開発区域、ホテル龍神~3F303号室~
「うっそぉー、誠二でかけてたんだぁ」
先程風呂場で助けた女性こと広川夏美は声をあげる、ちなみに誠二とは5歳年上の彼氏、神谷誠二の事である。
今回2人は新しくできたこの町に、興味津々でツアーに参加して地震に遭い今に至るわけである。
「あーっ! ケイタイの電池きれてるーサイアク!」
誠二に連絡をとろうとしてケイタイを開けて画面が真っ黒なのをみて声をあげる。
「それじゃあ避難所にいきましょ、多分彼もまってるんじゃない?」
志穂がそう促すと、それもそうだよねと手荷物だけ持ち廊下にでる。
赤い絨毯が敷かれた廊下は皆避難して静まり返っており、この世界には誰もいないんじゃないかと思わせるほどに音がなかった。
2人はまた地震がおこるであろう地震に警戒しながら三階の階段を恐る恐る降りてすぐに、離れたところに人の姿が目に入る。
青い制服と帽子の格好からしてホテルマンである事は明白だったが、少し様子がおかしい。
直感的にやばいと感じた夏美が志穂の手を掴み、「逃げるよ志穂りん!」そう叫ぶとホテルマンとは反対の廊下を走り出す。
「夏美ちゃんどうして逃げるの?」志穂がたずねると「私ねこういう時のカンって当たるんだ、あいつはヤバイ!」夏美がそういって後ろを振り向くと彼女の言う通りホテルマンは目を血走らせながら追いかけてくる、時おり「避難経路はこっちだぞぉ!」と叫んでいるのが聞こえてくるがその声をふりほどくように逃げる2人であった。