開発区域、地下鉄北西部
~開発区域北西部地下鉄~
「いやー、まさかあんたにまた会うとはね」地下鉄を線路沿いにあるきながら勇が安心した表情で呟く。
そこにはさっき別れた筈の男性、神谷誠二が2人に同行していた。
「いゃあ~、もう避難してるとおもうんだけどね? これのケイタイが繋がらなくってさ心配だからホテルに戻ろうかと思って」そういうとニカッと笑って小指をたてる。
「まさかねー、付き合って一周年の記念旅行がこんな事になるなんてね」そう言葉を続けて少し肩を落とす仕草をみせる。
「そうなんだ・・・それは災難だったね」真穂が気の毒そうに慰める。
「ハハッありがと真穂ちゃん」
誠二が礼を言うと同時に、"ピシィ"と天井に亀裂がはいり欠片がこぼれだす。
「まずい! みんな走れぇっ!」勇が叫びながら走りだし、それに追従して2人が走りだして天井が崩れだしたのがほぼ同時だった。
「きゃあああっ!」真穂が叫びながら走る、後ろから崩れてくる天井が巨大な生き物が自分達を丸呑みにしようと襲ってくるみたいで恐怖にかられていた。
しばらくすると駅のプラットホームが見えてくる。
「プラットホームだっ!」
「真穂ちゃんはやく!」
「勇さんこそっ!」
各々が叫びながら駅のプラットホームの階段をかけあがるのと、同時に崩落がおさまる。
「ハァハァハァ・・・もうダメかと思った」
真穂が眼前に広がる崩落した天井を見つめる、それは獲物を目の前にして逃がしてしまいうらめしそうに見る猛禽類の顔のようにもみえた。
Г大丈夫かい? 怪我はないか?」2人がそういいながらそれぞれ手をとり支える。
Гうん、ありがとう大丈夫」一安心して立ち上がり小さく頷く。
Гよし、後少しみんなはやくいこっ!」落ち着いて元気を取り戻した真穂が2人の背中をポンっと軽く叩く。
さっきもそうだったが避難して無人のプラットホームはやはり気味が悪く世界の終わりのように思えた、しかもさっきの事もあってかより不気味に感じられる。
改札を抜けて歩いていくと上にあがる階段が見えてきた。
Гおっ出口か、夏美まってろよ今すぐいくからな!」
そう言いながら誠二が階段をかけ上がって出口をでたとたん再び揺れが起こる。
「真穂戻れっ! 天井が崩れる!」途中まで階段を上がっていった2人だったが目の前の天井が揺れの影響で崩れ始める、それは最後の力を振り絞って襲ってくる猛禽類のようだった。
「おいっ! 2人とも大丈夫か!?」揺れと崩落もおさまったところで声をかける誠二。
「ああ、大丈夫だ」
「私も大丈夫ー」
2人の声が聞こえて一安心して、胸をなでおろす。
「こっちは別の出口をあたってみる、あんたは先送りホテルに向かっていってくれ!」勇がそう叫ぶと誠二がこたえる。
「すまない、先にいってるぜ、2人とも無事でな!」
そういうと、誠二はホテルへ、勇と真穂は別の出口を探すため来た道を戻るのであった。
誠二が歩いていると傍らにサイクリングショップが目に入る、中に入ると店員は避難しておらず当たり前だか無人だった。
「・・・今は緊急時、すまない店員さん!」
そういうと、手近にあったマウンテンバイクを手にとり店をでて股がる。
「よしっ! まってろよ夏美ぃー!!」さけびを閑散とした街にこだまさせながらホテルに向かって走りだす誠二であった。