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24.アルムント

 立派な門、商人や旅人が長い行列を作り、並んでいる。明らかに今までとは違う人の量に、トーマスは気圧される様に列を見ていた。

 既に並び始めてから、1時間はたっており。それにもかかわらず、終わる気配も見せないほどに、長い行列だった。



 「暇じゃないか?」


 「……うん。……平気」



 リーンデルトも湖の1件から、少しずつ心を開き始めており、トーマスに返事を返すようになっていた。

 その事実に頬を綻ばすトーマス。



 リーンデルトを見習い、自分も無心で空を眺めているかと、空を見上げてみる。

 空は快晴で、積乱雲が遥か遠くに立ち上っているのが見える。


 ──晴れててよかった。

 トーマスはそう思った。いくら外套を着ているからと言って、雨の中待ち続けるのは嫌だからだ。



 とりとめのない事を考えたり、雲の数を数えるなどして、時間を過ごす。

 結局、街へ入ることができたのは、それから数時間後のことだった。





▼▼▼





 自由都市連合第7都市アルムント──通称『学園都市』

 この街に入り、トーマスが一番に感じたのは、懐かしさ(・・・・)だった。

 制服の様なものを着た少年少女。そのデザインも様々で、前世で見た、所謂初等部の子が着るような服や、海外の大学生が着ているロープの様な服──アカデミックドレスの様な服を着ていた。

 並ぶ店や露天も対象が学生なのか、若い子向けの店が多い。

 だからと言って大人が居ないわけではなく、学者や知識人然とした人達が、本屋やカフェ等で過ごしている。

 何よりもトーマスが懐かしさを覚えたのは、その無警戒な所だろう。

 彼等の中に戦えない者が居ないわけではないが、やはり少ない。では誰が彼らを守るのかと言うと、それぞれの国から派遣された騎士や、冒険者達である。

 更に中立を謳っている自由都市連合は、同じ人族からの攻撃に晒されることは殆ど無い。そして魔物達も、過剰とも言える戦力が集まったこの都市では無力だった。



 ──能天気ともとれる程に無防備。

 しかし、その危なっかしさが、トーマスはどこか懐かしいものに感じるのだった。



 トーマスは馬を獣舎に預け、リーンデルトと2人で歩く。

 どこの都市に行っても、やることは大体変わらず。冒険者ギルドへ報告に行き、宿屋を聞いてそこに泊まるだけだった。



 聞いた冒険者ギルドの場所へ歩いていると、トーマスの耳へ、姦しい声が入ってくる。

 まだ幼さを感じる甲高い声、キャピキャピと擬音がつきそうな会話。

 トーマスの前世で言う、中高生位であろう女の子達の集団だ。しかし、この街では大して珍しくもない。恐らく今日は休日なのだろう。あちらこちらに、似た様な集団が在るからだ。



 トーマスが目に付いたのは、集団自体ではなく、その中に混じる2人の少女だった。

 2人の少女──彼女達はフスハレの森の中、オークキングに拐われかけた少女達だった。



 「御嬢さん久しぶりであるな」



 トーマスは集団へ近づいたかと思うと、2人組の少女達へ話しかけた。



 「えっ……」


 「あっ、あの……誰?」



 しかし少女達は困惑しており、急に話しかけられて不審に思ったようだ。

 そこでトーマスは気付いた。フードを被っているんじゃ、怪しくてこの反応も仕方ないと。



 「すまない」



 そう言い、フードを取る。



 「私だよ。オークキングの時の」



 オークキングの時、それでわかったのか、少女達は納得の顔になる。



 「トーマスさん、ですか?」


 「そ、そんな顔してたんだぁ……」



 少し遅れ、少女たちは口々に言い始めるのだった。



 少女達は、それぞれキャスカとシャロンと言うらしく、そうトーマスへ自己紹介した。

 彼女達は攫われたショックもあり、何より唯のオークキング(・・・・・・・・)ではない、と気付いていており、嫌な予感がした為街を出ていたという。

 攫われた本人なので、冒険者内での問題もなかったそうだ。



 「それにしても、トーマスさんは何故ここへ?」



 純粋に疑問に思ったのだろう。キャスカがトーマスへ問いかける。



 「教国に用があってな、この街には寄っただけだ。まあこの子の学校を探す為でもあるのだが」



 トーマスはそう言いながら、リーンデルトの頭を撫でる。リーンデルトは買ってもらったお菓子に夢中なのか、撫でられたまま一心不乱に口へ運んでいる。



 「そうだ。いい学校とかはないか?」



 目の前に居るのが、現役の学生だという事を思い出し、トーマスは二人へ問いかける。



 「トーマスさんは、貴族ではないですよね?」


 「そうだが?」



 そう質問すると、キャスカは悩み始める。その横では、シャロンも同じ様にしていた。



 「庶民向けの学校は、大きく分けて3つあります」



 キャスカは指を3本立て、そう言う。



 「1つはここで一番古い『魔道探求学院』。2つ目は従者等の教育を行う『従者養成学校』。そして3つ目が──」


 「わ、私達が通う『フィン・マグナ・ミンスター総合学園』でしゅ!」



 キャスカの言葉を遮り、シャロンがそう叫ぶ。

 その目は爛々と光ってて、鼻息荒い。



 「シャロン嬢は、その学校になにか思い入れでもあるのか……?」


 「はい!凄いんですよ!魔術師も冒険志望もみんなは入れるんです!コース別に別れてて、それぞれあった勉強を受けられるし、もっと勉強したい人は、“学園院"に入れば引き続き学ぶことが──」


 「──はいはい、やめやめ」



 今度はキャスカが話の途中で、突然語り出したシャロンを抑える。

 その顔はうんざりとしており、少し慣れた手際だった。



 「すみません。この子たまにこういう時があって」


 「うぅ、すみません」



 落ち着いたのか、キャスカとシャロンが謝ってくる。



 「わ、私、熱くなる時があって……」



 そう申し訳なさそうに、落ち込んでいる。



 「構わないさ。それにしても、どれが一番いいんだ?」


 「私的には、やっぱり『フィン・マグナ・ミンスター学園』ですね」



 そうきっぱりと言い放つ。



 「身内贔屓ではないですけれど、他の2つは専門的な所をやりますから、色々学べる方がいいと思いますよ」



 ふむ。とトーマスは呟き、しばらく考える。

 他の2つは、『魔道探求』と『従者養成』がついている通り、それぞれが決まったものしか習われないという。それを目指す者にはとてもいい学校だが、リーンデルトの様にまだ決まってないものには合わなかった。



 やはり此処は勧められている通り、“学園"にしよう。トーマスはそう決めた。



 「私は『フィン・マグナ・ミンスター総合学園』がいいのではないかと思っているが。入園等はどうすればいいんだ?」


 「直接学園に出向いて、受付に対応してもらえばできると思います」


 「そうか、ありがとう」



 早速明日出向いてみよう。トーマスは段取り良く決まり、顔を綻ばす。



 「いい話を聞かせてもらったお礼に、ここは私が払うよ」


 「えっ!?本当ですか!?」


 「キャスカちゃん……」


 「じゃあこれと!これと!後、これもいいですか!?」



 奢りと聞くやいなや、キャスカはもの凄い勢いで注文し始めた。

 その横で、シャロンは恥ずかしそうに体を縮めているのだった。



遅いですが、あけましておめでとうございます。

今年は忙しい年となりそうなので、更新が少なくなります。

読んでくださる方々、今年も宜しくお願いします。

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