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第7話 おかえりなさい

依頼完了の報酬を貰いディッドの刀を買い戻した。


…までの間に一悶着だ。

 元手が増えたと直ぐ様賭場へ向かおうとするディッド。

負けたままでいるのは良くないとリベンジを煽るラックバード。


 俺は必死に落ち着かせようとしたのだが、力尽くで止めることなんてまず無理だ。

 お前らは普通の人間じゃないんだよ。

やめてくれ、理性的に考えて行動してくれ!


 …チョット俺も限界が来たのか、もうどうにでもなれという心境になっていた。


「いい加減しろ!!俺の話を聞いてるのか?

このまま言うことを聞かないのならもう勝手にしろ!

俺は本気でこれ以上面倒は見てやんないからな!!!」


 後で考えると恐ろしすぎる。しかも俺は半強制的に冒険を強いられている。逃げようと思っても逃がしてもらえてない状況である。

 調子に乗るなとボコボコにされる……と血の気が引いてゆく。



「…そうだよね、コッチの刀買い戻すために面倒くさい依頼受けたんだもんね。

 ささ、早く質屋に行って今日は宿でゆっくり休もうね。」


「すいません、私、この頃楽しくって調子に乗ってしまいました。当初の目的を蔑ろにするなんて、全く本末転倒でした。」


 ?拍子抜けである。

なんか今回はやけに素直だった。

 確かに心から腹が立って怒鳴ったけど、所詮俺が何を言ったって響かないだろうに……

 たまたま目的を思い出してくれた幸運に感謝しながら質屋の扉を跨いだのだった。




「おぉ~!久しぶり〜!我が刀〜!」

 さっきまで買い戻す気無かっただろ?お前。

てか、竹槍には名前つけたのにそっちはただの刀扱いなのか。


「それじゃあその竹槍は後で俺が処分しておいてやるよ。」

「なんで?」




 …あれ?予想外の言葉が帰ってきたぞ。

いやね、この町中で血塗れで変色した竹槍持ってるのって物騒なんだけど…

 たった小一時間位で削り出した子どもの工作みたいなもんだよな……竹トンボと変わんないだろ?


「これはもうコッチの体の一部みたいな物なんだよ。    捨てたら怒るよ。」

 すいません、怒らないで下さい。マジだコイツ……


 その前にこの刀の立場はどうなるの?

今まですっと一緒にやってきた愛刀じゃないのか?


 …でもどうしようもないか、お前の御主人様理不尽だもんな。

俺、力になれなくてゴメン。でもお前なら分かってくれるよな……


 物に感情移入する異常な精神状態にこの先近い内に限界が来るだろうな、と確信したのだった。




その日、一段落し3人で食事中


「ラッキー、コッチと一緒についてきて欲しい所があるんだけど。」


 ええと、俺には何も相談無しに勝手に話が進もうとしている。


「そうですねぇ。街に帰ってくるまで同行させて貰って私にも思う所ありまして…

もしよろしければ暫く一緒にいさせて貰えたらとても嬉しいです!」


 話、決まったな。

俺は黙って食事に集中した。


「一人戦力が増えればコッチの行きたかったトコ向かっても大丈夫そうだしね。」


「戦力ですか?でも私、武器使ったり格闘したりは全然ダメですけど…」


「大丈夫、大丈夫。荷物は一杯持てそうだし、アルの守り位はできるでしょ?」

 お前、俺を守るの面倒くさいんじゃ無いだろうな。


「それくらいなら……担いで逃げるくらいなら問題ないと。走るのも得意ですし。」

 暗に俺を物扱いしてるの気付いてるか?

お荷物扱いするなら解放して貰いたいんだけど。


「おっし〜、契約完了〜!改めてよろしくね!ラッキ〜!!」


「私の方こそ何卒宜しくお願いします!」


「あぁ、よろしく。」


 素っ気なく答えたものの、よくよく考えると一人でディッドを相手するより気が楽になるかもと思えてきた。

人柱として活用できるかも、と。



 ……いや、まてまて。

なんかこの二人、同じ様な雰囲気持ってないか?意気投合も早かったし……



 結局、お目付け相手が増えただけになったであろう事を実感するのにそう時間は必要ではなかった。

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