開発区域、ホテル龍神エントランス
―あれ?私なにしてたんだろう? 確か地震でホテルで夏美ちゃんで逃げてて―
そこまで思い出して思考力が戻る、「夏美ちゃん!? あ!」志穂が夏美を心配して体を起こすと上に土産売場の柵が倒れていて思うように体を動かせなかった。
「こっちくんな! ヘンタイ!!」
不意になつみの叫ぶ声がきこえる、その方向をみるとお腹の真ん中辺りをさっきの地震で倒れてきた熊の剥製に押さえられ、身動きできないでいた。
そこへ、難を逃れたホテルマンかせまっていた「こんなところにいたのかぁー、だめだよ走りまわっちゃ危ないからね?・・・」そんな事を呟くホテルマンの異様な雰囲気に志穂は声をだせずにいた。
いよいよホテルマンが近いてきて熊の剥製に手をかける、しかしどける様子はなく夏美の顔を覗きこむ、その行動に嫌なものを感じて「ナニする気だこのバカ!?」と、叫ぶがホテルマンは動じることせず夏美に迫る。
「いや・・・」夏美が迫力にまけてそう声をしぼりだしたと同時にマウンテンバイクに乗った誠二がエントランスに入ってくる、そして夏美の状態をみるや「オレの夏美にさわるなー!!」と叫びホテルマンのマウンテンバイクごと突っ込む、
「があっ」情けない声をあげ倒れこむホテルマンであった。
「かみぃー怖かったよう」
夏美がそういって神谷誠二に抱きついて甘える、そして志穂の方を指さし「志穂りんも助けてあげて」と叫ぶ。
「まだ人がいるんだな? よしわかったまかせろ」
そういいながら志穂のところにかけより、倒れていた柵をのける。
「大丈夫かい? 立てる?」誠二が肩を貸し立たせる。
「あ、はいありがとうございます」おじぎをしてお礼をいう。
「志穂りん、こっちは私のダーリン」夏美が大雑把に紹介すると、神谷誠二ですと、自己紹介する。
「あ、はい私は稲道志穂といいます、助けていただいてありがとうございます」
「稲道? ひょっとして真穂っていう妹いませんか?」誠二がそう言うと志穂がびっくりして「あらあら妹ご存知なんですか?」ときりかえす。
そんな2人をみてきょとんとしている夏美であった。