22.人形の様な少女
今回長めです
乱入者によるハプニングがあったが、俺は無事宿屋につき、朝まで軽い仮眠をとった。
朝に鳴る鐘の音が聞こえ、少しづつ生活音が鳴り出す。
今日の予定は、ラスクのところへ話を聴きに行く。何故かというと、3人のはずの少女が4人いたからだ。それに母と言うのだから、妙齢の女性がいてもいい筈なのに、何故か少女しかいなかった。
もしかしたら、救出は失敗したかもしれない。なので、確認のためラスクの元へ向かうのだ。
とりあえず、まずは準備をしなければならない。
タオル替わりの布を持ち、井戸へ向かう。顔を洗えば、次は飯だ。
下の食堂に向かえば、朝起きにフードは被ってないので、嫌でも人の視線を集める。
まあ、慣れたもので気にするほどではないが。
女将からご飯を貰うが、何と言うことでしょう、米が有るじゃないですか。
何時ものパンポジションに白米ではないが玄米が……。
「――女将!」
「きゃっ!な、なに?」
「このお米はどうしたのだ!?」
「お米……?ああ、『リーソ』のこと?」
このお米は『リーソ』と言うらしく、和国の方から来た、商人がくれたらしい。
「その商人は?」
「もう出ちゃったわよ」
「おこ……リーソは和国に行けば食べれるのか?」
「まあ、アソコの主食らしいし、行けば食べるはずよ」
よし。予定が決まった。
教国へ行って虎を倒したら、必ず和国へ行こう。俺の食生活のために。
「トーマスさーん!トーマスさんいますか!?」
お米を味わっていると、呼ぶ声が聞こえてくる。視線を向けると、そこにはラスクがいるのだった。
どうやら、俺のことを探しに来たらしい。
とりあえず返事をする。
「ラスク殿!こっちだ!」
そう言い手を振るが、帰ってきたのは思った反応ではなかった。
「あなたはなぜ僕の名前を!?」
あれ?なんでコイツ気づかねえの?少し心が傷つく。
……あっ。昨日フード被ってたの忘れてた。
「ラスク殿。私だ、トーマスだよ」
「トーマスさん!?聞いてください!あの人凄いですよ!貴族どころか『長剣の番』まで倒したんですよ!」
ラスクのその言葉に、食堂が静まり、そして遅れて騒々しくなる。
その中で聞こえてくるのは――。
「――あの"番“が?」
「――貴族殺しって、重罪じゃない」
「――“番”の等級はBだろ?」
「――けっ、糞共が死んで清々するぜ」
どうやら、昨日の2人組はなかなか強かったらしい。まあ長剣を使うコンビネーションが厄介らしいが……昨日1人だけだったし?とにかくあいつらの敗因は、力量を誤ったところだな。
2人で係っていれば、逃げるぐらいは出来たのだから。追うつもりもなかったしな。
「ラスク殿、その件で話したいことがあるのだが……」
「あっ、はい!僕の家へ行きましょう、家族も礼が言いたいみたいで」
「わかった。少し待ってくれ」
そう言って、飯をかっこむ。
よく噛めというが、詰め込むのも乙なものだ。
「よし、では行こうか」
「はい!」
そう言って席を立ち、宿屋を出る。
意外にラスクの家は近く、すぐそこだった。
「ただいまー!母さん、つれてきたよ!」
「お邪魔する」
「はーい」
そう言って出てきたのは、1人の少女だった。
「そうだ。ラスク殿昨日は母らしき人を見付けられなかった、聞いたのだか――」
「――わかってます。信じられないかも知れませんが、ウチの母です」
そう言われ、もう一度見るが、やはりどう見ても少女にしか見えないのであった。
「私のことはいいのよ。トーマスさん、ほんとにありがとうございました」
そう言い、頭を下げてくる。
先程までは少女だったが、今度は凛として、母親らしく大人の雰囲気を纏っている。
やはり、母というのは凄いのだなぁ……そんなことを思う。
「いや、騎士として人助けは当然だ。それに私がやったわけではないしな」
「――ふふふ。そうですか?」
なぜか、ラスクの母は微笑みを崩さず、私は分かっていますよ、と言わんばかりに見える。
「――そういえば、瞳の色お綺麗ですね」
不意にそう言われ、肩が跳ねる。
……昨日のフードが切り裂かれた時、やはり見られていたのだろう。
「……ははは」
「ふふふ。お気になさらず、誰にも言う気はありませんから。恩人を売るなんて、そんなことはしません」
「……恩に着る」
一瞬で真面目な顔になり、ラスクの母は言い放つ。
助けられて良かった、そう思える女性だった。
「そう言えば、ひとつ相談があるのですが」
「相談?」
「はい、昨日1人少女がいましたよね?」
「……ああ」
もう既に俺が居たものとして、話をしてくるんだなぁ。
だが、確かに聞いてた人数より1人多かった。
「その少女をどうしようか、悩んでいまして」
「親元とかはわからないのか?」
「はい。突然貴族が連れてきたようで、見る限りには親はいないようです」
「なんでわかるのだ?」
「――話さないんです。笑いませんし、自分で動こうともしません」
「……なるほど」
「はい。多分ひどい経験をしたんだと」
考えられる理由としては、魔物に殺されたり、盗賊に襲われたのだろう。その経験のせいで、感情を無くしてしまったと言ったところだろう。
「私たちの方で預かってもいいのですが、ああいう子は初めてなもので、騎士様ならなんか知っているんじゃないかと……」
「……うーむ」
そういう創作話は前世で腐るほど見てきたが、大体は"家族の温もりをだんだん知っていって、心を開き始める“と言ったもので、具体的な対処法なんて全く知らない。
「……やはり、家族らしく接するぐらいしかわからないな」
「そう、ですか」
「見たところだが、家族仲は良いのだろう?普段通りにやればいいのではないか?」
「それなんですが……」
ラスクの母がいうには、ラスクの一家はみんな仕事をしているらしい。
驚くことに、家族は全員成人している。なので昼間に家にいる者はいないそうなのだ。
「……それは、困ったな」
「はい……」
ここで思ったのだが、俺が引き取ればいんじゃね?
年下の家族が居たので、基本知識は悲しいことにバッチリだ。子供の世話もやった事はあるし、適任のような気がしてきた。
それに次に行くところは学園都市だ。正にピッタリじゃないか。
「実は――」
俺は、ラスクの母にこれからのことを話す。
冒険者だということを、次に行くのは学園都市で、その子にぴったりじゃないのか等。
話した結果――。
「――確かに、適任かもしれません」
との言葉を頂き、俺が預かることになった。
「リーンデルトちゃん」
そう言葉で奥から出てきたのは、真っ白な少女だった。
白いワンピースを着ており、更に髪の毛は白銀。肌も初雪のように真っ白だ。瞳は透明感のある水色。年は14か15くらいに見える。
「よろしくな、リーンデルト」
そう声をかけるが、反応はない。
「……本当の様だな」
「この子のこと頼みます。不甲斐なくてすみません」
「いや、こちらから言い出したことだ」
いつか心を開いてくれるといいな。
とりあえず、この子の道具を揃えなきゃだな。
「では、この子の買い出しに行かなきゃいけないのでな。これで帰らせてもらう」
「はい。お茶も出せずにすみません」
「かまわないさ、あんな事もあったんだしな」
「もしまたこの街に来るようなことがあったら、ぜひまたいらしてください」
「ああ」
そう言って家を出る。はぐれない様にリーンデルトの手を握り、俺は買い出しの為、大通りへ出かけるのだった。
▼▼▼
「あの男、『トーマス』と言うそうよ」
「冒険者の等級はA、か」
「目的地は聞いても分からなかったわ、けれど次の行き先は『学園都市』だそうよ」
「ふーん。で、あの男で間違いないのか?オリヴィア?」
「ええ、あの眼。間違いないわ」
大通りから、少し外れた路地裏。
そこに、二人組の男女――オリヴィアとアルがいた。
2人の視線は1つへ向かっている。
――トーマスとリーンデルトだ。
「……で、追いかけるのか?」
「当たり前じゃない。帰るついでに、"貴族殺し“の逮捕よ」
――貴族殺し。
それは、この世界では死刑に値する、最悪の重罪である。まあ重罪と言っても検挙率は恐ろしく低いのだが。
「――A級か」
「貴方と同じね。――アル」
アルの顔に浮かぶは笑顔。
その眼は、好戦的な色を浮かべていた。
「あの男が出ると共に、私達も出るわよ」
「わかった」
翌日、トーマスとリーンデルトが門を出てから、しばらく経つと、追いかける様に出てくるオリヴィアとアルの姿があった。




