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第29話 時間経過

 いてて、体がだるい。あれ?どんだけ寝ちゃったんだろ…確かここ研究所だったよな。うーん、かなり疲れてたんだろうな、俺。

 まあ、この施設内じゃ賭け事なんて無いだろうから一文無しになることはないだろう。寧ろ至れり尽くせりしてくれるんで、かなり節約できるだろうな。そう言えば凄く腹が減ってる、何か頼めそうかな?



 …「アルさん!目が覚めましたか?良かった、心配しました!具合悪いところとか無いですか?何か必要ですか?」

 ああ、ラッキーか。目は開かないし喉もカラカラで喋れないけど問題ないよ。と、言いたかったが、声が出ないのでジェスチャーで飲み物が欲しいと伝える。


「ハイ!すぐ持ってきます!」

 ドカッ、机にぶつかった?

 バキッ、ドアを弾き飛ばした?

 ドスドスガシャーン、何やってんだデカブツ。


 「どうぞ!」

 言葉が出ないのでそのまま飲み物を受け取ったのだが………誰?

 その時初めてしっかり見たのだが、おかしいな?俺の記憶の中の大きさじゃないぞ?袖無しシャツに短パンなのだが、はみ出してる部分がエグい太さをしてる。しかも日焼けして真っ黒だ。えっ、えっ、怖い。


「アルさん、一週間寝っぱなしだったんです。ここはドクターもいるので診てもらったんですけど、注射したり点滴したりで大変だったんです。」

  大変なのはお前の体だよデカブツ。何をどうすればそうなるんだよ。

 まだ声が出ないので大人しく話を聞く。


「命には別状は無いとのことですが、はっきりとした原因が分からない、と言われ途方に暮れてたんです。」

 トホ―に暮れてトレーニングに明け暮れたのか。ホントに心配してんのか?


「心配で心配で胸がはち切れそうになって……不安を払拭するために体を動かすことしかできなくて…。」

 そうだな、結果、胸筋はち切れそうになってるよ。


「ああ、ここ屋外プールもあるのでリフレッシュするのに最高ですよ!」

 そりゃ真っ黒になるな……やっぱ本気で心配してないな、この黒デカブツ。


 ようやく声が出そうなので、こちらからも質問をする。

「あ”、あ”。う"ん。悪いな、心配がけて。あどの、2人は、どうしてる?」

 まだうまく喋れない。が、意思疎通はできそうだ。


「あの二人なら実験場であそび……あ、研究してます。」

 お前ら全員ヴァカンス満喫してるだろ!



「あ、お腹空いてますよね、何か胃に優しいもの作ってもらえるか聞いてきますね。」

 まあ、なんだかんだ言ってもラックバードはいい兄ちゃんだよな。真っ黒だけど。

 夕暮れになり、カラスが鳴き始めた頃になって二人は帰ってきた。ガキんちょか?全く。



「ふざけんなよ、まぐ夫!あんなデカい爆発じゃ逃げきんないだろ!」

 ディッド、俺に一言とかないの?


「はあ?何言ってんだよクソディッド!あん位も避けられないのかよ?体なまってんじゃねえのか?貧弱者!」

 え、マグ?何?どうしたの?そんな事ディッドに言ったら………


 バキっ。  そうなるよな……


「だからぁ〜ディッドのぉ〜潜在能力はぁ〜こんなんじゃ〜無いとぉ〜思うんだよぉ〜  グハっ」

 あれれ?どうした?急に興奮しだした?いや何か、今までとは少し違うような……


「ふむ、確かにね。ディッドの言う通り規模が大き過ぎだね。自分らの方まで被害が来てしまうかも知れないな。助言ありがとう。」

「よし」


 よし、じゃねえよ。どうなってんだよ?たかが一週間だろ?どうすればこうなるんだよ!


「何か疑問があるのならワシが答えてやるのじゃがな。」

 誰だよ!ホントに知らないの出てきたよ!追いつかない、追いつかない。おい!ラックバード!明後日を見て微笑んでんじゃない、説明しろ!黒デカブツ!


「わしはこの施設の専属医をしてるフォネトと言うもんじゃ。今回。おまえさんの主治医でもあるんじゃよ。」

「ああ、そうだったんですか。すいません、記憶が全然無くて…ご迷惑お掛けしました。」

 流石にこれだけ大きな施設になると色んな設備が充実してると感心する。


「意識が戻ってくれて良かったわい。原因究明に至らず申し訳ない。多分わしらが想像もできないくらいの重圧を受けてきたのが原因だと思うんじゃがな。冒険者というのは大変なんじゃのう。」

 お心遣いありがたいのですが、原因はおそらく、想像もできないくらいのそこのバカです。原因究明させてあげられずゴメンナサイ。


「ラッキー、あとマグのことなんだけど…」

 思った以上にヤバそうなんだよな。何をやってたんだよ黒団子、よく見とけ。


「ええ〜と、その、」

 分かった。いいよもう。ハナから期待してないけどな。


 諦めかけたのだがフォネトが主観を述べてきた。

「マグはのう、あの娘に手伝ってもらい殺戮兵器の開発をしてたのじゃがのう。」

 物騒なことをサラッと言うな。頭麻痺してんじゃないのかこの爺さん。


「開発に没頭するといつものマグになってしまうんじゃよ。あの気持ちの悪い変態にのう。」

 非道いことサラッと言ったよ、このジジイ。


「その度にあの娘に、殴られ興奮し、殴られ興奮しを繰り返しておったんじゃ。」

 違うベクトルの変態に聞こえんだろ?わざとだな。恨みでもあんだろうよ。


「結果、あの娘のパワーでスカッとぶっ飛ばしてしまうと人格のスイッチが入れ替わってしまうようなんじゃ。不思議なもんじゃのう。」


 なるほど、2つほど理解した。このままだとケガがなくてもマグは内部から破壊されてしまう。上位研究員を壊したら流石に処罰されるだろう。もう一つは、マグが老若男女問わずに本気で嫌われてるっていうことだな。


『ディッド、ちょっとこっちこい。』

 皆に聞こえないようにヒソヒソ話す。


「なに~。あ、アル起きたんだ!おはよ~。」

 今頃かよ!まあいい、大事なことを伝える。今回俺は結構マジだ。


「あのな、マグの顔面何回も殴っただろ?今、傍から見ても結構ヤバい状態なんだよ。もし本当に殴ったことが原因でああなったのなら、多分俺達処罰されると思うんだよ。だからさ、気持ち悪い奴だろうけど顔面殴るのやめてくれよな。」

 ディッドは多分条件反射で殴ってんだよな。ダメ元だけどもう少し念を押してみる。

「マグがいないとこういう施設も使えないし、万が一の時お金貸して貰えなくなるぞ。」


「あ、そうか。それは困るね。分かったよ、もう顔面殴らないようにするね。」

 良かった。分かってくれたか。素直で安心したよ、流石リーダーだな。腹黒いけど。









「次からボディにする。」

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