19. 少女たちの旅立ち
ボアオークにより、重大な被害を受けたフスハレ。
意外な事に、次の日には祭りが行われていたのであった。
崩れた門周辺に、転がるオークたちの死体。
それらは、この世界の住民たちにとっては貴重なタンパク質源であった。
床にぶちまけられている肉を、嬉々として食べるのは如何なるものかと思うのだが。
しかし、その所は大雑把らしく、砂を払って、焼くか、煮れば、問題ないというスタンスらしい。
酷いものなど、砂の食感を気にしなければ、払いもせず食べるそうだ。
破壊された建物なども、大部分は壁や住居などらしく、商店など蔵は無事な様で、早々に酒盛りを始めるのだった。
冒険者ギルド。その中でも関係者による宴会が行われていた。
いつもは、カフェとして使われている所を、今は宴会場として使っている。
そこで、2人の女が話していた。
「トーマスさんは、もう出て行ってしまったんですか?」
「ああ、あいつはもう昨日のうちに、旅に出ちまったよ」
トーマスの行方を問いかけるのは、金髪碧眼の女であった。
豊満な肢体に、美しく整った顔。美人が多い受付嬢の中でも、飛び抜けて綺麗な女性であった。
彼女は勝手に出ていったのが不満なのか、少し悲しみが混じった、不満気な顔をしている。
「ジアーナは、トーマスのことが好きだったのかい?」
チビチビと酒を飲む女――ランカはそう問いかける。
ジアーナは、その問にキョトンとした顔をし、次の瞬間、吹き出すように笑い出す。
「好きか嫌いなら、もちろん好きですよ。優しいし、紳士的。強さだって申し分ありません」
ジアーナはそう笑顔で語り出す。しかし、ランカはそれに反論する。
「そんなのは、貴族と一緒じゃないかい」
「そうですよ?私は昔からそうです。逆に一目惚れ、なんて言う方がわからないです」
ジアーナが行き遅れた理由。
それは、この様な考え方が冒険者に合わないせいかもしれなかった。
ランカ等の冒険者達は、全くの真逆の考え方だからだ。
彼らの仕事には、常に命の危険が付き纏う。
その反面、彼等の恋愛観は、ひどく刹那的で、情熱に溢れる物になりやすかった。
「私はランカさんと違って、トーマス様を追いかけたい、と思う程じゃありませんよ?」
不意に、ジアーナはそうつぶやく。
ランカは見透かされたかの様に、そう言われ、思わずジアーナを見る。
「いいじゃないですか。冒険者なんですから」
「けれどっ、A級の義務が――」
「――アレは、強制ではありません」
遮るように言われ、ランカは息を呑む。
強い視線で、ランカを見据え、ジアーナは言い放つ。
「――本当に好きなら、追いかければいいじゃないですか」
ランカは言い返すことができず、黙らされるしか無かった。
その次の日、宴会でジアーナに言い含められ、都市を出ていく、ランカの姿があったと言う。
▼▼▼
祭りによる熱気で、包まれた都市。
崩れた門の近く、宴会から外れ、静寂に包まれたそこに、4人の少年少女がいた。
「――師匠より早く、学園都市へ向かいます」
そう言い放つのは、綺麗に手入れされた金髪を垂らし、ロープを着込む少女だった。
少女――ヨーゼロッテに同意のようで、隣の少女――ゾフィも頭を縦に振っている。
「俺は反対だ」
それに異論を唱えるのがヨルン。
このパーティ内で、比較的しっかり者の少年だった。
「俺達のパーティーに関係はない、さらに最初の予定とちがくないか?」
「そういや、最初は学校始まるギリギリまで、冒険者やるって予定だったじゃん!」
忘れてたぜ。と呟くのは、ムードメーカーのヘルフだ。
とどのつまり、彼等はパーティー全体において、トーマスを追いかけても何ら利益にならないことを、反対しているのだ。
当初、彼等は長期休暇の間、冒険者をやり続け、腕を磨く予定だった。
そこに、幸運にも所属出来たクラン――ペドロが新大陸へ、探査に出かけるというので、付いて来たのだ。
しかし、それも予想よりも早く終わってしまい、予定を変更し、フスハレで残りの休みを過ごしていたのだ。
そもそも、この“フスハレで過ごす"というのも、ヨーゼロッテ達、女性陣の私情が多分に含まれている。
ヨルンは、この機会に彼女達に、その話をしようと思っていた。
「なんで、師匠にそこまで執着するんだ?」
その問に返ってきたのは、妖艶な笑みであった。
「――この件は、決して関係ないとは言えないですわ。ご存知の通り、師匠はとても“強い"。だから、ぺドロさんが欲しがっていても、不思議ではないわ」
そう言われ、ヨルンはハットした気持になる。
そうなのだ、クランの盟主のペドロは、驚くほどに“強欲"。
彼がトーマスを自分の物にしたがっていても、何ら不思議ではなかった。
「私達は、師匠をクランに引き入れる為にも、師匠を追った方がいいのですわ」
ヨーゼロッテはそういうが、これはデマカセであった。
確かに、トーマスとクランで一緒になる。
これはまさに理想である、しかし彼女達は、トーマスを追いかけるために、クランを捨てる事も躊躇わない。
「わかったら、“鳥籠"に乗ってさっさと行きますよ」
「えっ!?はやくね!?」
「何言ってるんですか。早ければ早いほどいいでしょう?」
そうヨーゼロッテは、ヘルフに言い放ち、“鳥籠"と呼ばれる物を呼びに、獣舎へと向かう。
鳥籠、とは大きな鳥、それこそ2mを軽く超えるような大鳥に、籠と呼ばれるものを掴ませ、運ばせる、乗り物の1つである。
馬車よりも高価で、しかし空輸だけあり、陸路よりも早く運べるのが利点だ。
そうして、少年少女4人を乗せた鳥籠は、学園都市へ向け飛び立ったのだった。
ノリと勢いで書いてきたので、プロットをうまく立てられないんですねー。




