『タツオくんと、まけない心の鉄のかくん』
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『タツオくんと、まけない心の鉄のかくん』
「僕は学び舎のちいさな階段。毎日、みんなの確かな足音を聴きながら、心の成長を見守ってきたんだ。今日はお体がちょっぴりつらい日でも、お家の厳しい約束を真っ直ぐにやり遂げる、とってもがんばりやな男の子の物語だよ」
ある肌寒い朝のことです。男の子のタツオくんは、目が覚めるとお頭が少し重たく、お体の調子があまり良くありませんでした。
「うう……なんだか今日はお体がだるくて、少し横になっていたいなぁ……」
タツオくんがお布団の中でトホホとため息をついていると、お部屋の窓の外から、朝陽を浴びた一番高い木が「がんばれ、タツオくん」と優しく語りかけてくるようでした。タツオくんはぐっとお布団をはねのけ、自分の足元をしっかりと見つめて立ち上がりました。
「いけない、いけない! どんなに調子が悪くても、お家の中の家事やお掃除はできて当然なんだ。うちの家訓は、そんなに甘くないんだからね!」
タツオくんは、お父さまとお母さまから受け継いだ「鉄の家訓」を胸にくぎを刺すように刻み込んでいました。自分の甘え(暗闇の霧)に負けず、まずは手箒を持ってトントンと動き始めました。
お部屋の隅々までお道具を滑らせ、床も棚もピカピカに「家の中の掃除」をやり遂げました。
お掃除が終わると、今度は台所に立ちました。
トントントン、とお鍋の音を小気味よく響かせながら、お米の優しさが詰まった温かい「朝食(朝ごはん)」を手際よく作り上げ、綺麗に完食しました。
「よし、次はこれだ!」
タツオくんはお庭へ出ました。今は釣鐘のような可愛いお花を咲かせず、みずみずしい緑の葉っぱがとっても綺麗なホタルブクロの群生の周りを、丁寧に「小さな庭掃除」をし始めました。余計な雑草(変な影)には一切関わらないようにそっと引き抜き、土の環境づくりを清潔に整えました。
続けて、お庭の前に止まっている、お日様の色をした大切な「車の掃除」に取りかかりました。バケツにお水を汲んで、大きなタイヤやボディーの汚れを力技でキュッキュッと綺麗に磨き上げていきます。鉄の塊をピカピカに手入れするのはちょっぴり大変で、涙が出るほどの苦労と汗がにじみましたが、タツオくんの顔は職人のような誇りで満ちていました。
お外のお仕事を全問パーフェクトに終えてお家に入ると、ちょうどお昼の時間がやってきました。タツオくんは休むことなく、お腹がすいたときのために美味しい「昼食(お昼ごはん)」をトンと作り、しっかりとエネルギーを蓄えました。
午後になり、少しお疲れが出そうになった時、タツオくんは机の前に座って、温かいジャスミン茶を淹れました。お茶のお供に、ちいさなお煎餅の「間食」をお口に含みます。
「すう……はあ……。すう……はあ……」
温かいお茶の香りを胸いっぱいに吸い込んで深呼吸をすると、お薬を飲んだときのように、お体の重たさはすうっと静かに引いていきました。
楽しかった時間のあとも、家訓は終わりません。夕暮れ時、空が優しい茜色の黄昏時を迎える頃、タツオくんは美味しい「夕食(晩ごはん)」の夜食づくりに励み、一日の全ての役目を見事に、完璧にやり遂げたのです。
夜になり、ぽかぽかのお風呂に入って一日の汗を優しく洗い流したタツオくんは、お布団の中でサリナさんの天天真爛漫な笑顔を思い出していました。
「今日も調子が悪かったけれど、家訓を守って、お家も、お庭も、車もピカピカにできて本当に良かった。明日もまた、ルールを守って真面目に一歩ずつ進んでいくぞ」
夜空には驚くほど大きくて綺麗な満月がぽっかりと浮かび上がり、お家の約束をしっかりと守り抜いたタツオくんの寝顔を、いつまでも優しく、温かく包み込むように照らし続けるのでした。
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