閑話.幕府
この話はとばしても大丈夫です。
アルブヘイム南に位置する平原。そこに大規模な陣地がしかれていた。
多種多様なテントがひしめき合っていた。
テントはどれもカラフルで何一つ同じ組み合わせはないと、思えるほどだ。
また、テントの種類も様々で、獣の皮で作った平たい円状のテントや、麻布で作られた民族的な刺繍が特徴的な円錐形のテント。
その中でも一番多いのは将棋の駒を厚くしたような形のテントだ。
その中でも一際大きいテントがある。素材からして高いと判り、屋根には鷹によく似た動物の彫刻が飾ってある。
テントの中は絢爛豪華と言うに相応しく。暖簾や壁に掛けてある布には、金糸が編みこんである。
ランプなどの雑貨には所々に金があしらってあり、テントの中はいろいろな意味で輝いていた。
だが、金色が全面に押し出されており、どこか下品に感じられる。
大多数が、成金趣味と評価するだろう。
テントの中、そこは今重々しい空気が漂っており。入口を守る私兵の顔もどこか引き攣っている。
その原因は中心にあぐらをかいて座る大男だ。引き締まった筋肉、刈りこんである赤みがかった茶髪。
その顔は整っているが、今は不機嫌に歪めている。毛皮のマントを羽織っており、部屋用なのだろうゆったりした服をまとっていた。
豪快、勇猛。そんな言葉が似合う偉丈夫だ。
周りには何人かの少女がいて、男を励まそうというのか次々に話しかけていた。
「ペドロ、元気出してって。明日にはきっと少しは進めるよ、きっと」
「そうですよー。明日にはいいことありますよ―」
「……大丈夫。……たぶん」
真っ赤な赤髪を一纏めにした少女――シャロン、がそう言うと、同調するかのように緩やかな癖毛を垂らした優しげな少女――ケイトと暗めの茶髪を肩で切りそろえた少女――ヴェネットが追撃をした。
「そうかも知れねぇけどよ……。もう三週間だ。来るまでに六週間もかかったんだ。それなのに収穫は、猿が数匹と変なバケモンだ。割に合わねえよ」
男は心底不機嫌そうに捲し立てる。
「まさか、満足に探索も出来ないんだなんて思いもしなかったもんね……」
「扉は開かない、森に入っても何故か道に戻る。……不思議な所ですよね―」
「……猿もそこそこ強かった」
少女たちは口々に愚痴を言い合う。
満足に進まない探索、初めて合う魔物、そして長旅の疲れ。
不満が溜まっていたのだろう、一度口に出したら止まらなかった。
「平原進んでダメだったら、帰ろうよ!」
「こういう事もありますってー。運が悪かったと思いましょうよ―」
「……そろそろ家が恋しい」
普段はあまり不満を口に出さず、黙ってついてくるような彼女たちが文句をいう。
その事に驚くと同時に、限界かと思い、ペドロは憎々しげに言い放つ。
「稼げねぇのは悔しいが。しょうがねぇ明日ダメだったら帰るか」
そう言うと、ペドロは腰を上げ、入り口の私兵へ伝言を頼む。
「あいつらにもこう言っとけ!明日次第で引くか決めるってな!準備だけはしとけよ!」
そう聞くと同時に私兵は片方を残し、走り去っていった。
「さーて、こういう時は寝るに限る」
ペドロはそう言い、ベッドへ向かおうとするが。
「そう言わずにさ」
と言う少女に手を引かれ立ち止まる。
少女達の表情はどこか淫靡で、先程とは違い艶やかな笑みを浮かべている。
「……しょうがねぇーなー」
口では不満げにしながら、顔はニヤケ、どこか嬉しそうだ。
この男少し天邪鬼であった。
その声を聞くと、私兵はうんざりした顔をしながらこう思う。
――ああ、今日も始まった。
隠しもしない行為の音は私兵の耳には毒だ。
背後から響く艶めかしい声のバックに私兵は空を見上げた。
――英雄を色を好むというしな。何と言ってもかの”征服王”だ。
妙に納得しながら、半ば諦めた目で見上げた満天の星空は、どこか憎らしかった。
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【name】【征服王】ペドロ
【rank】 S
【bace】 人間族
【state】 正常
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タグにハーレムつけなきゃ