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樹氷の町

作者: 玲臘

この小説について、こうしたほうがいい等ありましたらメッセージをお願いします。

これはクリスマスの夜のこと。

少年は綺麗に飾られた町の中をただただ歩いていた。

はぐれた母親を捜し、泣きじゃくりながら夜の町を歩いていた。

すると少年はある場所に迷い込んだ。

そこは町とは遠く離れている場所だった。

「ここはどこだろう」

辺りを見回しながら歩く。

しかし暗くてよく見えない。

それに、地面も上り坂で舗装もされていない。

でも、てっぺんは少し明るい。

そこを目指し、歩き続ける。

そしてようやく登り終えたところである事に気付いた。

さっきまでは降ってなかったのにいつの間にか雪が降っていた。

それに気付いた少年はふと空を見上げ、さらに少し視線を落とした。

すると、思わず

「わぁ」

と言ってしまうほどのモノがあった。

…それからの少年の行方は誰も知らない。




今年は例年に比べ雪が降るのが遅く、12月半ばになっても降らなかった。

「早く雪降らないかなぁ、せっかくのクリスマスなのに…」自然と愚痴がこぼれる。

それほどまでに雪が好きなのだろうか、いや、そうではない。

彼は雪の降るクリスマスの夜が好きなのだ。

雪の降らないクリスマスなぞ意味が無い。

雪が降ってこそのクリスマスなのだ。


恋人達が仲良く通り過ぎて行く。

何組も、何組も。

しかし、彼にはそのようなカップル達がうらやましいとは思わなかった。

彼はただただ空を見上げるだけ。

ただ呆然と空を見上げる彼を誰一人として不審な目で見る人はいなかった。

いや、そもそも彼を見る人すらいなかった。


「真っ赤なおっはなのトナカイさ〜んが〜♪」

定番の音楽が流れる。

発信源はケーキ屋だ。

今はだいたい6時ぐらい。

仕事帰りのお父さん方がケーキを買って行く。

その様子を見ながらも、彼の心は空に向いている。

凍る様な寒さの中、何時間待っただろうか、しかし雪は全く降る気配は無い。

まるで彼を嘲笑うかの様に空はその静寂を保っている。

それでも彼は待ち続ける。



そろそろ9時になる。

しかし彼はまだいた。

なにが彼をそこまでさせるのか。

それは彼にしか分からない。

ただ雪の降るクリスマスが見たいだけ。

そこで彼はある事を思い出した。

この町を一望できる丘があることを。

「あの景色はあそこで見たんだ」

彼は忘れていた記憶を思い出し、丘へと足を進めた。

しかし、丘の道のりは長く、険しい。

それでも彼は進む。

昔見たあの、幻想的な景色をもう一度見るために。



いったいどれだけ歩いた事だろう。

まだつかない。

さらに歩く。

でもつかない。

だが彼は肉体的な疲労は感じなかった。

精神が肉体を凌駕しているのだろうか。

それほどまでに彼の意思は強い様だ。



ようやく見えてきた。

かつて自分がここに迷い込み、偶然見つけたあの場所が。

すると彼の足は自然と早くなり、気がつけば走っていた。



とうとう着いた。

この場所へ。

すると、あの時と同じように、雪が降って来た。

まるで、彼の動向を把握していたかの様に。

そして彼は空を見た。

待ちに待った雪景色。

無限の空より舞い落ちる雪。

さらに視線を落としてみた。

すると、そこにはあの時と変わらない、とてもとても幻想的な景色があった。

一言でたとえるなら、『樹氷の町』といったところだろうか。

舞い落ちる雪に月の光が反射する。

さらに、高原ならではのダイヤモンドダスト。

その二つが雪で白くなった町と、クリスマスだけのツリーの灯を背景に、美しく輝く。

ここだけ現実から切り離されたのではないかと思うくらいのすばらしさ。

彼はこれを待っていたのだ。

彼の目から自然と涙が落ちる。

彼は全てを思い出したのだ。

かつて自分がこの場所で死んだ事。

『樹氷の町』の美しさに魅せられ、その場から動けず凍死した事を…

そして、あれから百年が過ぎていたことを知った。


「そうか…だから町の人達は…… お母さん、僕、今からそっちに行くから………百年も待たせちゃってごめんなさい」

そう言って彼……いや、かつての少年は、天へと召されて行った。

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― 新着の感想 ―
[一言] せっかく綺麗な題材なのに、描写が淡白。 主人公の気持ちが全然伝わってこない。
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