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守るべきもの

ようやくです!お久しぶりですm(_)m

空が黒く曇った月曜日。

前回の登校は入学式だけだったので、実質これが高校生活のスタートになるのである。

なぜこんな日に限って曇っているのか。天気予報では雨が降るとも言っていたし、傘をもっていくか。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


生徒(特に新入生)の敵であるクソ長い坂道を登り、なんとか校舎に到着。

教室に入り、ちらほらといるクラスメイトたちに挨拶をして席に着く。

隣を見ると誰もいない。どうやら美帆はまだ来ていないようだ。

意外だな。なんか美帆みたいな性格の子は、早くから来ている雰囲気があるのだが。


それからしばらくしても、美帆は一向に現れない。まさかの寝坊だろうか。


そして予鈴がなり、本鈴がなり、担任である小堺先生がやってきた。



美帆は、まだ来ていない。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「はっ!はっ!はっ!クソッ!!」


俺は空が薄暗い中、街中を走っていた。

正直、俺の頭の中は混乱していた。いまだに理解が追いつかず、理解したくもなかった。



――――――――美帆が攫われた(・・・・・・・)なんてこと!



俺がこのことを知ったのは、全くの偶然だった。僥倖といってもいいだろう。

トイレからの帰り道で、たまたま教師たちの会話を聞いた。そして知ったのだ。


美帆が昨日から家に帰っていないこと、誘拐の恐れがあるから警察が対応していること、余計な不安を煽らないように生徒には知らせず内密にしておくこと―――

そこまで聞いて、理性がはじけた。ただ本能で駆け出していた。


それからしばらく、街中をがむしゃらに走り回ったが、何の収穫もなかった。


「クソッ!俺が最後まで送り届けなかったからっ!」

しかし、いくら焦っても意味が無い。多少走り回って、いくらか落ち着いてきた。

ふと気付くと、そこは昨日美帆と別れた場所だった。



そのとき脳裏に、あることがフラッシュバックした。


――――――――

「私、小さい頃からの秘密の場所があるんですよ」


「独りになりたいときの、憩いの場って感じです。薄暗くて、静かで、時々響く電車の音と振動が妙に落ち着いて」

「最近は入れなくなってしまったんです」

「なんだか最近、その場所に変な人たちが集まっているんです。まるで、なにかが来るのを待っているように、何日も」

―――――――――


もしも、その待っていたやつらが、今回の実行者なら?

美帆だけの秘密の場所を彼らが知っていたのは、美帆を攫うために調べたから。

そこにいたのは、秘密の場所にやってきた美帆を攫うため。

しかし、いつまでもやって来ないことに痺れを切らして、実行に移ったとしたら?



誘拐なのだから、金が目的だろう。美帆だって、あの金持ち学校に通っているのだ。狙われてもおかしくない。

交渉のための人質なら、しばらくは命の心配は無い。


でも。

もし仮になにもされていなくても、1人で攫われて、利用されて。

そんなのが平気なはずが無い!



気付けば俺は、走り出していた。

この世に生を受けて十五年余り。生まれ育ったこの町に、知らない場所なんてほとんど無い。


あの時は深く考えなかったが、美帆の言っていた場所には心当たりがあった。

というかモロ答えのようなものだ。

美帆は「時々響く電車の音と振動が妙に落ち着いて」といっていた。


だが、リニアモーターカーが復旧した今、電車の振動、ましてや音が響く場所なんて限られている。


この町にある鉄道はただ一つだ!

そこに美帆がいる確証なんてない。でも、今出来ることはそれしかない。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


そこは、何度も見たことのある場所だった。

いつもの壁。

いつもの天井。

いつもの匂いにいつもの空気。



ただいつもと違うのは

その秘密の場所に、秘密だったはず(・・)の場所に、知らない男たちがいることだ。


彼女は考えていた。

なぜこんなことになったのだろう。なにがいけなかったのだろうか。


そういえば。雷渡君は無事だろうか。

一緒にいたところを見られて、ひどい目にあっていたりしないだろうか。


出会って二日。たった二日という短い時間しか接していないが、それでもわかる。

彼がどれだけ優しいか。彼がどれだけ他人を幸せにできるか。


だからこそ。彼女は祈る。

彼だけは、無事でいてほしいと。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



鉄道が一つしかないといっても、それは本数のことであり、長さにしたら相当だ。

少なくとも町をまっすぐ横切っているのだから。


それでも、走ることをやめるわけにはいかない。



線路に沿って、しばらくした頃。

怪しげな場所を発見した。

ドラム缶の位置が、まるで出入り口を塞ぐように置かれている。

普段なら気にしないだろうが、今日に限って、俺の観察力は冴えているらしい。

そのドラム缶のそばには、二、三枚の葉っぱが落ちていた。少し離れたところに樹木があるので、落ち葉があってもおかしくはないが、その落ち葉はちぎれて潰れていた(・・・・・・・・・)


つまり、このドラム缶は、人為的に移動させられたものであるということだ。


その瞬間。俺は、この場所に美帆がいると思った。

たいした理由も証拠もない。ドラム缶を動かしたのが誰か、なんてわかりはしない。

でも俺は踏み込んだ。



そこには、いかにも下っ端のヤンキーです。みたいな風貌のやつが二人いた。

どうやら当たりだったようだ。


その二人は、俺に気がついたようで、ツカツカと近づいてきた。


「よう坊主。こんなところになんの用だ?」

オールバックのやつが声をかけてくる。

「・・・・・・」


「おい!なに黙ってんだ?なんとかいえッぐぽっ!!」

これは別に彼が、語尾がぐぽっ。のキャラだとかではなく。


単純に、俺が殴り飛ばしたからだ。

「なっ!?てめぇ!!!」

もう1人のポマード臭いやつが、持っていた金属バットを振りかぶったが、そんなことでは、俺に当てるなんて五億年かかる。

「遅ぇよ」

そいつの手に左手を滑り込ませ、バットを抜き、腹に右拳を入れる。そしてよろめいたところに、首に回し蹴りをいれて飛ばす。



少し歩いていくと、古い倉庫のようなものが見えた。中に人影があり、扉のところには三人の見張りがいるのを見て、ここに美帆がいると確信した。


とりあえず裏手にまわると、少し上のほうに窓があった。

近くに置いてあった脚立を使い、中を覗くと、五人の男がいて、柱のそばには、美帆が縛られて座っていた。

だが迂闊には飛び込めない。

向こうには人数がいる。見張りを合わせると八人。

もし彼らが全員、ズブ素人であっても、向こうには美帆がいる。人質なんかに使われてみろ。そんなもんアイアスの盾よりも強力な壁になっちまうだろうが。


そのとき、中から話し声が聞こえた。


『暇だな。今』

『ああ。することねぇしなぁ』

『にしてもコイツ。かなりいい女だよな・・・』

『なんだオマエ。JK好きか?』

『あぁ?高校生は大人じゃボケ』

『とか言ってますけど、どうします?リーダー』

『・・・・・・。いんじゃね?』



俺の理性君は、あっさりと引きちぎれた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


桜井は高校生である。さすがにサンタが親であることは理解しているし、正義の戦隊ヒーローや世界征服を企む怪人集団などがそうそうお目にかかれないものであることは理解している。


だからこそ。

期待なんてしていなかった。いや、出来なかった。


なまじ現実についての教育を15年余りしてきたために、都合のいい正義の味方の登場なんてありえないと思っていたし、そんなことを望めるほどに自分が、この世で重要な人間である自信なんて皆無だった。

世界では数分に1人が、命を落としているという。

自分も、その中の1人なのか・・・、と。ほとんど諦めていた。


だから、自分を誘拐した男たちの会話に耳なんて貸さなかったし、興味も示さなかった。



しかし、どうしても一つ。心残りのようなものがあった。

何故なのかは、自分でもわからない。

だから彼女は、そのことを客観的に考えていた。

なぜ。あの少年のことが。雷渡君のことが・・・こんなにも思い出されるのだろう。


恋心・・・なのだろうか。とも思ったが、すぐに否定した。

たしかに、面白くて、好感を抱く人柄ではあったが、出会って二日やそこらでなびくようなことはないだろう。


では、恨み?ますますもってありえない。

彼は、自分のことを心配して、しっかり送ってくれたし、途中で別れたのだって自分の意志を尊重してくれたからだろう。それで彼を恨むなんて、お門違いにもほどがある。

むしろ彼の性格を考えれば、自らに過ちがあり、己を責めている可能性さえありうる。

それだけ優しいのだ、彼は。関わったのはわずかな時間かもしれないが、あの滲み出るような温かさに気付けないほど、自分は狂った人間ではない。



もしかして希望を抱いているのだろうか。これが一番ありうる結論だ。


しかし、それは同時にあってはならない結論でもあった。

なぜならこの考えは、彼を巻き込むことになるのだから。

こんなことに、彼を巻き込んではいけない。だって彼には何の関係もないことなのだから。

これは自分の問題であり、自分の物語だ。

ただ1人の少女の物語が、ここでエンディングを迎えるだけなのだから。


そこにはヒーローなんて登場しないし、誰の助けも来ない。小説にしたらおそらく、本編には何のかかわりもない、もしかしたら文にすらならないようなお話なのだ。


だからこそ、彼女は願った。

このままエンディングを迎えるのは、自分一人でいい。誰も登場しないでくれと・・・。




しかし、そんな彼女の優しい願いは、天に届くことはなかった。

温かな最後の願い事は・・・・・・・・・これまた優しい、本来登場しないはずの、『ヒーロー』によって、あっさり打ち壊された。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ガシャァァァァァン

という、ガラスの砕ける音が響いた。


はじめ男たちは、反射的に出入り口のほうを見た。

しかしそこにいたのは、ガラスの破壊音に驚き、あわてて駆け込んできた見張りの三人であった。



そのとき、男たちの後方からズダンッという、少し乱暴な着地音がした。


そちらを振り向くと、一人の少年が立っていた。

最近の若者からみたら平均くらいの、中肉中背で、少し筋肉質の男だった。幾分か、顔が整っているくらいしか特筆することのない、たいして特徴のない男だった。


―――いや、普段ならそう感じたであろう。今も、何か特徴のある見た目をしているわけでもない。



だが、見入ってしまう。否、視線を外せない。

いったいどのような想いがあれば、ここまでの怒気を発することができるのだろうか。


男たちも、決してズブな素人ではない。むしろ、路地裏の喧嘩程度なら、素手でも大立ち回りが出来るだけの実力と自信があるし、現にその強さは、はじめに登場して早々に退場させられた末端共なんかとは比較にならない。


しかし。それだけの男たちが、人数的にも状況的にも圧倒的に有利な彼らが、視線を外せないほどの危険を、たった一人の少年から感じていた。



しかし、それでもこちらの有利な状況は揺るがない。だからこそ彼らには、その男に声をかける余裕さえあった。


「おい、どうした少年。道に迷ったのなら、交番はここじゃねえぞ」

「・・・・・・うるせぇ・・・。そんな言葉遊びをしにきたんじゃねぇんだよ・・・」


その少年、高坂雷渡は、怒りを押し殺したような声で答えた。いや、事実押し殺しているのだが。

「くだらねぇこと言ってねえでそいつから離れろよ・・・」


男たちは、みな一様に眉を(ひそ)めた。

おおよその検討というか、流れ的に理解はしていたが、まさか本当に、一人の少女を助けるために単身乗り込んでくるような、子供だましのヒーローのような人間が存在することに驚かされた。


ここでようやく名前が明かされる、この男たちに中で、リーダー的ポジションの男『郷地裕也ごうちゆうや』が、高坂に声をかける。


「確認の為に聞くが、つまりオマエは、この少女を助けるためだけに、こんなところに単身乗り込んできたのか?見たところ、武器の類は持っていないよう

「うるせぇ!ごちゃごちゃ言ってねぇで離れろっつってんだろ、クソ野郎!」


しかしその言葉は、轟砲のような高坂の怒号によって遮られた。


「・・・ほう・・・オマエ。面白いな」

その様子をみた郷地は、薄く口元を歪ませた。

それはまるで、高坂を認めたかのように。



そんな一連のやり取りをみて、耐え切れなくなった桜井は、声を張り上げた。


「どうして来ちゃったんですか!どうして!こんなことに関わっちゃったんですか!?」

「いくらクラスメイトとはいえ、まだ出会ってたった二日の他人のために!どうしてこんなところに来ちゃったんですか!?私のことなんて放っておけばよかったのに!私のことなんて忘れてしまえばよかったのに!わざわざ私の最期に、関わる必要なんてなかったのに!」


「ふ・・・っざけんな!!!」

それまで黙って聞いていた高坂が、耐え切れないというように怒鳴った。

ビクッと、桜井だけでなく、話に入っていない男たちにも伝わるような怒りだった。


「ただのクラスメイト?出会って二日の他人!?そんなこと関係あるかっ!他人だろうがなんだろうが知ったことじゃねえ!俺はお前を助けたいと思ったからここに立ってんだ!救い出したいと思ったからここに立ってんだ!これは俺のわがままだ。お前の事情なんて関係ねぇ!もしお前が、殺して欲しいとか、早く死にたいとか考えていても!そんなもん俺が認めねぇ!もしかしたらお前は傷つかなかったかもしれない。無傷のまま帰ってきたかもしれない。

でも!そんなの、嫌なんだよ・・・!誰かが辛い想いをしてるなんてのは、嫌なんだよ!」



何故だろう、と桜井は思った。その言葉の中には、もう二度と(・・・・・)、同じ過ちを繰り返したくない。というような想いが、込められていた気がしたからだ。


彼の過去には、なにがあったのだろうか。これほどまでに、彼を追い詰めるようなこととはなんだろうか。

知りたいと思った。そして、そんな想いを一人で抱え込んでいる、このバカな少年を、支えてあげたいと思った。


そんな、弱くて脆い少年は。だからこそ、己の決意を伝えようと、力強く宣言した。



「今からお前を助けてやる。反対も異論も受け付けない。文句があるならあとで聞いてやる。だから、今は黙ってそこで見てろ」


そういって見つめるその瞳は。その立ち姿は。とてつもなく、強くみえた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


俺は正面の男たちを見据える。

先ほど俺に話し掛けてきた男は、依然として口元に笑みを浮かべている。


「くく・・・。面白いな、お前。ほんとーによぉ・・・」

何を喜んでいるのだろうか。まさかホモかこのやろう、そっち側かチクショウ。


「おい坊主。いきがってんじゃねえぞ・・・」

「まったくだ。俺たちもずいぶんなめられたものだな」

なんか二人の男が出てきた。

なんだ?俺とやろうってか?上等だかかってこいや、ボッコボコにしてやんよ。



そのとき、男の向こう側で、美帆が驚いたような顔をした。「驚愕」と顔に書いてありそうだ。


「雷渡君!その人、拳銃持ってる!」



(´・ω・)ナンテコッタ


いやいやいや!なんでだよ!なんで一端の誘拐犯がチャカとか持ち出してんだよ!オイふざけんなよおしっこちびっちゃうよぅ!



とか。

普段の俺ならやりそうだよね。


だが、今の俺は、怒りで頭の血管がブチ切れそうなんだ。

拳銃?

まさかそれ。美帆に向けたりしてねぇだろうな三下共さんしたどもおぉぉぉぉ!!!



チッ!と舌打ちしながら、男Aが俺に銃口を向けようとして





その手から銃が弾け飛んだ。

正確には、俺が蹴り飛ばしたんだが(・・・・・・・・・)



超能力とか魔法とか。実は隠れていた力が突然目覚めた。とか、そんなお決まりの展開じゃない。

世界はそんなに甘くないからな。あれは全部、純粋に俺の実力だ。


そして銃を掴み取り、弾倉マガジンを抜き取り蹴り飛ばす。そして本体を遠投よろしくブン投げた。

本体に弾が残っていた場合、暴発の恐れがあるが、あれだけ遠くなら被害はないだろう。



男Aは、ポカンッとしている。

なんだ。やっぱりただの誘拐犯。持ってるだけで使い方はまるで素人だな。


そのとき、呆けている男Aの変わりに、隣の男(彼をBとする)が叫ぶ。


「なんだよお前は!バカ正直に突っ込んで来やがって!銃が恐くねぇのか!?」


なにを言っているんだこの男は・・・・・・。

「恐いよ。恐いに決まってるだろ。だから全力で必死なんじゃねえか。だいたい、銃なんて持ち出されてビビんねぇわけがねぇだろうが。だからこそ、撃たれる前に防いだんだろうが」


なんでもない、という感じで答えると

「・・・・・・化け物がぁ・・・」

と言われた。人間だよバカ。


ちなみに俺はれっきとした一般人である。め○かちゃんのようにチートなわけでもないし、キ○ジくんのように特定条件下でパワーアップするわけでもない。


どちらかといえば、善○君だ。

努力だけでのし上がったタイプ。誰だって、努力すればこのくらいはできる。才能のあるやつとやりあうことは出来なくもない。才能のあるやつが努力して、なおかつそいつの土俵で戦おうものなら厳しいものがあるが。



どうやら他のやつらは銃を持っていないようで、最初に話し掛けてきたホモ野郎以外は、みんなナイフやら警棒やらバットやら木刀やらを構えている。


突撃の意思があるのは計7人。



構えはしたが、戸惑っているらしい。


その均衡を破り、男Bが木刀を構えて突っ込んできた。


「おおおおぉぉぉぉゲホッ!ゲホッ!!オエッホ!」


ドコッ!!

男Bの顎を蹴り上げる。


・・・・・・咽るなよ。


腹に蹴りを入れ、その木刀を奪い取る。



それを見た男たちが、六人一気に走り出し、俺を囲んだ。


少しずつにじり寄って来る男たち。



そして、その距離があと一歩。というところで、俺は踏み込む。


警棒を木刀で受け、踏み込みの力を使って背負い投げの要領で押し勝つ。

隣の男の脇腹に木刀の中心尻をぶつける。そいつの腕を固めて、そのまま別の男に投げつける。

そして、よろめいたところに拳をいれて、その隣の男に回し蹴りをいれる。


とまぁ殴り合っているわけだが、それでも俺は最強でもなければチートでもない。

当然攻撃は当たるし、殴られればよろめくし痛い。


さっきから一方的に攻撃しているように見えて、結構攻撃を受けている。

正直、ここまで走ってきたせいで、足や体力はとっくに限界だし、若干頭も痛い。


なんとか六人を倒し、最後の男を見る。




・・・その男は笑っていた。これ以上ないってくらいの笑みで顔を歪めている。


「・・・なるほどねぇ。まさか一人であいつらを倒すとは」


コイツ、どんな神経してんだ・・・?仲間がやられたってのに、なんで笑ってられるんだよ・・・。



「でも。俺には勝てねぇだろ?そんだけボロボロじゃあよぉ」

うるせぇよ。俺はお前を倒して、みんなでハッピーエンドを迎えるんだ。わかったらとっとと降参しやがれスカポンタン。


すると男は、首をひねりながら言った。

「わかんねぇなぁ。なんだ?どうしてお前はそこまでしてこいつを助けようとする?なにか利益があったりすんのか?それとも、それほどの関係なのか?俺には、そうは見えないが?」


そりゃそうだ。俺と美帆は知り合ってまだ3日。それだけの期間で女の子を落とすなんて真似は、恋愛に関してのエキスパートである俺(二次元限定ではあるが)でも不可能だ。


・・・・・・・・・でも。



「そうじゃ・・・ねぇんだよな」

「なに?」

男は、理解できないといったような顔をする。


「違うんだよな。ああ、そうだ。アンタの言ってることは、根本から間違ってんだよ」


「関係がどうとか、利益がどうとかじゃねぇんだよ。正直俺だって、よくわかってねぇ。」


「でもさ・・・。やっぱダメなんだよ。最初にも言っただろ?俺はさ、誰かが傷つくのを、黙って見過ごせない小心者なんだよ。結局さ。漫画とかラノベとかでも使いまわされたような理由しか、俺は持ってねぇんだよ」


そこで一度言葉を区切り、俺ははっきりと宣言した。



「誰かを助けるのに、理由なんていらないだろ?」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「おいおい。なんだその台詞はよぉ!カッコよすぎだろーが!まさか、将来の夢は正義の味方とか言うんじゃねぇだろうなぁ!」

「いいなぁ、それ。やっぱなろうかな、正義の味方」


男はギリッと歯軋りをして、懐からゴツイ拳銃を取り出した。

「だったらここでその夢を潰してやらぁ!」


ズバンッズバンッズバンッ!


「っ!?あぶねっ!」

なんとか転がって、木箱の陰に隠れる。


「はっはっ・・・やっぱ銃って怖えぇ・・・・(バスッ!)・・っ!?」

顔のすぐ横を弾丸が通り過ぎる。貫通って!

「クソッ!そんなのありかよ!」

悪態を吐きながら駆け出す。


銃に対して後退するなんて愚の骨頂ではあるが、丸腰の俺にはどうすることも出来ん。

美帆を狙われないように、時々姿を見せながら、物陰から物陰へと移動する。


「おい、なんだよその銃!明らかに威力おかしいだろ!パラメータ配分間違ったアクションゲームかよ!」


「そいつは悪かった。残念ながら、この銃は特別製でな。世界でも表向きにはほとんど出てこないような代物なんだ。ボディーアーマーだって一発で貫通する威力だ。100メートルは飛ぶんじゃねぇか?」


嘘だろ・・・!?100メートルだと?

「んなもん最早拳銃じゃねえだろ!」


俺はそのまま階段を登り、なんとか身を隠す。



そうだ。とりあえず警察に連絡しよう。という、きわめて常識的な考えにたどり着いた俺は、支離滅裂ながらもなんとか救助を呼ぶことに成功した。


あとは、身を隠して時間が過ぎるのを待つだけで、国家権力という必殺カードが、この問題を解決してくれる。




「おいおい、隠れんなよ~。そんなことしたら、この女が標的になっちまうぞ」


・・・・・・ダメだ。隠れていたら美帆がやられる。でもどうする?

このまま出て行けば確実に撃たれる。あんなもんくらったら一発でアウトだ。

なら落ちてる銃を使うか?・・・いやだめだ。使い方なんてわかんねぇもん持っても意味がない。

だったら・・・・・・。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「おい、クソ野郎!出てきてやったぞゴラァ!」

高坂は怒声をあげながら姿を現す。


それを見た郷地は拳銃を構える。

「なるほど、人質には弱いタイプか・・・」

「なんだ?人質を使うのか?」

言いながら、高坂は階段を降りてくる。

「使えるものはとことん使う。大人は非情なんだよ」

「だったらよ。大人として、子供のお願いを聞いてはくれねぇか?」

「・・・・・・俺に出来る範囲でなら」

「美帆を解放してくれ」

「それは出来ない。俺の唯一無二の勝利条件は、この女を誘拐し、管理しておくことだからな」

「・・・誰の、指示だ?」

「さぁな。俺たちゃ雇われてるだけだ。どっかの企業のお偉いさまってのは分かってるが、それだけだ。前払いを貰ったからには、しっかり働かなくちゃな」


その言葉で、高坂の腹は決まった。

「そうか・・・なら――――――」

その拳を硬く握り


「・・・やっぱお前はぶん殴るっ!」


そう高らかに宣言する。



「アアアァァァァラアァァァァァ!!!」


雄叫びとともに、地面を駆ける高坂。


距離にして約25メートル。高坂が走れば5秒にも満たない距離であるが、飛び道具を持つ郷地にとっては、余裕で必殺できる間合いだった。


郷地は、ごく自然な動作で、その手の中にある拳銃(切り札)を構え、機械のように洗練された正確な銃撃を行おうと、その指を引き金に掛けて―――



「なっ!」


その動きが止まる。


高坂が、ポケットから取り出した携帯電話を投げつけたからだ。


「クッ!」

郷地は、それを避け視線を向ける。


その距離は10メートルを切っている。

が、郷地の表情には余裕があった。


「惜しかったな!だが、あと一撃足りね・・・・・・!」


そこで言葉が途切れる。


高坂が、落ちていた警棒・・・・・・・を蹴りつけてきたからだ。



そう。

あと一撃は、郷地たちが用意していたのである。


驚きに一瞬硬直する郷地。

その懐に飛び込む高坂のその拳は、岩のように硬く握られていて


「ひっ!」


「歯ぁ・・・・・・食いしばれっ!!!」


ゴッ!という鈍い音とともに、高坂の本気の拳が郷地の体に突き刺さる。


ごろごろとその体を転がし、郷地が意識を手放したところで



高坂の勝利が、決定した。



いやぁ、このごろは更新遅くなってすいませんm(_)m


これも1ヵ月近く音沙汰なしでしたからね・・・(汗)



にじファンは残念でした。

でも、これからもこのサイトでは、オリジナル書いていくつもりなので、よろしくお願いします!

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