開発区域、ショッピングモール~東側地下鉄
同じくカウンターに避難していた隣の男も同じく唖然とした表情をしており、視線があうとお互いに頷いて勇は真穂を、男は店員に手を伸ばしてひっぱりあげる。
「なによこれなんなのよ? ねえ!」
さっきまで楽しく食べていたはずなのだ、なのに今はどうだろう今までカウンターやテーブル、そしてイスが並べられていたところには崩れた天井が横たわってあらゆるものを包み込んでいた、上をみあげると天井が存在していたところはかわりに青々とした空がそ知らぬ顔をしてひろがっていた。
真穂は眼前の広がる光景が理解できず、ただそう呟いて勇の腕にしがみつくだけだったが、姉の稲道志穂の事を思いだしハッと我にかえる。
「そうだ! ホテル! おねぇちゃんお風呂入るっていってたはやく戻らないと!」
「そうだなホテルに急いで戻らないと心配だな」勇がそう答えると隣の男が引き止める。
「まぁ、まちなよそんな事しなくてもホテルだろ? 確か隣の病院が避難所になってた、大丈夫だってそれよかこのショッピングモールを抜けた先にある広場も避難所に指定されているからそっちのほうが近くていいと思うぜ」
そういう男の容姿は短髪で後ろにきめており、ジーパンとGジャンという格好であり後ろのポケットには最初に配られていたパンフレットがねじこまれていた。
「いや、俺達はホテルに戻ってみるよ、この娘のお姉さんが心配だから」
男の言う事も、もっともだと思いつつも志穂の事も放っておけないのでそう答える。
「そうか、じゃぁ俺は先にこっちに避難しておくぜ、この店員さんも心配だしな」
そうやって隣をみると、男の肩を借りている店員の表情がまだ強張っていて顔面蒼白だった。
「じゃあ、俺は一足先に避難さしてもらうよ、またな」そういうと店員を気遣いながらガレキの山を越えて外に出ていくのであった。
「さて、俺らもホテルの向かうか」そういうと真穂の手をとりガレキの山を越えていくのであった、
~開発区域、東側地下鉄~
2人は一道村の開発区域をぐるりと取り囲む地下鉄への入り口の1つに来ていた、それは何故かというとホテルのある西側へ渡る橋の上で車が炎上していてわたれなかったのである。
「悩んでいても仕方ないな、崩れていない事を祈ってさっさと中を渡って反対側にでるとするか」
そういうと真穂の手をとり下に降りていく、駅構内はガラガラで蛍光灯の明滅が違う世界に誘っているようでもあり、はやく避難しろとまくしたてているようでもあった。
「なんか人がいないと違う世界に迷いこんだみたいで不気味だねー」真穂がそう呟くと、大丈夫だよと答える勇だった。
「よし、ここから降りて歩けば西側にでられる」駅に貼られている路線図を見ながら頷く勇。
「気をつけて」真穂にそう言われながらプラットホームから線路に降りる勇、そして真穂に手をさしのべる。
その手をつかみ、降りようとするが危うく落ちそうになり勇が慌てて受け止める、「わっ!」 「キャッ!」二つの声が無人のホームにひびきわたる。
「胸触っちゃってごめん、わざとじゃないんだ」勇が慌てふためく、「だいじょーぶ! わかってるから」真穂はいつもとかわらない口調で歩き出す。
「そ、そう? じゃあいこうか川の下通るから気をつけないとね」
そう言いながら、勇は真穂の顔見辛さに先頭を歩こうとするが、それを知ってわざと隣について歩く真穂はいたずらっ子の笑みをしていた。