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司祭ゲルギス

世界よ。

もっと高く、もっと強く、もっと面白くあれ……。

俺が少しでもコイツらのことを忘れられるように……。

俺が少しでもコイツらのことを思い出せるように……。


さぁ、行くぜ野郎共。


次の戦場だ。



S級冒険者『傭兵』アニキ。家族(仲間)たちの墓の前にて……。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



テセト達と別れた後、バナーは貧しさの垣間見える家を幾つも通過して行く内に段々と人が疎らになっていき、やがて誰も見掛けなくなる。

磨耗した大地の吹き上がる砂をかわしながら夜の中を歩いていく。


そして最初に見つけたのは真っ白な教会。

教会と名の付く割りには酷く冷たい感じがして、夜の闇にぼぅと浮かぶ姿はアンデッドを思い出させる。

更に進む内に見えてきたのは墓地だ。

司祭がいるこの村では珍しく埋葬だが、辺境、しかも大森林近くのため面白いくらいに人が死ぬ。

整然と並ぶ墓石はまるでどこか別の世界にいるようで非常に気持ち悪くこの下で今だ人が寝ているのかと思うと根源的な恐怖で吐き気がする。


ここは村の中でも端の端。

人が避けるだけでなく言うことを聞かない子供に「言うことを聞かないと司祭様の所に連れてくからね!」と脅しに使われる場所ですらある。

そんな所に子供のバナーが自らの意思で近付くのだから皮肉な物だ。 「いやだなぁ……」


ここまで来ていても思わず逃げたくなる位の貫禄。

呪われたらどうしようとバナーは半ば本気で考える。

この不気味さからなのだろうか、ここの司祭も村の皆に恐れられており村人は死人が出たか人が新しく生まれた時くらいしか司祭と関わろうとしない。

フードを被って一切顔を出さない司祭は司祭かどうかも怪しい。

しかしそれでも辺境に位置するメイナム村としては彼を頼らない訳にはいかないのだ。

もし、ここで何らかの失敗をして司祭が村から出ていってしまったら、村の人達は子供だからといって一切の躊躇なくバナーを吊し上げるだろう。

意を決して扉に近付くと重たいノッカーは上過ぎて届かないので下の方をトントンとノックする。

返事がないのでもう一度ノックしようかと腕を振り上げた頃、重たい筈の重厚な扉が音もなくスッと開き中からフードを目深に被った髭もじゃの大人が出てきた。


「私に何か用かね?」


フードは紫色であり、マントに繋がっているためまるで一枚の大きな布を被っているように見える。

聖職者と言うよりはどちらかと言うと魔術師のような格好だ。

この辺も村の人達に疑われる要素の一つでもある。


「あ、あのバナードって言います」


自分の名前を言っても特に反応もなくただ静かに目の前の少年を観察している。


「あの……ゲルギスさん、お願いします!ここにおいてください……何でもします!

ここの他にいく場所がないんです!

どうかおいてください!」


年の割りにかなり賢い言葉遣いでゲルギスに向かって頭を下げるが特にゲルギスは反応もない。

静かに空間を眺めている。

バナーが緊張感でモジモジし出す頃、ようやくハァー、と一つ大きなため息を吐きバナーの頭に手をバナーの頭に添える。


「今日はもう遅い。話は明日だ。とりあえず寝てしまいなさい」


バナーの心にふぁー、と明るい気持ちが広がるのと同時に罪悪感が広がる。


あ、あの幽霊さんどうしよう。

墓場で待ってるって言ってたよね。

熱だしたりだとかしないかな……。


明日会ったときに謝ろう。

そう思いながらバナーは教会へと入っていった。

一方その頃墓場にて――。


「ハックション!!」


ブルル……!


一つ大きなクシャミをしながら青年は身を震わせる。


「おっかしいなぁ、幽霊だから寒くなんてない筈なのに……誰か噂でもしてんのかな?」


とりあえず暇な青年は暇潰しに墓地にある草の葉の数を数えることにした……。


そして三秒で諦めた。


「あー、つまんねぇ。何か面白いこと起きねぇかなぁー」


アンデッドと同じ眠れない夜を過ごす青年の夜は長い。

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