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第27話 追悼

「うわ〜ん、こんな事って……こんな事って無いよ。さっきまでずっと一緒に旅してたじゃないかよ〜、嫌だよ、逝かないでよ〜…え〜ん。」

 号泣してるディッドをラックバードが慰める。

「泣かないで下さい。私たちの命を守るために全てを背負って、代わりに逝ってくれたんです。それに報いるためには、私達は前を向いて進んで行かなければいけないのです。ぐす…。」


 ああ、死んじゃったって事か。良いじゃないか、俺達の為になって星になったのなら本望だろ。さっさとそこいら辺に埋めちまえよ。


 「アル!今ひどいこと考えたでしょ。例えアルでも許さないからね。」

 今まで大概許してもらった事無いんだけど。まあ、いいか。


「アル君は自分の命の恩人なんですぅ!キミこそ、そんな非道いこと言わないでくれるかい。」

 この変態こんな感じだったっけ?毒が頭に回ったのか?それとも薬を間違えたのかな…


「うるさいな!マグ夫は口出してくるなよ!コッチの哀しみの深さも知らないくせに!」

 そうは言ってもただの竹だろ。よく号泣できるよな。…地面には先端が爆発してささくれだってる柱トリオが転がっている。確かに命は助けられたな。せめて安らかに眠ってくれ。


「はいはい、分かりました。で、この先しばらく進むと自分の研究所があります。ついでに寄って色々持っていきたいんだけど、その庭に結構立派な竹林があります。どうする?欲しい?」

「ホント?いいの?行こう!すぐいこ!」

 あれ、軍門に下ったの?。餌の与え方が上手いな。頭は良いんだろうな、一応。

 ディッドの話に乗ってたラッキーの立場どうなるんだよ?動揺してプルプルしだしたぞ。変態も人間変わっちゃたし。まあ、上手くやってくれるならどうでもいいけどな。


 どうやら、毒に侵されてる時、俺の言葉で意識を取り戻したらしく、その後解毒剤を飲まして貰ったことで本当に命拾いしたとの事らしい。あと少し解毒が遅れたら、確実に間に合って無かったのだと。マグが体調が戻ってから異様に懐かれてしまっている。基本、変質者だから余り嬉しくないんだけどな。


「よっし。準備終わったら行くよ!アル!柱トリオの残ったトコ箸と器に加工しといてね。」

 しっかり使い倒すんだな。俺もそうやって使い倒されるんだろうな。


「ラッキー、そろそろ気を取り直してくれよ。アイツはあんな感じで普通だからな。今のうち慣れとかないと疲れるだけだぞ。」

 俺は先輩として指導する。このデカブツも結構お調子者なので、ここで調教しておかないと後が怖そうだ。


「久し振りに自分の研究室戻れるのでね、必要なもの調達しときたいんだ。それで、色々な道具でぇ〜実験を〜したいとぉ〜  ごふっ。」

 おい、ちょっと待て!マグが元に戻って無かったらマズいんじゃないのか?俺は余波に飛ばされながら恐怖に囚われた。


「イタタタ…。分かったよ。あんまり興奮しないように気を付けるから、本気で殴るんじゃないよぉ。」

 よかった、爆烈はしてない。でも痛がってはいる?毒の効き次第で耐久力が変わるのか?


 それ以上にディッド、ヤバイなコイツ。何も考えてないだろ殺人未遂だぞ本気で…

 「あの、えっと、それでは皆さん…慌てずに…行きましょうか……」

 そうだラッキー。いたたまれないだろ?今、俺の気持ちを理解できるのはラッキーだけなんだよ。なのでそこは死守したいと思ってる、頼むぞ同志。


 「そうだな、遊んでばかりいるなら置いてくぞ。俺は早くちゃんと休みたいんだよ。」

 歩くの一番遅いのは俺だけどな。気持ちでは負けないつもりだ。


 「研究所は宿泊室も充実してますよ。快適にしっかり休めると思います。期待してくださいねぇ〜、アル君♪」

 そう言えばすごい金持ってんだよな、変態だけど。期待ちゃうよ、俺。








「マジか〜」「へー」「うわわわわ…」

「どうぞ!ご遠慮無く。歩きながら色々説明するからね。」

 塀に囲まれた門の前にいるのだが、塀の端がどこまで続いているのか確認できない。


「えぇと、この街の中に研究所がある…の?」

 俺はまさかなと思ったのだが…


「いえいえ、この塀の向こう側全てが研究所なんだよね。」

 まさかだった。マグが続けて説明する。

「前にも言ったんだけど、王国の戦争、特に兵器関係の開発が特務の機関に所属してた訳で、大規模な実験をする場所が必要にもなるんだよね。

 ……なので、王都近くでは危ないし、研究員も少ないわけでは無いから、余り近くに街とかないこの辺りで大きめの施設を作ったという訳なんだよね。」

 

「でも、そんな研究所なんて私達が立ち入って良いのですか?秘密の実験とか色々やってるんじゃないんですか?」

 ラックバードは今日もプルプルしてる。良かったな、過去のトラウマなんて全然大した事ないだろ?世の中まだまだ想像もできないことが待ってるんだぞ。ネガティブな方向で。


「大丈夫だよ。自分たち4人は今、特殊研究機関のちょと上に位置するとして特殊防衛機関に配属されたからね。なので、ここの施設も自由に使える手筈になってるよ。一応、自分の許可と監視は必要なんだけどね。なので、質問や要望があれば自分に聞いてくれればいいからね。」

 国も名目上良い立場を俺達に与えてくれたんだな。





…でも、裏を返せば何かヤバイことやらされるんじゃないのか?



 国家レベルの何かって……かつてなく怖くなってきた……

 

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