禁断のラヴァーズ
多分長編バージョンの投稿は相当先
無理やり近くに投稿しても良いけど多分ペースが大幅に落ちる
静けさの溢れる深い森の奥。
まだ幼い少年が一人、虚しさと苛立ちを抱えて立ち尽くしている。
彼はそこに存在してはいけない。
何故なら、彼は人間だから。
奴隷扱いを受ける地位にある人間、ヒューマンと呼ばれる種族は指定された溜まり場から出る事を許されない。
それにも関わらず、彼は人間の溜まり場から出てしまった。
偶然、その場を人間の上位種であるエルフの少女が隠れて見守っていて、彼はその事に気付くまでに少しばかり時間がかかった。
お互いに一瞬見つめ合う。
瞳の輝きは同じように好奇心に輝いていて、彼らはまだ種族間の侮蔑を理解し得なかった。
だからこそ、惹かれ合う様にして互いに声をかけようとした。
「あの」
「キミは」
少年は自分と比べて若干耳が長く、幼いながらにして確立された圧倒的な美貌を持つ銀髪の少女を可愛らしいと思った。
相手を遮ってしまい、どうして良いか互いに戸惑うその最中、優しく森の風が吹いている。
それが少年に勇気を与えた。
「キミは本当に人間?」
「人間……?」
人間とは、ヒューマンの間で未だ使われる自分達ヒューマンの名称だ。
かつてはどの種族も皆、人間と呼ばれていた。
区別が必要なかった時代では、それで良かった。
しかし、今は必要だ。
「多分……違う、私はエルフ」
人間という言葉を知らずとも、聡明な種族として有名なエルフである彼女は彼の言いたい事を理解し、必要な答えを返した。
エルフという種族を少年は知っていた。
ヒューマンの敵。
もしも自分の種族が知られてしまったなら、どれだけの危険が自身の身に及ぶかも又、知っている。
警戒を隠し切れないままに彼は彼女の後に言葉を続けた。
「そっか、ここで何してるの?」
そうした様子が可笑しかったのか、彼女は楽しそうに笑い始めて、落ち着いた頃には少年は少なくとも彼女が敵ではないという発想に辿り着いていた。
「何で笑うの」
若干拗ねた答え方をすると、飛び掛かってくる。
敵意は決してなく、いやらしい手つきのしなやかな指によってこそばゆい感覚が脇からお腹にかけて発生した。
「あっはははははっやめっ!」
「ふふ、こっちの方が良いよ」
唐突な可愛がりに気付けば少年の僅かな敵意さえも消え去っていた。
安心した彼は自己紹介をする。
「僕はライト、君の名は?」
「パニスだよ」
「エルフって言ってもみんなが言うほど怖い奴じゃないんだね。 そうだ」
良い案が思いついた、と言う表情をしたライトにエルフの少女パニスが首を傾げる。
それを見て少年期特有の飾り気ない活発な笑みを浮かべ、彼は言う。
「僕の友達に会いに来て! きっと仲良くなれるよ。 そっちの友達がいるなら連れてきてくれても……」
その言葉を発して、気付けば先程存在していた期待は不安と後悔にすり替えられていた。
何があったのかと戸惑う彼に、残酷な真実が告げられる。
「ごめんね、エルフとヒューマン……えと、人間? が交流するのは禁止されてるの」
「えっ……?」
彼女の顔は悲しげで、何かを怖がっているようにみえた。
こんな幸せな風景の何処に怯える要素があるのか、未だ幼いライトには理解出来なかった。
「エルフと人間は昔喧嘩してて、ずっと仲が悪いの。 だからね」
お別れになる。
彼はそう思った。
しかし、続く言葉は正反対の意味を持っていた。
「ここで会うのは私達だけの秘密。 せっかく会えたんだから、お別れなんて勿体無いよ」
パニスはとても可愛らしく笑っている。
ライトもそれに今日一番の笑顔で答えてみせると次いで祝福するかの様に夕陽が2人をちょうど照らして、小鳥は騒ぎ、そよ風が森を笑わせてその場をより明るくした。
この日、人間達の滅亡は決まった。