からのDOGEZA
ひぃ、ふぅ、みぃ、よー……ってこっちよりも大分多いな〜。
よし、助太刀しよう!!
オラオラ商人共!!
さっさと積み荷下ろさんかい!!
「オイ!お前はコッチの護衛だろ!裏切んな!!」
うるせぇ世の中力が全てなんだよ!
へへへ……アニキあの野郎あんな事言ってますぜ?やっちゃいましょう。
そうです。あんな野郎はあっしに任せてくだせぇ。
えっ、何で帰るんすかアニキ!
いや、後少しじゃないすかアニキ!
いや、目的の馬車じゃ無かったってそんな殺生な。
まって下さいアニキ!アニキ〜。
…………。
いや、違うんです!あいつらにやれって無理矢理やらされてたんです!!信じてください!!
「嘘つけ!!」
S級冒険者二つ名『屑』とある商隊の護衛任務にて。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「本当にお願いします!!忘れてくれ!!まさか見られてるとは思わなかったんだ!!」
バナーの目の前には先程魔物を吹き飛ばした青年が地に伏してまるで五体投地のような格好をして頭を地面に擦り付けていた。
「え〜と、うん分かったけど、どうしたの?」
とりあえず可哀想になったバナーは青年に頭を上げるように言う。
何か分からないがこの格好をあまりさせてはいけない気がしたのだ。
「いやーありがとう。助かった。何せ何年も人と話してなかったからな。ちょっとはじけちまってな。」
朗らかな笑いと共に青年が起き上がり礼を言う。
「おじさん誰?」
バナーが聞くと青年は少し困った顔になってバナーの頭を撫でる。
「いやー、そりゃ俺も知りてぇな。何せ幽霊になった時に忘れちまったみてぇでな」
フーアーユーと聞かれてもアイムファインセンキューとしか言えない青年は苦笑しながらそう言った。
バナーは聞きながら一つの単語に聞き覚えが無い事に気が付いた。
「ユウレイ?何それ?ガストとは違うの?」
「おっ、よく知ってるな。ガストってのは魔物の事だろ?俺は魔物じゃないから幽霊だ」
青年としては違いはあまり良く分かっていなかったが、(というよりも同じ言葉のように思えたが、)とりあえず何とか説明する。
「ふーん変なの」
しかし、バナーの方は聞いておきながらあまり興味がなかったようで、親友の真似をしてスルーする。
それに苦笑した青年は誤魔化すように話を繋げる。
「まぁ、幽霊だからなぁ。同種が暫定0でよ。ずっと一人だったんだ」
その一言を言った瞬間バナーの表情に一気に影がさした。
次のバナーの答えに特大の地雷を踏みつけた事を悟った青年は背中にダランダラン冷や汗をかく。
「そっか。じゃあ僕と同じだね。僕もお父さんは知らないし、お母さんにも捨てられちゃった」
その強烈な告白に青年は心労のジェットコースターを味わう。
それでも何とか励まそうと青年に向かって言葉を尽くす。
「……。じゃあ俺が父親になってやるよ」
「えっ?」
「それなら今日から二人だ。だろ?」
「でも……」
「でもも雲もねぇ。お前が嫌だっつってもやる!お前の意見は全て無視だ!」
こうしてバナーは新しい父親を手に入れたのだった。