初めての父
役立たずが!邪魔だ!引っ込んでいろ!!
(ちょっ、ちょっと大丈夫なの!?怪我したらダメって言ったじゃない!?早く医務室で休んで!さぁ早く!!)
思い上がるな。貴様ごときの力では我が軍は小揺るぎもせん。
(勘違いしないでよね!べっ、別にアンタの為にした訳じゃないから!!お、恩になんてき、着なくて良いし……ぽっ)
何を言うかと思えば、クズ共等目障りだ。いらん。貴様ごとき私一人で十分だ。身の程を弁えろ。
(この真っ黒黒助!!アンタみたいなのに大事な部下を会わせるわけないでしょうが!!コンコンチキ!!バーカ!!)
超訳陛下の言葉。()内は作者の意訳。
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「いやー、これからどうするか」
基本楽観的な青年はこれからの事を何も決めずにバナーの父親になる事を決めたらしい。
非常に無責任極まりないが、子供の事を何も決めずに放り出した母親よりはマシであろう。
「いや、ぶっちゃけ俺は幽霊だからどうとでもなるんだけどさ。自分の息子に毎日野宿とか気が引けるし……」
今まで青年はあちこちを旅して回って来たが、それは幽霊という特性を生かした補給ゼロの旅だ。
バナーは青年とは違い老廃物が生成され風呂なしという訳にもいかないし、そもそもが六歳にも満たぬ子供が旅が出来るかどうかすら不明である。
○大五郎じゃあるまいし……と呟くと、青年はバナーに向かって聞いた。
「なぁ、そういう世話してくれる人に心当たりないか?」
あまりにも早い降伏宣言にバナーは寂しそうに笑う。
「お母さんは司祭様の所に行けって言ってたよ?」
別に伝も何もない。ただ司祭だからという理由だけだ。
体よく放り出されたという事に他ならない。
「うげぇ。司祭か〜、嫌いなんだよなぁ。人の顔見ていきなり魔法ぶっぱなすとか頭おかしいだろ。一体どんな教育受けてきたんだか」
まぁ、幽霊という存在は青年だけでそれ以外は例外無くアンデッドな訳で、それに対する至って正常な行為だ。
青年がやいやい言うのがそもそも間違いなのだが気分的には納得いかないのだろう。
「う〜ん、じゃあ施設とかか?」
幸い見えないのだ。
親同伴で孤児院に入っても何の問題もあるまい。
「でもお金が……」
孤児院というのはお金、或いはそれに相当する能力が要る。
バナーが心配しているのはそこだ。
「そこは問題ない」
そう、青年は幽霊だ。それも物体を動かせるという極めて稀有な。
盗……金を稼ぐ方法には困らない。
「いや、それでも嫌だよ」
賢いバナーはお金の出どころに気付いて拒否する。
まだ、流石のバナーも生き汚なく生きる覚悟は決まっていない。
「そうか、確かに情操教育に悪かったな」
いや、法律的かつ倫理的かつ人間的に問題がある。
青年は既に死んでいる筈なのだが、かなり生き汚ない。
不思議である。
「ふーん、じゃあその司祭さんに頼みに行くか。気は進まんが、何とかなるだろ」
更に青年は陽気かつ楽観的だ。
……本当に死んでいるのか疑わしい奴である。
「いや、僕一人で行くよ」
その言葉に青年は深く傷付いた顔を浮かべる。
「えっ、何ウザかった?ちょっ、先言ってよ直したのに」
「うざ……?いや、そうじゃなくてガストなんか連れてったら置いて貰えないよ」
「う〜ん、心配だが……。いや、付いてくと迷惑か。しょうがねぇな。じゃあ、ガストはガストらしく墓地にでもいるわ。終わったら声かけて」
もし、この時違う選択をすれば未来もまた変わっていただろう。
しかし、そうはならなかった。
そうしてバナーは二つ目の運命の邂逅を果たす事になる。