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HAPPINESS*VALENTINE'S DAY

作者: 柊 玲雄

「野崎くーん!チョコつくったの~食べて食べて~!」

「山科く~ん!チョコ、あまっちゃったからぁ、食べてよー?」

「葉山くーん__」

「千夜く~ん__」


・・・あっちこっち、バラ色ピンク色恋色バレンタイン色・・・・。


あぁああああ!!!

死ぬほどイライラする!!!!!


なーにが、「野崎く~ん!」っだぁ!!

いっつもは「ねー野崎ー?」とかなのになんなの?!ほんとなんなの?!

リア充ってほんとわからん!なにがいいんだよつか野崎ってだれだよ!


くっそ・・・!!バレンタインなんて、はぜればいいんだ!!!


「ていうか!なんで並んでるわけ・・・?!」


おかしい、絶対おかしい。

__どうして、私の机の横からずーっと黒板にかけて行列ができてるわけ!?

え、なんなの、私風船とかもってないよ?「はい、どうぞ!仲良くしてあげてね!」とか言って犬のかわいい風船渡せないよ?!


「いやぁ、えっとー・・・チョコレート、ほしいなぁ・・・と思って」

「・・・は?」


・・・私が、チョコをあげるだと・・・?


「ごめん、死んでもない」

「えぇええ?!け、けど、目撃証言によると、志稀しきさんはクッキー生地、メープルシロップ、デコレーションなどなどを買っていたという・・・」


・・・な、なぜそれを知っている・・・?!


「お前ら・・・ストーカーなの?」

「そ、そそそ、そんなんじゃ!ただたまたま見つけただけなんだ!」

「いやべつにどうでもいいんだけど・・・」


・・・けど、あれはこいつらに作るために買ったんじゃないし・・・。


というか、そろそろアイツがくる時間だな・・・。


「残念だけど、君らのチョコは用意してないんだ」

「なぁああああああああああああああ」

「えっと、ごめんね?」


一応謝っとこう。

まぁ・・・期待させたおぼえはないけど期待させちゃったみたいだし・・・。


「うん、許します。普通に許します。みなのもの、たいさーん!」

『はっ』


ずざざざざと私の机から行列がなくなった。

え・・・・。なにそれこわ・・・。

ま、まぁいいわ・・・。


「ってやっばっっ?!」


もうアイツ、きてるよね・・・!?


私は少し濃いピンク色の袋を持って、非常階段へ走る。

非常階段は北校舎の一番突き当たり。

ちなみに私に教室は南校舎。

のぉおおおんんんん!!!遠いぃいいいいい!!!!


「はっはっ・・・はぁっ・・・」


非常階段についてケータイを見ると、5分かかっていた。

オーマイガ!!!

なんつーこった!!


ガタンッと勢いよくドアを開けるとやらかした。

階段いきなり階段があることを忘れるという。


「×○□♯○□△♭♯~!?!?!」

「っと、あぶねぇ。なにしてんだ」


目を開けるとそこは誰かの胸の中でした。


「ぬわああああああ?!?!?!」

「るっせーよバカ。受け止めてやったんだから感謝しやがれ」

「ぬっ・・・ご、ごめん、ありがとう」

「たく、相変わらずドジだな」


そういってあきれた様に、私を受け止めた人は笑う。


「ドジで悪かったな・・・」

「誰も悪いなんざ言ってねーよ。ま、元々いかちぃから、そのぐらいドジでもいいんじゃねーの?」


ぽんぽんと私の頭に手をのせる。

・・・こんなことをされて、心地いいと思えるのは、この人ぐらいじゃないだろうか。


「蓮先輩・・・子供扱いしないでよ」

「じゅーぶん子供だろ?俺より2歳も年下なんだから」

「うー・・・」


__宮野みやのれん

私の2歳上の先輩。


この人との出会いは、微妙だった。


元々、この北非常階段は私の休憩場所だった。

クラスのバカな女子たちの声をさえぎりたいとき、木がゆれる音がかすかにきこえるこの静かな非常階段に身を潜め、本を読んだり、雑誌を読んだり、時には寝ていたり。

そんな、私だけの非常階段だと思っていたここに、この人、蓮先輩は現れたのだ。


__それも、私が珍しく寝ているときに。


「おい」

「んぅ・・・・」

「おいコラお前。んぁ?1年か・・・。ちょい、そこの寝てる1年」

「ん・・・・」

「やっとおきたか・・・。お前1年だよな」

「んぁ・・・・?そう、ですけど・・・」

「何してんだ、ここで」

「昼寝ですけど」

「まぁそうだよな・・・。んなところで寝てたら風邪ひくけど」

「あぁ、気にしないでください、私丈夫なんで」

「ふーん・・・あっそ。まぁいいわ。んじゃ、俺も遠慮なくここで寝させてもらおうか」

「そうですか・・・ってえぇ?!?!」

「なんか文句あっか?」

「い、いえ・・・べつに。けどなんで・・・」


「え?なんとなくお前が気に入ったから」


__この出会いをきっかけに、蓮先輩は毎日ここの非常階段に来るようになった。

といっても来る時間は決まっていて、朝の10時~昼の3時の間。

それまでにこない日は呼び出しくらってたり、補修を受けてたりしているみたいで。


まぁそんな感じでなんやかんやと毎日やっているうち。

蓮先輩の癖なのかなんなのか、私のあたまにぽんぽんと手をのせるしぐさに、妙に落ち着きを感じるようになっていたのだ。

そしたら、そこからなんか毎日自分の気持ちがよくわからなくなって、はっと気づいたときには、「あぁ、私はこの人のことが好きなんだな」ってなっていた。


「つかなんでんなに急いでたんだ?」

「え?あ、あぁ・・・・。えっと・・・うん、色々、あって・・・」

「はっはーん?色々なぁ・・・?俺にその色々を隠す気か」

「ちがっ・・・そんなじゃ!」

「じゃぁ言ってみ」


そういって腕を組んで手すりにもたれかかる蓮先輩。

__3年生の中でもかなりの人気がある蓮先輩はなにをやってもさまになる。

今だってそうだ。

ただの手すりにもたれかかってるっていうだけなのに。

そこからふっと髪の毛をかきあげただけなのにさまになるのだ。


「・・・はい、これ」

「んぁ?これって・・・。チョコか・・・?」

「チョコじゃない、ちゃんとメープル味のクッキーだから。・・・長い間一緒にいたんだから、そのぐらいおぼえてる・・・」


というよりか、ふと蓮先輩が言っていたことを教室で必死でメモってたんだけどね・・・。


「はっはぁん、やるなぁおまえ!」

「ぬぁっ!?ちょ、髪ぐちゃぐちゃになるでしょうが!」

「はいはい、照れ隠しもかわいいなぁ!たっくもうほんとかわいいわぁ!」

「ちょ、かわいいとか連呼するな!バ、バレンタインなんだから、蓮先輩たくさんもらってるし、そんなの別になんのたしにも・・・」

「いんや、ちげぇよ?だって、普通のクッキーくれたん、志稀だけだから」

「え・・・?」


そう、だったんだ・・・?

驚きでなにを言えばいいかわからなくなった。

え、えっと、えと・・・。


「よ、よかった・・・」

「あぁ、ほんっとよかった!」


そういって袋を上げてがぶっとクッキーにかぶりつく蓮先輩。

チョコは嫌いだけど、甘いものが大好きってことをちゃんとメモしててよかった・・・。


「あっ・・・!あ、あ、あの、蓮先輩!」

「んぅぁ?なぬや?(ん?なんや?)」

「いや、食べてからでいいです・・・」

「んぐっ、ふぅ、超うま・・・。あぁ、で?どした」


ん?と首をかしげる蓮先輩。

そのしぐささえさまになるからむしろ怖い。


「・・・えっと」

「んー?」


きょ、今日こそ・・・今日こそ決めていたんだ。


ちゃんと、告白するって。


「あの・・・」

「うん、どしたぁ?」


い、言わないと・・・。

言わないといけないのに、言葉がでてこない・・・。

なんて言ったらいいんだろう?

「実は好きだったんです」?それとも「好きです、先輩!」かな・・・?

ど、どうしよう・・・!?


「ふっ・・・くふふっっおまえおっもしれぇな!」

「へ!?な、なにが!?」


蓮先輩はこらえていたらしい笑いをぶわっとはきだした。

すでにおなかを抱えて笑っている。


「な・・・なんでそんなに笑うの?!」

「いや、だって!お前おもしろいし!もうなんだなんだ、そんな詰まって。なにがいいたいんだよー?」


そういって「んー?」と顔を近づけてくる蓮先輩。


「はわわっ・・・あゎっ・・・。え、えと・・・あの、ね、先輩」

「おう、なんだ」


顔を離して、またさっきの場所に戻る先輩。


言おう、今度こそ。

ちゃんと、言おう。


スー....と息を吸う。

フーッと力いっぱいはく。


うん、大丈夫。

いえるよね?


「先輩、私、先輩のことが好きです」


その私の一言に、一瞬空気が固まった。

時間さえ動いていないように。

蓮先輩も静止していた。


ど、どうしよう!?

だめな雰囲気にしたか・・・?!

ど、ど・・・どうしよう?!


「ふっ・・・やっと言ったな、志稀」

「・・・え?」

「たっくよー?2ヶ月ぐらい前からまだかまだかと待ってたのにぜーんぜんこねぇから・・・。今日こくってこなかったら絶対襲ってた」

「お、おそ・・・・!?」

「大体、女一人が非常階段でぐーすか寝てる時点で無防備っつーんだよ。...何回俺が阻止したと・・・」


最後、蓮先輩が小声で言った言葉に、私はドキリとした。


「ど、どういう・・・」

「だーから!お前のファンかなんかしんねーけどそんなやつらが、お前の寝込みを襲おうと非常階段あたりをうろちょろしてたんだよ!だから俺が一発二発やっといたんだよ!わりぃか」

「そう、だったの・・・!?」


ど、どうしよう・・・。

今私、すごいうれしい・・・。


「はぁ・・・。たっく、奥手っつーのは大変だな、コノヤロウ」

「奥手とはしつれ、ん____」


しゃべろうとした瞬間に、私は先輩の唇で言葉を遮られる。


「んはぁ・・・。いやーうまい、お前の唇」

「な、な・・・・!?」

「お前もあながちいやじゃねーだろ?」

「・・・それはそうだけど・・・」

「なっ」


蓮先輩はニッとイタズラっこのようにわらった。


あぁ、そうだった。

蓮先輩はこういう人だったっけな。


「蓮先輩らしいっていうかなんていうか・・・」

「だろっ」


そういって私のおでこにコツンッと自分のおでこを当てる先輩。


「ファーストキスはチョコ味だったよ」

「蓮先輩?それ、私もですけど?」


そういって、私たち二人は笑いあった。


バレンタインは、リア充の時期だけれど。

とてもうざい時期だけど。


幸福もあるようだ。

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