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バナー・調和をもたらす者 伝説の二人のプロローグ

――――???視点――――――――


一人の男児を埋める。


真っ白の石で出来た冷たい小さい神殿の前の墓地の土に涙は落ちる。


魔法で造った墓はスベスベで、死の無機質さを剥き出しにする。


幼い息子を無くした母の慟哭が私を突き刺す。


この痛みから逃げてはならない。


私はかつてそう教えて来たのだから。

もし、逃げれば彼らに対する義務を放棄することになる。


どうして助けてくれなかったのか、貴方は助けられた筈だ、と力無く胸を叩く拳が私を切り刻む。


この痛みは甘んじて受け入れなくてはならない。

自然の摂理を壊してはならない、とここに来る時に誓ったのだから。

ここで助けてしまえば自分に自分で嘘を吐くことになる。


彼の小さいは助けられたかも知れないが、他の救えない命に失礼だ。


この少年を救えたのに見殺しにした。


私は罪を償わなければならない。


その為にここに来たのだから。


そして人という種族こそ罪を償わなければならない。


かつて自らの欲のために起こした……否、今も犯し続けている大罪を悔い、罰を受けなければならないのだ。


決して許されることのない罪を。




――――???視点――――――――


爽やかな風そよぐ四方何もない草原で呆然としながら俺は思う。


ここはどこ?


おれはだれ?、と。


そんなちっぽけな理由で自分探しの旅を始めたのだが、三つの情報を得た後手詰まりになってしまった。


情報一つ目、どうやら俺は記憶喪失という奴らしい。


常識とか知識とかは残ってるから多分普通の記憶喪失だと思う。

記憶も全部忘れてる訳じゃなくて断片的に残ってる感じかな。


情報二つ目、俺の記憶は信用出来ない。


記憶の断片が矛盾してるのだ。


例えば年齢。 17歳のような気がするし、200年位生きてるような気もする。

種族もそう。

自分が人間のような気がするし、魔人のような気もする。

後、トラックに轢かれて死んだような気がするし、敵に殺されたような気もする。


こんな風に自分の記憶がバラバラで、上手く記憶が整理出来ない。


そして自分が死んだという記憶を見た後、体を徹底的に調べて分かったことが一つ。


情報三つ目、俺は幽霊らしい。


外傷のような物はないし、体も透けてない。

でも鏡には映らないし、人に気付かれない。


そして通常、物体は俺に触れる事は出来ない。

通常、と言ったのは俺が本気を出せば物体には触れるからだ。


どういう事かというと絵に例えると解りやすい。

人は普通絵に干渉して色を塗る事が出来るが絵に干渉されて何かされるという事はない。


つまり攻撃する積もりならば一方的にボコれるって事だ。


まぁ、それは物理だけの話で魔法は普通に効くんだがな。

町の司祭に呪霊ガストと間違えらて光魔法食らった時痒かったし。


呪霊ってのは言うなれば悪霊だ。

アンデットの類いであり弱点は光魔法だ。

昔同類同士話してみようかと思って話し掛けたが意味のある言葉を発しないし何か攻撃されたので諦めた。


俺もアンデットの類いだと思っていたのだが光魔法への耐性も普通だったし、どうやら俺はアンデットという枠から外れているらしい。


つまり俺の状況を三十文字に纏めると。

年齢不詳、記憶喪失、幽霊、物理無効、ポルターガイスト使用可能となる訳だ。


超絶なヌルゲーである。


このメルヴィルで魔法を使用可能なのは3割を切る。

生活魔法を使用出来る者を含めればもうちょっと多くなるが、そんなので傷一つ付くわけがない。


要するに三割の人間(亜人含む)しか俺に攻撃出来ないのだ。

警戒する方がバカらしい。


そんなこんなで生来楽観的らしい俺はのんびり旅をしてる訳だ。

空気中の魔力がエネルギー源らしく食事を取る必要はないし、疲れないしで旅費は無料なのだ。


そんな要因も手伝って自分探しも兼ねて数年程旅をしている。

そうして旅をしていく内に俺は一つの村が気になった。


その村はメイナム村と言うそうだが、普通の長閑な村だ。


何故気になったかと言えば村に魔力が普通よりも集束しているのだ。

集束と言っても他と比べて少し濃いといったレベルで他は普通の村だ。


意識を集中させると魔法の残骸のような物を感じられた。

恐らくこの魔法の影響だろう。


誰が何のために造ったかは知らないが大昔に造られたようだし、今でも僅かながら残っているということはよっぽど凄い術者なのだろう。

魔力がエネルギー源となっている俺としては居心地がかなり良さそうだ。


良し、ここに2、3年棲むとしよう。


こうして彼はここに住む住人となった訳だが、彼はまだこの場所で自らの記憶の一端に触れる事になるとは知る由もなかった。

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