46.二人組と使徒達
意外と早く終わりました。
これから一気に最後まで更新しようと思います。
復興に賑わう自由都市連合第三都市都市フスハレ。
猪頭による爪跡は、依然消えてはいない。しかしそのせいで街が沈んでいる訳でもなかった。
むしろ災害による特需が起き、一部では災害前よりも賑わっている。
そんな港街フスハレに、二人組の男がやってきた。
異様な二人組だ。
騎士鎧の男と襤褸布を纏っただけの男。どちらも顔は見せておらず、ただ淡々と街を歩いていた。
無論二人組は目立っている。だがその原因は、一人が着る騎士鎧のせいであった。
その二人は寄り道もせずに、冒険者ギルドへと入っていく。そして騎士の男は、受付嬢にこう聞いた。
「すまない。ここは人探しもしているのか?」
その問に受付嬢は、営業的な笑みを浮かべながら業務通りに答える。
「勿論です」
「それは、冒険者の居場所でも問題はないか」
「はい。本人が拒否しない限りは」
それに満足そうに頷いた騎士の男は、探し人の名前を告げる。
ところが、その一言はギルドを鎮まりかえさせる事となった。
「ーートーマスという男を探している」
言った途端静まり返ったギルド内を、不思議そうに見渡す騎士の男。
受付嬢がなにか言おうと口を開く前に、一人の冒険者が騎士の男に突っかかって行く。
「あいつになんの用だ」
冒険者の男は、トーマスがフスハレに在籍中仲良くなった男だった。
防衛戦時にトーマスへ恩義を感じていた男は、敵意を隠しもせず騎士鎧の男へ向かっていった。
「確かにお伝えすることは出来ます。しかし彼は街の恩人、個人的には理由をお教え戴かなければお教えすることは出来ません」
そこに受付嬢の援護射撃が入る。
その一言で、ギルド内は二人組を排斥する様な空気に包まれる。
騎士の男は気圧されることなく、朗らかな声で答える。
「なに、古い友人さ」
その時、冒険者の中から声が上がる。「あの鎧トーマスのやつに似ていないか?」
そんな声が上がると、ギルドの空気は一転する。
受付嬢も硬くした顔を緩め、騎士の男に伝える。
「彼は学園都市に向かったそうです。その後の足取りは学園都市のギルドでお聞きください」
「感謝する」
そう言い、二人組はギルドを出て行く。
「古い友人とは、上手く言ったものじゃ」
ギルドを出て暫く歩くと、襤褸布の男がからかうように言った。
「なに、間違いではないだろう?」
「そうじゃのう……少なくとも、あやつらよりは付き合いは長いの」
「当たり前だーーこの世界に来る前からの付き合いなのだから」
そして二人組は街を出る。
向かう先は学園都市ーーアルムントであった。
▼▼▼
時は進んで、学園都市南西部に位置する森。
そこに白銀の鎧に身を包んだ騎士団と三人の“使徒”がいた。
慈愛の笑みを浮かべた修道服の女性ーー聖母は、今か今かと待ち望んでいた。そして、その時が来た。
「聖母様! 聖人様がお見えになられたそうです!」
「すぐに連れて来なさい!」
聖母はそれを聞くなり、椅子から腰を跳ね上げ伝令に叫ぶ。
その様子をアルベルトとセシリアは懐疑の眼差しで見ていた。
「“聖人”さん、なんて前の会議には居なかったよね?」
「はい、そもそも任命されたなんて初めて聞きました」
「……聖母さん、なに考えてるんだろう」
二人は小声で話し合う。
アルベルトは新たに使徒が任命されたなんて話は聞いたこともなく、ましてそれが聖人なんて知りもしなかった。
それはセシリアも同じ様で、聖母がなにを考えているのか不安なようである。
しかしアルベルトは、諦念のような思いも抱いていた。
聖人は使徒の中でも強い力を持つとされる。それは現在使徒の中で、現時点最強最強の聖母を超すほどの。
経験の差はあるだろうが、それでも能力的には使徒トップクラスだ。
ーーさすがのあの人でも、生きてはいられないだろうな。
アルベルトがそんなことを思っていると、人混みが割れ一人の少年が現れる。
「よく来ましたね」
聖母は労いの言葉をかけるが、聖人はなにも反応せず、ぼんやりとそこに立っていた。
アルベルトは只々不安だった。本当に大丈夫なのか? 彼は思わず聖母に問いかけた。
「大丈夫なんですか? あの子」
聖母はただ笑みを浮かべ、「万事問題ありません」と答える。
その笑みは普段通りで、不自然な所は見つからない。アルベルトは杞憂だったか、と疑心を頭から追い出す。
すると聖母は騎士団一同を見渡し、高らかに叫ぶ。
「ついにこの日がやって来ました! 目標は学園都市にいる、騎士を騙る神敵ーートーマス! 混血でありながら騎士を騙る不遜! 不埒な獣を……我らの敵を討ち滅ぼすのです! そして学園都市から悪しき血を流し落とし、その血で愚かな彼等の目を覚ましてあげなさい! 全軍、進軍始めなさい!」
その声で、数千に及ぶ聖騎士団は駆け出した。向かうは学園都市。
その先頭を聖母は慈愛の笑みを浮かべながら先頭を行き、その隣で聖人は虚空を無表情に見つめる。
自身の行いに疑念を感じる二人ーー聖騎士団長と聖女は、浮かない顔で走っていた。
最高潮に達した闘志の坩堝に、懐疑に迷う二人は巻き込まれ、姿を消していく。
跡に残るのは、なお居座る軍勢の残熱と人馬入り交じる数多の足跡だけだった。
次回更新は十時です。




