
ボ「違う、モグラによく似た顔のおっさんだ」
ツ「そこ、訂正の必要あるの?」
ボ「泥の宮殿ではモグラ姫が泥の笛を吹いて、緑色の地底人とムカデやゲジゲジが舞い踊る」
ツ「想像するだけで気分が悪くなるな。ごちそうも出たんだよね」
ボ「はい。地底の珍味がうにょうにょと大量に」
ツ「うげ。その話はパス。彼女との馴れ初めを聞かせて」
ボ「モグ男の背に乗って地上に戻る時、私も連れていってと、モグラ姫が俺の背中に手を回して、そのまま一緒に」
ツ「ロマンチックだね。二人はイチャイチャと暮らしましたとさ、めでたしめでたし」
ボ「そうなればいいんだけど」
ツ「違うの?」
ボ「地底人って太陽にすごく弱いから、昼間はモグラに変身して土の中にいるんだよね」
ツ「そうなんだ。夜だけ人の姿に戻ってイチャイチャか」
ボ「人の姿に戻るけど、夜は全身がぴかーっと光って眩しくて見てられない」
ツ「じゃあどうしてんの?」
ボ「モグラ姫には照明になってもらってます。電気代浮くし、夜中に一緒に外出すると明るくて便利だよ」
ツ「イチャイチャどこいった―」
ボ「明る過ぎるのが難点だけど。お前に紹介する子は、両目が光るだけだから大丈夫」
ツ「大丈夫じゃないだろ」
ボ「気に入らない?じゃあ、こっちの頭が光る子の方がいいかな」
ツ「だから、光るとかおかしいでしょ!肌も緑だし」
ボ「カワイイし、性格良いし、スタイルいいし。何が不満なの?」
ツ「初めて付き合う子は、普通の女性がいいの。肌が緑色じゃなくて、夜に光らない女の子を紹介してよ」
ボ「困ったな。地上の女の子で紹介できるの、妹しかいないんだけど」
ツ「お前の妹かあ。ちょっと写真見せて」
ボ「はい、これ」
ツ「やっぱ、地底人でいいです」
二人「ありがとうございました」
お粗末様でした~。