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親睦を深めるイベント

とても久しぶりの投稿です(^^゛)ゞ

オッス!オラ○空!



などではなく、高坂雷渡(こうさからいと)である。


別に金髪になったり、「オラは怒ったぞぉぉぉぉ!」とか言わない。




さて今日は、高校の入学式の翌日である。


そして日曜日である。




晴れて引きこもりを卒業して「よっしゃ!これからはテンションあげて学園生活をenjoyするぜ!」なんて意気込んでいた矢先に休みだったので、只今俺のテンションはおかしな方向に、ハイになってます。


ちなみに、現在時刻は午前七時。



まあ、目覚めてしまったものは仕方が無い。そうおもった俺は、自室を出て階段を下りて洗面台で顔を洗い、台所に立つ。


朝食は毎朝お手軽だ。食パンにハムとチーズを乗せて、ケチャップをぶっかけてトーストする。コップに、牛乳とオレンジジュースを混ぜたお手製オレンジオーレを注ぎイッキ飲み。そして郵便受けから朝刊を取り出し読みふけ、パンが焼きあがればテレビをつけてトーストをペロリ。




・・・・・・。お分かりいただけただろうか。


そう・・・俺は



一人暮らしなのだ・・・・・・!!!!




・・・・・・別段もったいつける話ではないが。




ここで、我が家の家庭事情を軽く説明しよう。


俺の父さんは医者である。自分で開業しているのだ。いわゆる町のお医者様だというやつ。


この辺は、都内といっても郊外であり、二十三区にも入っていない。どちらかといえば埼玉や山梨よりの田舎町なので、このあたりの人たちのほとんどが、俺の父さんを知っている。


俺の父さん、若い頃は例の「国境なき医師団」的なものに所属していて、とても優秀な医者らしい。


母さんは看護士というべきか、主に父さんの補助をしている。


二人の馴れ初めは聞いたことがないが、おそらくは、アクロバチックかつドラマチックかつファンタスティックなものだったと思う。



そんな二人は普段、病院に泊まっているので、家には帰ってこないのだ(二週間に一回くらいの頻度で帰ってくるが)。

というわけで、幼い頃は祖母と暮らしていたのだが、俺が中学に入ったころに亡くなってしまい、今に至るのである。

まあ父さんが「1人で生きることで、学べることもある」とかなんとか言っていたのも、原因の一つではある気がするが。



さて、長い説明になったが、理解していただけただろうか。


まあそんなわけで、いつもの一人の休日なのだ。

「さて、なにをしようか」

まだ学校は始まったばかり。授業が始まらないかぎり、予習も復習もできるわけがない。



「散歩に行こう!」

唐突に、ひらめいた。   なぜかは分からない。神のお告げかなにかだろうか。そのうちジャンヌ・ダルクのように「日本を救え」的なお告げがくるのではなかろうか。   ・・・・・・いやないわ。



まぁとりあえず、思い付いたが吉日。さっそく散歩に出かけるとしよう。


歯を磨いて寝癖を直し、パジャマを着替え、適当に荷造りをして玄関を出る。


すると、お隣のおばあさんが声をかけてきた。

「おや雷渡クン。お散歩かい?」

「ああ、そうだよ。いい天気だしね」

「そうかい。気をつけるんだよ」

そんなおばあさんに手を振って、俺は散歩に出かける。



ちなみに。元引きこもりといっても、ご近所付き合いはある。


一人暮らしだと、とても寂しいこともあるからな。



適当に歩いていると、何人もの知り合いとすれ違い、そのたびに「今日はいい天気だね」とか「おはよう雷渡君」やらと声をかけられる。

この町での俺の知名度はかなりのものだ。ほとんどが父さん関係だけど。



そうだ。冷蔵庫の中身が空といっても過言ではない。

買い物に行かなければ俺は、吉井○久のように、水と塩で生活することになってしまう!


そう思い立った俺は、コンビニのATMで生活費を引きおろし、商店街に向かった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


皆さんは、スーパー派ですか?それとも商店街派?


俺は断然商店街です。

商店街なら皆知り合いだし、おまけもしてくれる。なにより雰囲気が好きだ。

まあスーパーにも知り合いはいるんだが。


とりあえずまずは野菜だろう。というわけで八百屋に向かう。



「よう雷渡君!今日は人参がいいよっ!」

声をかけてきたのは八百屋のおじさん。今日も元気だなぁ。

「じゃあ、人参と大根、あと白菜とキュウリとジャガイモとトマトください」

「おう!780円だ!いつもありがとねぇ!んじゃ、このカボチャもおまけしちゃおうかっ!」


そういって、袋にカボチャを入れてくれる。

俺は780円ちょうどを渡し、おじさんにお礼をいって、八百屋をあとにした。


次に肉屋に行き、そこでも追加で豚バラを5キロもくれた。

商店街は、いい人ばかりだなぁ・・・なんて改めて実感し、帰路についた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



さて、さっそく家に帰ろうと帰路についているのだが



「へ~~~。雷渡君って一人暮らしなんですか~」

「そうなんだ」


俺の隣には、美帆がいる。

帰り道で偶然出会ったのだが、こんな偶然ってあるんだなぁ。友人とのエンカウント率って意外と高いんだろうか。

だがそんなことはどうでもいい。高かろうが低かろうが、俺は今の幸運を噛み締めるだけだ。


「じゃあ料理とかも得意なんですね」

「まあ出来なくは無いけど、食べるのが自分1人だとあじけないしなぁ」


そうなのだ。料理とは誰かのために作ることが、上達への近道だとか良く聞く。


「じゃあ、これから私が行ってあげましょうか?」



・・・・・彼女はいま、なんと言った?


「すまない。よく聞き取れなかった。もう一度言ってくれるか?」

「だから。いまから私が、雷渡君の家にいきましょうか?」


え?うちに来る?へ?なんで?ホワイ?


「えっ・・・と。なぜそういう話に?」

「いえ。1人がつらいっていうので・・・・・」


・・・・・・ああ!ご飯を食べにきてくれるのか!


「いや、でも男1人の家に女の子1人を投入って、世間的にどうなんだろうか・・・」

この子には、男は狼だということがわからないのだろうか。いや、なにもする気はないが。


「大丈夫ですよ、雷渡君なら。ねっ?」

いや、ウインクされても・・・。


まあいいか。ご飯食べに来るくらい。無問題モーマンタイだ!


「うん。じゃあ、是非」



こうしていきなり、女の子が我が家にくる。という、特大イベントが降ってきた。

天気予報では一日晴れだったのに。そういうことは前もって予報しろよな気象庁。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「それじゃあ。散らかってるけどあがって」

「おじゃましま~~す」


俺はとりあえず、美帆にスリッパを差し出し、リビングに通した。


「へぇ~~。広いし綺麗ですね」

まあたしかに、うちは比較的に広いと思う。俺しかいないから宝の持ち腐れではあるが。


「じゃあ適当に座っててくれ。いま飲み物出すから。あったかいお茶でいいか?」

「あっ、はい。ありがとうざいます」


ちなみに俺はお茶が好きだ。淹れ方にもコツがあるのだ。ちなみにうちは玉露である。


まず、沸騰したお湯を湯のみにいれ、それを急須にいれる。

そして急須のお湯を湯冷ましに移し、急須に茶葉を入れる。

湯冷ましのお湯を注ぎ、二分半から三分待つ。(ちなみに今回は二分四十秒)

時間になったら、お茶を湯のみに少しずつ交互に淹れていく。このとき、最後の一滴まで残さず淹れる。その一滴が一番美味い。


「とまあこんな感じかな」

さっそく美帆に持っていこう。



美帆はリビングのソファーに、ちょこんと座っていた。その姿は、えらく可愛らしく見えたのは、おそらく目の錯覚などではないだろう。十人いれば九人は、お持ち帰りしたい!というだろう。(残り一人は変態じゃない)


「おまたせ。はい」

と、美帆にお茶を差し出す。

「ありがとうございます・・・・・・・・・は~~~~。おいしいです~和みます~」

キミの表情に和みます。

「そっか。それは良かった」

「はい!・・・ところでなにします?お昼までまだ時間ありますよ?」


さて、なにをしようか。

うちにあるものは・・・ゲームくらいか。


「じゃあ、テレビゲームでもしようか」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


というわけで、選ばれたゲームは、3D格闘アクションのゲームだ。この前買ったばかりで、俺もやったことがない。

これはとあるアニメがもとになっており、魔法とか聖剣とかを使って敵を倒す、というものだ。

まあ選ばれた理由は「この娘かわいい!!」という美帆の意見なのだが。


はてさてゲームが始まった。

ちなみに2人プレイでやっている。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(これよりさきは、ゲームのキャラ視点になります)


今俺は、ギルド(派出所みたいな)にいる。

ちなみに俺は剣士。鎧なんてものは着ておらず、黒い外套を着込み、一本の聖剣をもっている。銘は「約束された勝利の剣エクスカリバー」である。あのアーサー王伝説の。

美帆は魔導師。なんか短い、ハリー○ッターの杖みたいだ。薄い赤色のローブを、ゆったりと着こなしている。


「えっと。まずはなにをするんですか?」

「まずは受け付けだな。ほら、あそこ。あそこでミッションを受注するんだとさ」


俺が指差した場所では、受け付けのお姉さんがあくせく働いていた。


「すいません。ミッションの受注がしたいんですけど」

「あっ、はい。では、こちらのメニューからお選びください」




そして、差し出されたメニューには――――――出前の料理がかかれていた。


え?ミッションてこんななの?こんなおいしそうなミッションなんてあるの?なんでミッションの選択肢にハンバーグステーキとかスパゲッティーがでてくるの?バグか?新手のバグか?


などと思考がショートしかけ、お姉さんがようやく自分の失敗に気付き、顔を真っ赤にしながら

「ごごごごご、ごめんなさいっ!間違えましたっ!!!」といったのは、結構かわいかった。


その後、差し出された正しい・・・ミッションメニューから、一番簡単そうなものを選び、待っている美帆のところに戻った。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ギルドを出発してしばらくの森にて


「雷渡君。つまり私たちは、その『ゲンキニナ~ル』という、なんともネーミングセンスを疑う薬草を取ってきて、『のどか村』という、これまた適当なネーミングの村の村長サンに届ければいいんですね?」

「まあそのとおりだね」


まったく、なんて適当なネーミングチョイスなんだ。仮にも、今月のおもしろゲームランキングで一位に輝いたゲームだろうが。


「ていうか薬草くらい、その辺のコンビニで買ってくればいいのではなかろうか?」

「仕方ないですよ。ゲームですから」


「にしても、深い森だなぁ。さっきから全然出口が見えないな」

「ホントですね。でも道はあってるはずですけど」


俺らは今、『ゲンキニナ~ル』が大量に生えている(ギルド情報)という場所に向かっている。


しばらく歩いていると

「あっ!雷渡君、あれモンスターじゃないですか?」


なんか白いもふもふした生物がいた。ト○ロのまっく○くろすけの白いバージョンのような。


「あ~~~。そうみたいだ」

「どうしますか?」

「幸いこっちには気付いてないみたいだし、このままスルーしちゃおうか?」

我ながら思うよ。なんて弱気な剣士だろうか。


「でも、気付かれてないならなおさら、倒すチャンスなのでは?」

そして、なんて勇敢な魔導師だろうか。


「わかったよ。じゃあ俺が突っ込んでくるから、美帆は隠れて遠距離から攻撃してきてくれ。なるべく見つからないように」

了解です!といって、草むらのなかに入っていく美帆を見送りつつ、俺は剣を抜いた。


「はああぁぁぁぁぁ!!!」

剣を抜き身で持ちながら、モンスターシロモフの団体サマに突っ込む。

シロモフたちがびっくりしているあいだに、俺は一匹を斬りつける。


そのまま二匹目に斬りかかろうとして、シロモフからの反撃があった。

シロモフの一匹が、俺に体当たりをしてきた。

そのせいで斬撃が逸れて、剣先が地面に刺さった。


剣を引き抜いて続く攻撃をバックステップで避け、そのまま五メートルほど距離を取る。


シロモフの数は残り五匹。

一匹ずつは弱いが、これだけいると面倒だな。

まあサポートは美帆がなんとかしてくれるだろう。


大勢の敵と戦うときは、まず目の前の敵を確実に倒していくのがポイントだ。

俺は剣を構え、力をためる。

そこへ、一匹のシロモフが突っ込んできた。飛んで火にいるなんとやら。


シロモフとの距離が二メートル程になったとき、一気に踏み込み逆袈裟斬り。

そして一歩下がって、また踏み込み縦一閃。


そのとき、横から別のシロモフが飛び掛ってきた。

―――――――――避けられない!!!


回避は間に合わないと考え、とっさにガードをとった。




そして、目の前のシロモフが焼け焦げた。


よくみると、遠くの草陰から顔を覗かせた美帆がいた。

彼女はステッキを振りかざし、何かをつぶやいた。すると、ステッキの先に球状の炎があらわれた。


それが二、三発と続けざまに放たれ、俺を囲んでいたシロモフは燃え上がった。




そして俺は火の海に囲まれた。


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」


やばいやばいやばい!!逃げ場がないよどうしようっ!?


火の粉が舞い、俺のライフを削っている。このままじゃ、仲間に殺されるっていう最悪な死に方を迎えてしまう!!!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


〈現実世界〉


「美帆!早く炎消してっ!」

「どっ、どうすればいいんですかっ!?」

「とりあえず水系の呪文を唱えて!」

「え、えと・・・こうですか?」


美帆はメニュー画面からコマンド表を出して、水の魔法を探す。


「あっ!ありましたっ!」


言うや否や、即効でその魔法を使う美帆。

まって!!!その技はっ!!!


水の刃アクアカッター!!!」



―――ズブシャァァァァ


チャチャチャチャ~~~。雷渡は死んだ。



画面いっぱいに、「ミッション失敗」という血文字が現れる。



「いやぁぁぁぁぁーーーー!!!!」

殺されたぁぁぁ!仲間にとどめ刺されたぁぁぁ!!!



「あっ、あれ・・・?」

となりでは美帆が焦りながらもクエスチョンマークを浮かべていた。



「美帆。せめてそのとなりの『天の恵みあまのめぐみ』にして欲しかったな・・・」

「・・・・・・ごめんなさい。気が動転しちゃって・・・」


まあ負けてしまったものは仕方がない。気持ちを切り替えよう。


「じゃあ気を取り直して、もう一回行こうか」

「はい!今度は大丈夫です!」



そんなこんなで、時間は過ぎていった。


「美帆!そっち行ったぞ!!」

「はい!『悪魔の足止めストップ・ザ・マジック』!!!」


「よし、いまだ!必殺『聖なる斬撃ホリーブレイク』!!!」

ネーミングが厨二な件には触れないように。製作者の意思だろう。


「ぃよっしゃぁぁぁぁ!!!討伐ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!」

「やりましたっ!やったーーー!!!」



まあ作品自体はよかったよ。三時間やってこの達成感だもの。



「さてと。じゃあお昼にしますか」

「あっ!そうですね、忘れてました」

というか美帆よ。すごい汗だぞ。


「美帆。汗がすごいことになってるぞ。シャワー浴びるか?」

「え?いいんですか?でも私、着替え持ってないですけど・・・」

それはそうだろう。普段から着替えを持ち歩くなんて人は、世の中広しといえどなかなかいないだろう。


「俺のジャージでよければ貸すぞ?まだ着たことない新品だし。服は洗濯しとくから」

「いいんですか?」

「ああ。ゆっくりしてきてくれ。ゲームは俺が片しとくから」

「えっ?でも悪いですよ・・・一番はしゃいでたのは私ですし」

「いいって。美帆はお客様だからな。俺だって楽しかったし」

「そうですか?じゃあすいませんがお言葉に甘えちゃいますね」


そういって立ち上がった美帆を浴室に案内し、俺はゲーム機を片付けた。

結構面白かったし、これは当たりだな。


そうだ。美帆にジャージを出してあげないとな。出てきて素っ裸で待ちぼうけはかわいそうだ。


二階の自室に戻ってジャージを発見し、それを浴室にもっていった。



現在、俺は脱衣所の扉の前にいる。さすがに、このまま開けて「きゃー、の○太さんのえっちー」なんて展開にはさせない。ふふん、そのへんの節度はわきまえているんだ。


―――コンコンッ


「美帆~~?入るぞ~~」

「ひゃっ!?ひゃ、はいっ!!」


なかから返事が返ってきたので、俺は扉を開けた。

そこには当然、誰もいない脱衣所。その奥の扉(浴室に続く扉)の向こうから聞こえるシャワーの流れる音。本来なら見えたであろうシルエットは、あいにく湯気のおかげではっきりしない。


・・・・・・べっ、別に期待なんてしてなかったんだからね!



自分で自分をドン引きした瞬間だった。


まあそんなことはこの際その辺のゴミ捨て場にでも置いといて


「美帆~~。ジャージ、洗濯機の上に置いとくからな~」

「あっ、ありがとうございます」

「じゃあもう出るから」

「はい。わかりました」


というわけで、なんのイベントもなしに脱衣所をあとにしようと扉を閉めると、ポケットから出ていた携帯電話のキーホルダーが運悪く扉に挟まれ、切れて扉の向こうに落ちてしまった。


「おっと・・・」

閉めた扉を反射的に開けて屈み込んだのだが、その無駄な反射神経のよさが仇となったようだ。




屈み込んでまず見えたのが、ほっそりとした白く綺麗な足。さらに上にいくと、細くくびれた腰。

その更に上に見えたのは、状況に着いていけずポケッとした美帆の顔。


それからようやく理解が追いついたようで、一気に顔を紅く染め上げる。


というか何を見入っているんだ俺はっ!


「・・・・・・・・・っっ!!!!!!//////」

「すっ、すまんっ!!」


俺は、ライオンに見つかったサバンナのシマウマのように(これを脱兎のごとくというのだろうか)脱衣所から飛び出し、リビングに逃げ込む。

脱衣所から悲鳴が聞こえなかったのは、きっと美帆が強い子だったのだろう。もしくは、突然のことにショートしたか放心したか。

とにかく落ち着くために、冷蔵庫から冷えた麦茶をだしてコップに注ぎ、一気に飲み干す。



・・・・・・意外と胸あったなぁ・・・。



落ち着くには、だいぶ時間がかかりそうだ。


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それから二十分ほどたって、美帆がジャージをきてリビングに戻ってきた。

美少女が着ると、ただのジャージでもここまで可愛くみえるのか・・・。などと眺めていると、美帆は顔を紅潮させてプイッとそっぽを向いてしまった。

その仕草をみて、先ほどのお宝映像が脳内にフラッシュバックし、俺も顔を背けてしまった。


「ええっと・・・・・・さっきはホントすまん・・・」

「い、いえ。安心しきって急に出た私も悪いですし・・・」


・・・・・・・き・・・・・・気まずすぎる・・・!!!

やばい。今すぐこの空間から脱出したい!


「も、もうこんな時間だ!!お昼作るから座ってまっててくれ!!!」

「いえっ!私も手伝いますから!!」


なんでやねんっ!!!

「大丈夫だから!今麦茶出すから、それ飲んで待ってて!!!」


そういって俺は、高速でコップをだし麦茶を注ぎ美帆の前においてキッチンに避難した。





「さて、なにを作ろうか・・・」

実を言うとなにも考えていなかった。適当に戸棚を開けてみると、チャーハンの元が出てきた。


「あれ?こんなのあったっけ?」

とはいえ、そんないつ買ったかも不明な食品をお客様にだすわけにもいかずにうなっていると、唐突に閃いた。



「そういえば、パスタがまだ残っていたはずだな・・・」


俺は戸棚からパスタをとりだし、さっき買ったトマト、そして数少ない冷蔵庫の生き残りであるツナ缶を取り出す。



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「美帆~。出来たよ~」


時間がたったからか、どうやら裸を見られたショックから立ち直った(というか記憶から消し去ったのだろう)ようだ。

俺は作った料理をテーブルに並べる。


「わ~~。おいしそうですね!」

「冷製パスタだよ」


そんなこんなで席につき

手と手を合わせて

「「いただきます」」



「わあぁぁ!!!すっごくおいしいっ!!!」

「そうか?ありがとう」

まあ特別おいしいというわけではないが、悪くはないかな?

なによりお世辞でも、いわれて悪い気はしない。


パスタをたいらげたあとに昨日作ったコーヒーゼリーの残りを出してあげると、これまた賞賛の言葉をいただいた。


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「さて、食べたはいいがなにをしようか」

「そうですね・・・」

二人だと意外とすることがねぇなぁ。


「とりあえずゲームでもするか?」

「いいですね。他にどんなものがあるんですか?」


そうだな・・・。ゾンビを撃ち殺していくゲームとか主人公が女の子になるやつとか動物を操って生存競争を生き残るやつとか、まあ色々あるが・・・・・・。


「さて、どれをやろうか?」

「えっと・・・この『ヒー君とハー君の戦いファイナル』っていうのが・・・」

「なるほど・・・どういった理由で?」

「えっ?イラストがきれいだなって・・・」


ああ、そういうことか。いやビックリだ。まさかそんな偶然で、このツッコミどころ満載なゲームを選ぶとは。


皆さんは、このゲームのタイトルをみてなにを思っただろうか?

俺はまず、『ファイナル?あれっ?こんなシリーズあったっけ?』という感想を抱いた。



結論。このゲームはこれが初であった。シリーズ化などしていない。なら何故ファイナルなのか?その答えは、先々週ごろの『週刊ゲームマガジン』というなんともありきたりなタイトルの週刊誌に載っていた。

その週の特集にピックアップされていた、このゲームの製作者代表たる総監督サンとやらの言葉によると、なんでも『そっちのほうが燃えるじゃないですかっ!』と、インタビュアーに対し熱弁していた。

いったいなにが、この監督サンを駆り立てているのやら。俺には皆目検討もつかないね。

というか詐欺じゃないかこれ。おい、だれかジャロの電話番号がわかるやつは俺に教えてくれ!



まあとにかく、だ。

「美帆が選んだのなら・・・・・・仕方がないな」

「えっ!?ダメだったんですか!?ハズレクジだったんですかこのゲームっ!!?」


俺は無言で、ディスクを本体に流し込む。


「じゃあ、美帆はそっちのコントローラー持ってくれ」

「え?今度は私がメインなんですか?」

俺は傍観を決め込もう。深く関わると、体験済みでも脊髄反射でツッコんでしまう危険性がある。


画面には、ゲーム本体のメーカーマークが映し出される。



そして画面が一気に暗くなり・・・・・・




『ちゃちゃちゃちゃちゃ~~!良い子のみんな~!こ~んに~ちわ~!!!』

引き締まった筋肉質のおにいさんが、笑顔でアイサツしてきた。


「なんですか!?この平日の朝と夕方にやってる、某教育番組みたいな導入は!!」

さすがの美帆でも、いきなりツッコんでいた。


『さあみんな!枕もとにポテチの用意はいいかい?今日も元気に、ぼよよん体操~~、はっじまっるよ~~~!』

「すごく不健康になりそうです!!」


『まずは、枕に寝転がって、ポテチの袋を開け―――ぐぎゃーーー!!!』

唐突に、画面が真っ赤に染まった。

『くはっ・・・。くっ、さすがにこの体操は、PTAには認められないか・・・。だが、まさか命まで狙ってくるとはな・・・・・・。この体操は、現代っ子の欲望を、忠実に叶えたものだったのだが、な(ガクリッ)』

そして画面いっぱいに映し出される、『ゲームオーバー』の文字。


「急展開すぎてどこからツッコめばいいかわかりません~~!!!」

あまりに自分勝手な展開についていけなくて、美帆サン、ご乱心です。


「あれ?あれっ!?なんで戻れないんですか!?」

「ああ。それはね・・・」

俺は美帆の手からコントローラーを抜き取り、コマンドを入力する。


「ええーと、たしか・・・L1L1R2R1×××○△○L2↑↓↑→↓□○←L2R1スタートっと」

「なんですかその面倒なコマンド入力は!?」

「ああ。再スタートするには、ケースに書いてあるコマンドを入れないといけないんだ」

「すごく面倒くさいですこのゲーム!」


早くもウギャー、と発狂している美帆。まだまだだな。俺はあきらめずにゲームを続けたぞ?まあ相当きつかったが・・・。



「じゃあやめるか、これ」

「はい!是非やめましょうすぐやめましょう今すぐに!!!」

こんな必死な美帆は初めて見た。なんかレアかもな・・・。まだ会って二日目だけども。




その後は、美帆の要望もあって、お菓子作りをすることになった。

とりあえずクッキーを作ってみたのだが・・・


「す・・・すごい・・・」

なぜか美帆が、驚きに固まっている。

「お店の売り物見たいです・・・」


そこまでじゃないだろう。どうやら美帆は、少し大袈裟というか天然というか、素直なようだ。

「絶対間違えた解釈してますよね、雷渡君・・・」

美帆が下をむいてなにかをつぶやいたような気がした。どうしたのだろうか。




チーン!


「上手に焼けました~~~!」

「いえ~い!」

クッキーが焼けた。クッキーが焼けた。クッキーが焼けた。


クッキーがいっぱい焼けた。

少し作りすぎたようだ。反省はしている。後悔はしていない。

・・・・・・本当は、反省もしていない。キリッ!


大量に出来たクッキーはご近所にお裾分けすることにして、残りは消費(もとい食す)することにした。



「「いただきますっ!」」


ちなみに、このあと「ナ○フ!!」と叫んでみたけど、残念ながらなにもでなかった。




さて。春といえどまだ四月。夏に比べれば、日の沈みは早い。

空が薄暗くなってきた頃、美帆がそろそろ帰らねば、といったので送っていくことにした。


「わざわざ送ってもらってありがとうございます」

美帆はやはりお礼を言ってきた。

「いいよいいよ。最近は暖かくなって、変なやつも多いらしいし」

春は変態共が元気になる季節である。なぜだろう、やはり寒い日の露出は嫌なのだろうか。ならそもそも露出をするな。


なぜか美帆の昔話が始まり、こんな話が出た。

「私、小さい頃からの秘密の場所があるんですよ」

「へー。秘密基地みたいなもん?」

「そんな大それたものじゃないですよ。独りになりたいときの、憩いの場って感じです。薄暗くて、静かで、時々響く電車の音と振動が妙に落ち着いて」

「なるほどね。そりゃ是非お招きいただきたいな」

すると彼女は、少し俯いた。

「それが、最近は入れなくなってしまったんです」

どうして?と聞くと

「なんだか最近、その場所に変な人たちが集まっているんです。まるで、なにかが来るのを待っているように、何日も」

「どっちの変な奴らだ?エッチィほうか?」

「いいえ、恐いほうです」

そりゃ、当分入れねぇな。なんて二人で笑った。


それから他愛もない話をしているうちに、美帆が足を止めた。

「ここまでで大丈夫です。今日はありがとうございました」

そういって美帆は頭を下げた。

本人がいいといっているのなら大人しくしておこう。家まで押しかける気なんてないし。


「そうか。なら、また明日な」


はい!といって、美帆は駆け出した。

美帆が角を曲がって見えなくなるまで見送って帰ろうとしたところで、視界の端に、黒いファミリーカーが高速で走り去るのが見えた。

あぶねえなぁ、美帆は引かれてねぇだろうな。なんて考えながら帰路につく。


お裾分けには、どんな包みを使おうか。なんて考えながら。





そして翌日。―――――――――美帆は、学校に来なかった。

数ヶ月ぶりの投稿でこのクオリティ。自分の文才の無さが恨めしいです・・・。


そういえば、つい先日高校の中間試験に結果が出まして、見事!


英語で赤点を入手いたしました!!!

期末頑張んないと、バットエンド確定だな、こりゃ・・・(汗)

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