表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/55

48.戦闘開始

 

 

 

 森をぬけて湖にトーマスが駆けつけた時、三人の使徒はランスロットの前に倒れ伏していた。

 マリアの“光”ではランスロットの魔術耐性を貫くことができず、ならば物理、とアルベルトが攻撃を仕掛けるが、ランスロットの卓越した剣技の前に沈むほかなかったのだ。

 

 

 とどめを刺すのだろう。ランスロットは剣を上段に構える。

 トーマスは咄嗟にストレージから投槍を取りだし、ランスロットへ向けて振りかぶっていた。

 倒れているとは言え、敵は敵。

 しかしトーマスは、なぜか見捨てる気にはなれないのだった。

 

 

「丁度いい。女子供を傷付けるのはこちらも好んでいないのだ」



 投槍を難なく弾き、ランスロットは馴れ馴れしく話しかける。

 それを無視し、トーマスは使徒達の元へ駆けつけた。

 急いで離れろ。トーマスがそう言うと、使徒達は緩慢に起き上がる。しかしそこから動く気力は、まだ回復していないようだった。

 

 

「それにしても久しぶりだな。トーマス」



 無視した事を気にもせず、ランスロットはトーマスに話しかけ続ける。

 使徒達のことはもう眼中にないのか、視線の一つも向けずに。

 

 

「まさかこんな事になるとは、思いもしていなかったよ。いきなり魔神を名乗るやつが現れて、私達をここに送ってきた。最後にやつはこう言ったよ。ーートーマスを殺せって」


「……」


「だが、いざこの世界へ来て、お前は既に外へ出て行っていた。……やつはお前らも外へゆき、お前の妨害をすれと新たに命令していった。ちょうどそこら辺に武具も落ちていた。だからお前の近くにいるやつーーそれも敵になりそうなやつへ渡していった。……お前と戦わず逃げる奴も沢山いたがね」


「ーーっ、やはりお前が!」


「それにしても、自我というものを持つと、途端に前の世界がいかに異常か思い知らされる」


「“前の世界”……?」


「ああ、お前らがゲームと呼んでいた世界だ。あの時は自分の意志もなく、ただお前らと戦っていた。殺し、殺され。お前とも最初は勝っていたが……そのうち勝てなくなったな」


「おまえ……」


「ーーまあそんな事はどうでもいい」



 締め切るようにランスロットが言い放つ。

 有無を言わせない物言いに、トーマスは口を閉じた。

 

 

「ーー姫はどこだ! 彼女は何処にいる!?」


「……姫だと?」


「ああ! 俺達の姫、『グィネヴィア様』はどこにいる!?」



 それを聞き、トーマスはハッ、と息をのむ。

 完全にそのことを失念しており、自分の迂闊さにまたしても自責の念が沸き起こる。

 

 

 ランスロットが言う『グィネヴィア姫』とは、BH内最強のNPCボスだ。

 設定ではランスロットが仕える姫であり、そしてDLC最後のボスでもある。

 彼等が登場するDLCは氷や雪がテーマであり、ランスロットもそれにもれない。唯一違うのは、襤褸布を纏う男ーーマーリンだけだろう。

 

 

 グィネヴィア姫は“力が封じられていなければ”、世界全てを零停させ氷の世界を作るーーというのが公式設定であり、作中では最強と言えた。

 だがプレイヤー達が戦うのは弱体化されたグィネヴィア姫であり、本来の力よりは弱められているーーと言う設定である。

 それでも最強の座は揺るがないのだが。

 

 

 そんな存在を忘れるなんて。こいつらも復活するのならば、グィネヴィア姫が復活してもおかしくはないのだ。

 トーマスは思わず下唇を噛む。

 

 

「どこにやった!?」


「知らぬ。むしろ知りたいぐらいだ」



 ーー殺すために。

 その言葉は出さずに飲み込む。無闇に怒らせる必要もないと思ったからだ。

 

 

「ーーそんなバカなッ!」



 ランスロットは叫ぶが、様子から見て本当に知らないとわかったのだろう。

 自らを落ち着けさせるため、大きく深呼吸をした。

 

 

「……わかった。ーーならば貴様を倒して捜すとしよう」



 いうなり、ランスロットは武器を構える。

 背後からマーリンも構えを取り、トーマスの前へと立つ。

 

 

「ーー卑怯ですまないが、二人でいかせてもらう」



 トーマスへ向け、二人の“英雄”が飛びかかっていった。

 

 

 

▼▼▼




 緊急避難場所として使われている学園の“大講堂”

 そこには学園の全在校生と職員達がひしめき合っていた。

 

 

 恐々としていた生徒達も、喉元すぎればなんとやら、ケロッとした顔で学友と話し合っていた。

 しかし職員達はそうもいかないようで、彼等は忙しなく走り回っている。

 

 

 学園のトップーー学園長も勿論、走り回りはしないが声を張り上げ指示を出していた。

 そんな彼女の目に、ふとリーンデルトの姿が映る。

 彼女はジッ、と湖の方向へ目を向けていた。

 

 

「大丈夫よ。あの男は強いんだから、きっと無事に帰ってくるわ」



 彼女は安心させるように言う。

 

 

「さ、あなたもいってなさい。場所はわかるわね? あなたのクラスは奥のところよ」



 リーンデルトの背中を押す。

 気遣う声のおかげか、それともただ言われるままに行動したのか。

 リーンデルトは素直に奥へと向かっていく。

 学園長は満足そう頷き、更に指示を飛ばしていく。

 

 

「ーーランスロット……、マーリン」



 蚊の囁くような声で呟かれた声は、はしゃぐ声でかき消されて誰の耳に届くことなく消えていった。

 リーンデルトはつかのま湖の方向へ目を向けたかと思うと、奥へと歩き始める。

 

 

 奥へ奥へーー大講堂の出入口へと。

 

 

 

 

次回更新は三時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ