第21話 取引
パニック小動物がジャイアント石像に変わったな。微動だにせずストーカーを見つめてる。
まあ、どうせ逃げ場も無い訳だし、相手の肩書き的には、俺達の方がどうしようもない無法者な訳なので大人しく話を聞くしかないだろう。
「これから俺達はどうなるのでしょうか?」
デカブツはどうでもいい。そのまま固まってろ。なんせ同罪だ。
「そうですねぇ〜、王国基準での返済となるとぉ〜、今なら、南の開拓のお手伝いですかねぇ〜。とっても寒い所ですぅ〜。」
喋りがウザい。ハキハキ喋れ、言えないけど。
「でも〜、逃げ出しちゃいそうな人はぁ〜。民間のぉ〜食糧調達隊となってぇ〜、海に行かされるとぉ〜思いますぅ〜。」
多分ウチの二人は泳いで逃げ切れるだろうな。俺は海の藻屑だな。
「いい加減、そのバカみたいな喋り方をやめろ、不愉快だ。」
おおお〜い!バカはオマエだ!!場所と立場を考えろ、ばか!同感だけどこれ以上馬鹿みたいに罪を重ねようとするんじゃないよ!このバカ馬鹿ばか!!
「すいません!気が動転してるらしく、おかしな状態になってるんです!ちゃんと言い聞かせますからどうか許して下さい!」
正直、俺…何も悪い事して無いよな?おかしいな、どうしてこんな仕打ちを受けなきゃいけないんだ?
お願いします、誰でもいいから俺を助けてください………
「ああ、申し訳ない。やっとラックバード君に会えたから興奮してしまってね。気持ちが昂ると変な話し方になるらしくて良く叱られるんだよ。彼は本当に足が速くて、こう落ち着いて話せる事がまるで無かったんでね。すまなかった。」
マグとか言ったな、ウチのバカが言った通りお前もバカなのか……
「ふんっ、分かればいい。で、どうなるのか早く話を進めろ。」
形勢逆転か。って、そんな訳無いだろ!どうしようもねぇよ、この大馬鹿者め!
「以前、彼の身体能力に興味を持って純粋に調べてみたいと思ってね。要するに、正直彼の潜在能力に惚れ込んだって訳だよ。」
…普通に会話が続いてる?…もう疲れたよ、まともに考えるのやめよう……
「本当に〜、彼はぁ〜素晴らしぃ〜!まさにぃ〜奇跡のぉ〜体のぉ〜持ち主でぇ〜……」
あっ、また狂った。興奮し始めたな。
「不愉快だと言ったのが分からないのか?話を聴いてる者の気にもなってみろ。たわけ者が。」
相変わらずお前は自分の立場が分かってないな。
「ああ、すまんすまん。それでもし彼が自分に協力してくれるなら、諸々手を回して君達二人は自由にしてあげることもできるのだけどね?どうだろうか?」
…お前もそれでいいのかよ。そんな風に考えてたらデカブツが喋りだした。ようやく石化が解けたらしい。
「マグさん………分かりました、こうなったのも私がディッドさんと遊ぶのが楽しくて調子に乗ってしまったからです。アルさんにも心配させて、迷惑かけて………短い間でしたがとても楽しかったです!ここまでの事、決して忘れません!ありがとうございました!」
ちょっとまて、ふざけんなよ?なんでここに来て全部被ろうとしてんだよ?なんか俺が弱いだけじゃなく、心まで小さい奴みたいじゃないか?確かにそうだけど、俺にも男の意地ってものがあるんだよ、仲間は絶対見捨てないっていう信念が……
「ふざけることを言ってるんじゃない。ラックはコッチと旅を続けて貰わなければ困るのだよ。そんな条件飲めるわけないだろう。」
そうだ、その通りだ。畜生、悔しいよ、俺も声に出してその言葉を言う勇気と力が欲しい……
すべての元凶はお前なんだけどな、凄えよお前、よく言い切れたな。
「そうですか…残念ですね…、この状況でその強気。何か切り札でも持っていそうですねぇ〜。」
ヤバイ!コイツもしかして…
「感じますよぉ〜、そのぉ〜懐からぁ〜雄大なぁ〜魔力をねぇ〜。」
バレてる!駄目だ、間に合わない!ディッドの懐に向かって手を伸ばして……
「それを〜売ればぁ〜確かにぃ〜 げふっ!」
ディッドに殴り飛ばされた。




