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第9話 高地の雨

「コッチの思った通りだな。基本的に飛んだり跳ねたりする奴ばかりだな。」

 集中した時の口調でディッドが呟く。

苦戦するほどではないが、やはり空高く逃げられたり急降下をしてくる相手は中々気が抜けず、面倒くさい。


(左右の後ろ側から同時に!?マズい!)

ディッドの死角から狙いすまして鳥型の魔物が襲いかかる。知能も随分と高いのが伺える。


「ふん。」


 まるで後ろに目があるかのように2体の魔物を払いのける。一応仲間なので、危険な状況になると内心ドキドキしている。

 何か気恥ずかしいので表面上は冷静なフリしているけど、ヤバそうな状況は少ないわけではない。

 ただ、ディッドは俺の心配を他所に難なく対処する。底が知れなく感心してしまう……


 尊敬や憧れは全く無いけどな。


「ラッキー!アイツら殺っといて!」

 相変わらず物騒だが、俺にはかからない共闘のお誘いがラックバードにかかる。


「任せてください!」

 何やら俺の知らないところで連携を画策していたようだ。間髪入れず行動に移っていた。


 俺は目を疑った。ラックバードが鞄から手に収まる程度の石を出し、全身を使って投げ付ける。そのスピードたるや下手な弓なぞ相手にならないほどの剛速球である。そして、それが魔物と重なった瞬間。


 ボムッ!


 破裂した?……石なんて投げられったって精々頭に当たって脳震盪、体に当たっても撃ち落とされる位しかダメージ与えられないよな?


「OK〜!ラッキー!ドンドンよろしく!」

 ディッドは何の疑問もなくこの状況を受け入れている。いや、当たり前の事だと思ってるようだ。


「了解です! あ、アルさん!お手隙でしたらそこら辺に落ちてる石を集めといて下さい。」

「あ、はい。」


 正確に、そして確実に一体そして一体と撃ち落として行く。その度に降りしきる鮮血の雨。

 手の届く範囲はディッドが蹂躙し、逃げ惑う鳥を背後から確実にラックバードが仕留める。

 素晴らしい連携を見せられ目が点になる。


(俺、場違いだよな。)


 ガルーダと呼ばれるその怪鳥の群れは、一体も残さず地面の染みに変わっていった。


「あっはっはっ!打ち合わせ通り!決まったねぇ〜!スカッとしたよ〜!!」

「ディッドさんの考えた通りですね。

近場を安心してお任せできたので、集中して狙い撃ちができました。」

 良かったですねお二方。しかし、俺は恐ろしい怪物に囲まれてしまい、そしてその中に同行している事実に恐れを抱く。


(この先俺はついていけるのか?)

 どう考えても無理なので、できれば解放して欲しい。が、やっぱりそんな事は認めて貰えないのだった。



「いや~、気持ちいいですね!こんなに血湧き肉踊ること久方ぶりです!山登りだけでは感じられない爽快さです!」

 ラックバードが興奮している。


「うむ。ラッキーはコッチの思った通りの力を持ってるよ。

まだまだ色々連携を考えてるからよろしくね。」

 ディッドはいい玩具が手に入った様でご満悦だ。

 


 まあ、俺には石拾いと言う新しい仕事が任命されたのであった。



 自尊心を保つのが難しくなって来た気がする……

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