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第22話 抑圧

 あのさぁ、今までバカにとっての奇跡の石の価値を色々感じてきた訳なんだけど、例えば勝手に売ったら殺されるとか、盗んだ奴は探してコロスとか、取り上げたなら大暴れするとかな。でもさ、やっぱ誇張だと思うじゃん?普通そこまでやんないよって。常識だよな、人として。ましてさ、仲間と石ころを天秤にかけたら当然仲間を取るはずだよな。だってさ、所詮石だよ?また探せばいいと思うだろ?何があっても仲間を守る!って言ってくれれば、お前は頼れるリーダーで間違い無い。まさしくヒーローで主人公だよ。そんな相棒に嫉妬しつつも憧れ尊敬し、目標の背中として共に高みを目指しゆく、って夢に見るじゃない………




 ありえねえ!!!!!なんて奴だよ!!!!


マジかよ!?何やったか分かってんのか?お前本気で殴っただろ!自分の力理解してんのか?完全に人殺しだぞ!おい!お前、曲がりなりにもリーダーだよな?仲間共々危険に晒すんじゃないよ!!圧倒的に悪魔かよ!足元掬ってんじゃねえよ!どんだけ深い地獄に引き摺り込むんだよ!?嫌悪と軽蔑しかねえよ!目標の背中じゃなくて目標のラスボスだよ!怖くて夢に出んだろが!!



「ううぅ…いきなり殴るなよ、怖いじゃないか。怪我でもしたらどうするんだ?」

 

 ………?ケガしてないのかよ!!!


はぁ?マグって言ったっけ?なんだコイツ!?なんで生きてんの?

 確かにバカが本気で殴ったよな?見間違えじゃないよ、いつも見てた通りだもんよ。なのにピンピンしてやがる、理解の範疇を超えている……


 でも、怪我してなくても殴ったよな?傷害だよな‥…滅茶苦茶、罪上乗せしてないか?

 どっちにしろもう終わりだ、犯罪者待った無しだ。完全にお仕舞いだ……………


「キサマはコッチの逆鱗に触れた。一番やってはいけないことをしてしまったな。」

 一番は石なのか。そこは譲れないんだな流石だな。


「面白いですねぇ、この状況で〜、このぉ〜腕力はぁ〜。くくく〜ぅ、素晴らしいぃ〜。」

 なんかわからんが興奮し出したな、コイツ。気持ち悪すぎる。


 騒ぎを聞きつけた衛兵達がなだれ込んできて辺りが騒然とし始めた。そのまま数名の衛兵達に抑えつけられ、動きを封じられてしまった。


………特別上位研究員が。


 え?そっち?なんで?

ディッドが衛兵をなぎ倒し、凶悪犯罪者一味に成り下がることを覚悟したのだが、目の前には変質者が床に押し付けられている。


「うぅ〜、や〜め〜な〜さ〜ぃ〜。」 

 悲痛な声を出しているが、気付くと一人の衛兵が軽く押さえてるだけだ。なんだ?身体は強いのに力は弱いのか?


 いや、変質者が抑圧されるのは何ら問題ない、普通ならな。でも、それ以上に今は俺達じゃないの?この状況は捻じ曲がってるとしか言い様がない。


「あの……何がどうなってるんでしょうか?」

 俺は恐る恐る衛兵に聞いてみた。


「この方の身分は間違いなく王国の機関の上位研究員なのですが、その、え〜、余りにも言動や行動が突飛で奇妙で気色悪くて気味が悪い上、誰彼構わず場所も問わず、問題になるわ問題起こすわで……不可抗力であればこの方に何をしても〈特別〉罪に問われません。」

 普段からの鬱憤が溜まってるのか、所々地が出てる説明を捲し立てるように伝えられた。〈悪い意味で特別〉な上位研究員と言う事らしい。


「無駄に頑丈ですので傷害の心配も無用です。また、我々国家の安全を守る立場の者は全力で制圧するよう王令を下されております。

 なので、今回の件は特に不問となりますのでご安心ください。」


 結果的には罪は上乗せされなかったのだが……俺はディッドを許さないし絶対忘れないからな!忘れないだけだけど。


 衛兵さんも大変だな。なんか親近感を感じるんだけど気のせいかな?理解できない奴の相手って難儀なんだよな、分かるよ。

 一先ず安心という事で本当によかった……。と言っても、振り出しに戻っただけだだった。何一つ解決していないのでまだ暫く拘束は続くらしい。

 ただ一つ変化があったことは、



隣の部屋にストーカーが拘束されてる事だった。

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