始まりの出来事
短いです( ̄∇ ̄ )
やぁおはよう
俺は『高坂雷渡』
名前が厨二な件については俺はノータッチだ
今日から華々しい高校デビューを果たす俺に、過去のトラウマなんて関係ない
真新しい制服に袖を通し、鏡に向かって髪型をチェックするなんて、少し前の俺を知る人なら驚いて腰を抜かすだろう。
なぜなら俺自身が驚いているのだから。
7時20分に家を出て学校に向かうなんて、まるで一介の学生じゃないか
………学生だけど
◆
俺が通うのは、長い坂道を登った先にある
『私立ラファール学園』
都内でも五指に入る程のお金持ち学園である
にしても何故こんな、クソ長い坂の上にあるのか。生徒の数少ない気力を、授業前に削り取ろうという魂胆か?
ようやく登り終えた俺を迎えるのは、笑顔で挨拶をする教師達である。
なんと清々しい笑顔なのだろうか。
もう世界に絶望して、むしろここまできたら逆にどうでもいいや!
ってくらい清々しいではないか。
そんな笑顔を見ていると俺は…………
帰りたくなるじゃないか!
長い坂道を登ってきた先に待っているのが、満面の笑みとかナメてんのか!
もの凄く殺意が湧くではないかぁ!
という訳で、クルッとUターンしてガチで帰宅しようとする俺は、よほどの引きこもり根性が身に付いたと見えるな。
微塵も嬉しくなんかない
しかし突然Uターンしたため、俺の後ろを歩いていた少女にぶつかってしまった
咄嗟に腕を出して抱えたから良かったものの、このまま転んでいたら、時を○ける少女の如く転がり落ちていただろう。
Uターンをするときは、しっかり周囲を確認しよう
「あ………あのっ」
と少女が声を出す。
おっと。彼女を抱えたままだったな。
俺は腕を離し、彼女の方を向く。
その瞬間
俺は三次元も捨てたもんじゃない、と思った。
ギャルゲ・エロゲマスターの俺が驚くほどの美少女が俺と対面している。
これは、オバマと力道山(故)が対面するくらいレアだ。つーか奇跡だわそれ。
そんなことはさておき
何故か彼女は俺に感謝の言葉を告げてくる
「あの……助けてくれてありがとうございました」
むしろ君の笑顔にありがとう
「いや。急にUターンした俺が悪いんだ」
「忘れ物でもしたんですか?」
「ええ。学校に行く意欲を、家に忘れてしまってね」
ただ帰りたいだけじゃないですか、と苦笑する少女。
もしかして、俺は今もの凄くリア充に見えているのではなかろうか。
ざまぁみやがれ独り身どもがぁ!
思いながら目から汗がでそうだったのは秘密だ
「あの、そろそろ行かないと………」
「かしこまりましたお嬢様。では、私めも同行いたしましょう」
女の子をエスコートするのは男の役目だろう?
え?なんで引きこもりが女の子と普通に会話できるかって?
それは、俺が引きこもりとオタクを兼任していたからさ。親にラノベやエロゲがバレても気にしない風を装う鉄の仮面なめんなよ?
◆
さすがに立派な校門をくぐると、結構広めの正面広場に群がる生徒たちに近付く。
掲示板に、クラスが貼り出されているのだ。
群れるなクズ共が。まったく見えんではないか。
「これじゃあ、時間がかかりそうですね」
彼女が溜め息気味に呟いた。
「大丈夫さ。こんなのは想定内だ」
そういって俺は、鞄から“秘密道具”を取り出す
「ちゃららちゃっちゃちゃ〜〜。双眼鏡ぅ〜!」
彼女は、驚いたように俺をみる。
「そ、そんなもの持ってきたんですか………」
当然だ。あんな人混みに入っていくなんて、ナンセンスだ。
さて。彼女のクラスを探してあげねば………あっ。
「そういえば、名前を聞いてなかったな」
「あっ!自己紹介してませんでしたね」
彼女も気付いていなかったようだ。
「私は、桜井美帆っていいます」
彼女……もとい桜井美帆は笑顔で自己紹介をしてくれた。この笑顔のためなら死ねるかもしれない。
「俺は高坂雷渡。雷を渡るって書くんだ。よろしくな、美帆」
俺も、出来る限りの笑顔を作った。
「高坂……雷渡……。雷渡ってカッコいいですね!」
「えっ!?そ、そうかな?」
まさか、俺の名前に好感をもってくれる娘がいるとは…………
おっと、感動している場合じゃないな。
速やかに美帆のクラスを見付けねば。
「え〜と。桜井桜井さくらい………」
Aクラスに『さ』から始まるやつは左近とやらだけだBクラスは猿山
Cクラスに入ってようやく桜井美帆を発見した。
ちなみに、その途中で自分の名前もCクラスで発見している。
「見つけたよ。Cクラス。俺もな」
「同じなんですか!良かったです。せっかく仲良くなれたんですから」
なんていい娘なんだろうか。ついお小遣いをあげたくなってしまう!
なにはともあれ、俺たちは教室に向かう。
校舎も広いので、迷子にならないよう、事前に見取り図を脳内にインプットしてある。
「一年生の教室は三階だな」
「では、行きましょうか」
そうだな
でもその前に
「美帆」
「?どうしました?」
美帆は小首を傾げる
ちっ、いちいち仕草の可愛いやつめ!
思わず抱き着いてしまいそうな感情を押さえ込み、本題に入る。煩悩め、消え失せろ!
「その、なんていうんだ?丁寧語、かな?友達なんだから、そういう他人行儀なのは止めてほしいというかなんというか・・・」
「え!?あ、すいませ、じゃなくて……ごめん」
おぉう。なんかしょんぼりされてしまった。
こいつはマズイ。
「あぁ、いや。別に無理矢理止めろって訳じゃなくて、えぇと。あの……」
ヤバい。いい言葉が見つからない!長い引きこもり生活のせいで、コミュニケーション能力が著しく低下してしまっている!
「えぇと……だからその……」
「………ぷっ」
「へ?」
なんか吹き出された
「はははは!ごめんなさい、ちょっとからかってみただけなんです……ふふ」
なんかすごく笑われた
なるほど。つまり俺は美帆にからかわれていたのか。
「でも、この口調はもともとなんです。ごめんなさい、嫌でしたら変える努力はしますが・・・」
「いや、無理に変える必要はないさ。そのままでかまわないよ」
そりゃあ、他人行儀なのは嫌だけど、もともとならば文句なんてあるわけがない。口調だってその人の特徴なのだから、無理に俺に合わせる必要なんて皆無だ。
「そっ、そうですか?ありがとうございます。・・・・・・雷渡君って、優しいんですね」
満面の笑みでほめられた。
美帆が大げさなのはわかっているが、理解していても恥ずかしい。
「と、とにかく教室に急ごう!うん、そうするべきだ!」
俺は恥ずかしがっているのがばれたくなくて、早歩きで廊下を進む。彼女も
「そうですね」といいながら付いてくる。
元引きこもりとしては、上々のスタートではなかろうか
双眼鏡ぅ〜
時をかける少女スゴくいいですよね
不覚にも泣きそうでした
マジ感動( ┰_┰)