はじまり
―1話―
カタカタカタ、キーボードを打つ音が心地よいひざしが射す部屋に響く。
「ふう、今日はここまでかな・・・」
男が打つ手をとめてのびをして横を見ると、男女二人づつ仲良く写っている写真が目にはいる。
「あれから1年たつんだな・・・ はやいな」
男がそう呟くと台所から温かい紅茶がはいったカップ2つをトレーにのせて女性がニッコリ微笑みながらやってくる。
「そうね勇、もうあれから1年なのね」
その女性はショートカットのいかにも活発そうな感じで健康的にやけた小麦色の肌と白いパンツスタイルが実によく似合っていた。
そして、それは男と一緒に写っている女性でもあった。
「真穂か、そうだねひと休みしようかな」
そういうと勇と呼ばれた男性は真穂を傍らに引き寄せる。
「あれから1年たつんだな」
「そうね1年たつのよね」
二人とも遠い目をしながらしみじみと呟くのであった。
ー1年前ー
「へぇー、ここが噂のド田舎の開発区域かー」
1時間1本(もっとも今後本数は増える予定ではあるが)のバスで山奥までゆられて来た青年の名は四方堂勇、この日本某県の山奥に最近話題の村があると聞き、もの珍しさに来たのであった。
その話題とは盆地にあるこの過疎が進んだ一道村に、都会さなかがらの開発が誘致されているという事だった、なんでも豪腕村長で若い頃都会にでて築いた人脈をフルに活用して実現させたという事であった。
「わぁー、ここが噂の開発区域かぁー、確かに街っぽいけど後は田舎っぽいなぁ」
どこかで聞いたようなセリフに毒を少し足しながら、バスを降りてきたのはショートカットのパンツスタイルの女性である。
「真穂ちゃ~んまってよ~」
少しまのびした声をしながら真穂と呼ばれた女性の後を追いかけて黒のロング、白のワンピースを来た女性が降りてくる、こちらは対照的に物静かな女性という印象をうける。
「そうだっ、お姉ちゃんせっかく観光に来たんだから写真とろう! ねぇーそこの運転手さんカメラお願いできます?」
そういうと、ひと休みしていたバスの運転手に強引にカメラを渡す真穂、そして勇にも話かける。
「ねぇ、そこのおにぃさんも一緒にとろ!」
そういって強引に腕を掴むが何故か憎めない、多分青空に輝く太陽のようなまぶしい笑顔がそうさせるのだろう。
そうこうしているうちに、写真を撮ってもらい運転手にありがとうございますと礼をいいながら笑顔でカメラを受けとる。
「ねぇ、客同士一緒に観光しない? あ、自己紹介まだだったね! 私は稲道真穂こっちは姉の志穂です」
いきなり紹介されてあわてて挨拶する志穂。
「初めまして、姉の志穂です」
「よろしく、四方堂勇です」
お互いに挨拶をしてこういうのも悪くないなと思う勇であった。