小学生は朝から頑張ります
冬なら作りおきもできるけど、今は6月半ば。
梅雨の時期も終盤で、そろそろ暑くなって来る頃だ。
夜に作っておくのはちょっと控えたいので朝ごはんと一緒にお弁当のおかずも作ることにする。
朝ごはんはトーストと目玉焼きに……ダイエット中の上のお姉ちゃんのためにとサラダ、お兄ちゃんと育ち盛りの下のお姉ちゃんには厚切りベーコンと、お兄ちゃんにはコーヒーも。
毎朝大体こんな感じだから楽といえば楽である。
朝ごはんができたらお兄ちゃんを呼びにドアをダンダンしにいく。上のお兄ちゃんはちゃんと早く起きるのに、下のお兄ちゃんはギリギリまで起きない。ちこくしても知らないんだから。
「お兄ちゃんごはんできたよー!」
ダンダンダン
「早くしないと会社ちこくしちゃうよ!」
ダンダンダンダン
……返事がない。
ダンダンダンダンダン……
「いま、起きる……」
少しこもったような声でやっと返事が帰ってきた。どうやらやっと目が醒めたようだ。
早く着替えてご飯を食べるようにと言って下へ降りると、お姉ちゃんたちが既に朝食を食べているところだった。
「今日もおにぃ起きないの?」
「ま、いつものことじゃん。兄さんは朝弱いんだよ。」
お姉ちゃんたちが食べるのを見て私も席につくと、やっとお兄ちゃんがキッチンに顔を出した。
どうやら会社には間に合いそうでほっとしたのも束の間、着替えてないようで寝間着に使っているTシャツとハーフパンツを着たままだ。
「お兄ちゃん、着替えてきなよ。顔も洗ってきて、ごはんはそれから!」
椅子に座ろうとするお兄ちゃんを止め、支度を整えるように促すと渋々といったように再びキッチンから出ていく。
それを見送りながら朝ごはんを手早く済ませ、空いたお皿を流しに置いてお弁当に取りかかる。
「なにか手伝おうか?」
そのうちに上のお姉ちゃんも食べ終わったらしく、お皿を下げてお手伝いを申し出てくれた。
「えっと、じゃあお皿あらってほしいな」
「はいよ」
私のには野菜多めでね、というリクエストも受けつつ玉子焼きを作っていると、漸く支度を終えたお兄ちゃんが顔を出した。……まだ眠いのだろうか、目を擦ってボーッとしているようだ。
しかしちゃんとコーヒーの入ったマグカップを持っているのでその内覚醒するだろう。
ウィンナーに切れ目を入れながら洗い物が終わったらしい上のお姉ちゃんと、いつの間にか横で自分のお弁当にだけおかずを詰める下のお姉ちゃんの話を聞く。
「今日は友達とカラオケあるから、何かあったらお姉かあたしの携帯に連絡チョーダイ」
「うん。お姉ちゃんたちも帰り、気を付けてね」
「私はバイト7時までだから、最初にお風呂入ってなね?」
「うん、わかった!」
手を拭いて、お姉ちゃんたちが鞄を持って学校に向かうのを見送るために玄関に行く。
「じゃ、いってきます」
「いってきまーす」
「いってらっしゃい、気を付けてね!」
二人を送り出した後はお兄ちゃんの番だ。
お兄ちゃんはやっとご飯を食べ終えて、お皿を洗っている。
そろそろ7時20分だ。自分も支度をしなければならない。
「お兄ちゃん、くつしたソファーの上に出してあるから、それはいていってね」
「わかった、行ってきます。翡翠も気を付けていけよ。」
それから、とお財布を開いてお兄ちゃんがお札を三枚テーブルの上に置いた。
1ヶ月の食費であるが、余ったら好きに使っていいらしい。
今のところ特に欲しいものもないので余ったお金はありがたく貯金箱に入れさせてもらっている。
お兄ちゃんも欲しいものがあるのにと思うと、ちょっと申し訳なく思う。
玄関が閉まる音を聞きながら手早く用意を済ますと、お財布にさっきのお金をいれてタンスへ仕舞う。
学校へ持っていって無くしたら大変だから、買い物は家に帰ってきてから行くことにしている。
自分のお弁当を持って玄関を出、鍵を閉めてとじまりよーし!の確認。
よし、今日も頑張るぞ。