表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/55

20.イブラント-1

 満月の光が降り注ぐ都市。

 時刻は既に深夜と、言えるほどに過ぎており、都市を彩る光は、月明かりと星の光のみとなっていた。



 そんな寝静まった街を、1つの影が疾走していた。

 その影は、時に壁をつたい、屋根を跳び、空を舞う。

 街道を走る速さは、影の輪郭を掴ませないほどに、速かった。



 ――影。それは1人の男だった。

 頭から足首までを、隙間なく覆う紺色の外套で身を包む。

 フードで隠された顔は、更に下半分を覆う黒革のマスクにより、男の人相を完全に隠していた。

 外套の下は黒染めの革鎧。動きを阻害しないように作られており、つや消しされた金属部は最小限に抑えられていた。



 盗賊だと、見るからに分かるような、格好だった。

 不意に男が立ち止まる。

 視線の先には、1軒の邸があった。

 上級階級の者が住むような、立派な建物。

 夜の帳に覆われた、街の様子と違い、邸の1部屋には、灯りがついていた。

 


 男はフードの下の、|赤と金の眼をより一層光らせ《・・・・・・・・・・・・・》、大きく跳び、屋敷へ侵入していくのだった。





▼▼▼





 トーマス、こと俺は灰毛の馬『カイ』――名前を付けた――に跨り、山道を通っていた。

 因みに、もう1頭の名前は『ブチ』である。

 どちらも名前の由来は単純なものだ。



 この山を越えれば、2個目の中継都市“イブラント"につく。

 前の中継都市でも、散々な事があった。騎士と言うものは、やはり人受けはあまりいいものではなく、あの目は精神的にまいる。

 冒険者の受けも良くないしな。



 そんなことを考えていると、山の頂上についたらしく、眼下に街が見えた。



 “中継都市"と言われているが、なかなか立派な物だ。

 歳を囲う壁。大通りだろうか、人がごったがえしているのが見える。



 そもそも、中継都市の名前の由来は、港町のフスハレと、内陸側の各都市を繋ぐために出来たからだ。

 それぞれの街に、特産品があるらしい。

 前回は楽しめなかったが、今回は楽しめるといいな。

 そう思い、山を下りるため、馬を走らせた。





▼▼▼





 この世界の検問と言うのは、良くある魔法によるものではない。

 学園都市では、その様な研究もしているらしいが。

 身分証明書を見て、荷物を検め、幾つか質問をして終わりだ。なので時間が凄くかかる。

 だから祭りや行事など、人が集まる時期では、数日待つ事も珍しくはないらしい。

 今回はそんなことはないが。



 「次だ!そこのお前、フードを取れ!」



 俺の番が来たようだ。

 ちなみに、今の俺は鎧を着ていない。前回はわざわざ、近くに寄った時に着替えたのだが、その結果がアレだったのだ。

 おじさんのライフはもう限界だよ……。

 なので、買ってもらった服の上に、外套を羽織るだけの格好だ。



 言われたとおりに、フードを取る。

 なぜ晴れなのに、フードを被っていたかと言うと――。



 「――ッ!」


 「大変なものでな」



 特殊な外見が目立つ――と言うのが理由だ。

 どの街にも、“ならず者"というものは居るもので、前回ふと外してみると、途端に襲われたのでフードを被るようにしているのだ。

 遅れた厨二病ではないのだ……。



 「よし、通っていいぞ。……あと、頑張れよ」



 テキパキと荷物を検めた憲兵が、そう励ましてくれる。

 この外見は、忌み嫌われる物と聞いたが、この国ではみんな優しいものだ、まあそうでない者もいるのだが。



 街の中で馬に乗るのは、流石にマナー違反だろう。そう思い馬を引いて歩く。

 まず向かわなければいけないのは、冒険者ギルドだ。A級には報告義務と言うものがあり、冒険者ギルドがある街に着くたびに、報告をしなければならない。



 しばらく歩いていると、前方から騒がしい声が聞こえてきた。騒音の元、それは二人組の少女と青年だった。

 驚くことに、少女の方はスーツのようなものを着ていた。レディーススーツをキッチリと着こなしており、タイトスカートから覗く脚が眩しい。タイトスカートに浮かぶ尻も、いい物だ。

 ……オヤジくさい事を考えてしまった。

 青年の方もスーツ、というわけではなく、普通の冒険者が着るような革鎧であった。ハードレザーアーマーと呼ばれる物だ。



 見ていたのが悪かったのか、少女はその1房の髪を勢い良く振り、こちらの方へ振り向いた。

 青年も若干厳しい目つき(・・・・・・・・)で、こちらを睨んでくる。



 「すまない、騒がしかったものでな」



 この様なときは、先に謝って先手をとるに限る。

 見ていただけで、やましい事など何も考えていないのだから……たぶん。



 「あんたは何者?」


 「私は騎士。……と言いたいが、今はただの冒険者だ」


 「……ふーん。嘘じゃないようね」



 少女はそう言い、青年へ声をかける。気のせいだが目が光ったような気がした



 「アル、警戒を解いていいわ」


 「……わかった、オリヴィア」



 そう言うと共に、空気が少し軽くなる。

 恐らくこの青年は只者ではないのだろう。


 

 「用が無いのなら、私は行かせてもらうよ」



 返事がないので了承と取り、俺は冒険者ギルドに向かった。

 それにしても、スーツがあると言うことは、俺以外の地球出身者が、居るとでも言うのだろうか……学園都市で調べてみるか。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ