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春-それが初恋だから-  作者: 宮嶋 実果
6/10

〇5〇

 連日の猛暑もお盆が過ぎればだいぶ過ごしやすくなる。とは言え、夏は夏なので春や秋、他の季節に比べれば暑いのだが。


 そんな残暑厳しいとある日、私は登録していた派遣会社の担当者から呼び出しを受け、新しい勤務先を紹介された。


「小野田さん、早速だけど今から派遣先に行けるかな?」


 本当は会社側は私ではなく、違う人を向かわせたかったらしいのだが、研修の為、二・三日前に向かわせた女性社員が仕事を疎かにし、そこに勤める社員に言い寄った事で直接経営陣側に苦情の連絡が来たらしい。その時の剣幕は凄まじい物だったらしく、危うく漸く獲りつけた大口の新規の契約を破棄されそうになった所で、最期のチャンスを貰い、今回の私の派遣となったらしい。



(ああ、どうりで疲れてるわけね・・・。)



 クレーム処理は命を削るほど大変だと言うのは何処の企業でも同じなのだ。かく言う私の家も多くのクレームが寄せられ、(その多くは本社から回された本社の尻拭いだったんだけど)心と体力が削られた。


 微妙にやつれている仙田さん(私の担当者)から派遣先の地図を記された書類を受け取り、タクシーを拾って現場へと急いだ。

 因みにこのタクシー代は会社が負担してくれると言うので、後で請求する為に領収書をきって貰う。


 20分後、私は無事に現場に着いたのだが、驚きのあまり、暫く唖然としてしまった。

 私が派遣されたのは【KOIZUMI】と、立派な社名が刻まれた会社で、記憶違いでなければ、父の親会社のライバル会社だったはずだ。


 そこで私は納得してしまった。

 何故派遣会社にクレームが来たのかが。


 小泉カンパニーは、名立たる大企業の中でも仕事に誇りと自信を持っているので、そこに勤めている人達自身も仕事を何よりも愛していて、誇りを持っている。

 だからその仕事を疎かにしてしまう事になる様な存在が邪魔だったのだ。


「さて、こうしていつまで呆けてる訳にもいかないよね」


 私は派遣とはいえ、会社側から信頼されて派遣されたのだから会社の面子を汚す訳にはいかない。ならば、私は私のやること、出来る事を尽くし、今以上に信頼される様にすること。


 ぐっと、拳を握り、私は仕事に取り掛かるべく、受付へと歩み寄ったのだが・・・――。


「お引き取り下さい。当社は貴女の様な人間に構ってられるほど暇ではございませんので」


「え、でも、確かに私は派遣されて、」


「――お引き取り下さい。警備員を呼びますよ」


 聞く耳持たず。

 

 はぁ、プライドが高いのは悪いことだとは言わないけど、これは無いよね。これでこのまま私が帰ったら、完全にこちらの心象が悪くなる。

 とは言え、このままここで押し問答していても仕方ないので、私は一旦社外へと出て、何とかならないか思案する為、会社の前にあるベンチに座った所で、思わぬ人と再会を果たしたのだった。

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