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第19話 一発逆転

「うおおおおおおおおおおおおっっ!……」


 俺はその場で崩れ落ちた。ディッドの事はよく知っている。怯えない、挫けない、諦めない。

 例え、力及ばず最後の時が訪れたとしても、誇り高く天を仰ぎ、気高く逝くことだろう…

 


 今、俺の相棒が誇り高く天を仰いでいる。



 悔やみや哀しみ、不甲斐なさ、全てを含んだ叫び声がホールに響きわたる。俺は精一杯の事を本当にやったのか?俺自身に甘かったんじゃないのか?言い訳ばかりしてるんじゃないよ。そうやっていつも逃げてるんじゃないのか。

 ふざけるんじゃない、ほんの少し気が緩んだだけでこんな事になるなんて、許してくれ………全部…俺のせいだ…………





  俺のせいか?





 おいおいおいおい、結局いくら突っ込んだんだよ?なんでそんなメインステージに登ってるわけ?隣のデカブツ!泣きそうな顔してんじゃないよ、お前も同罪だからな。必死に止めようとしたアピールはやめろ。大体本気で止めようと思ったんなら部屋で俺を起こしたはずだ。遊びたいのが見え透いてんだよ!



「ごごごごごごごごごめんなさぁぃ………

どっどどどっどどどどどうしよう……」

 ディッドが俺の前で、怯え、挫け、諦めている。ギャンブルって怖いな。コイツがこんな風になっちまうなんてな。大衆の面前なのにキリッとディッドが保てていない。


 「で、どういう状況なんだ?掻い摘んで教えてみろや。」

 こういう時は強気に出ても大丈夫だった。多少スカッとするが、その先に待ち受ける現実の方が遥かにショッキングで、俺の膝もガクガクと音を立て始めていた。



「あのね…最初は良かったんだよ。ほんとだよ。で、勝ったり負けたりしてて…賭け金がどんどん上がっていって………」

 ここまでは通常だな。ほぼ確実にこのくだりから言い訳が始まる。


「でもね、アルが扉開けて入ってきた時が、丁度最後の大勝負を仕掛けるところだったんだよ。」

 そうか、なんとか間に合ってたんだな。死ぬ気で走って来た甲斐があったな。

あんなディッド見たこと無いから早とちりしたじゃないか。


「すごい安心した。まだコッチの運は使い果たしてない!って思ったよ。」

 俺にできることなんてさほどないと思うのだが、信頼されてる感じに悪い気はしない。




「それで負けが決まった時にアルが大きい叫び声出したからビックリしちゃってさ………」

 …………負け?




「えっ、負けたの?」

「うん。だから遅かったねって言ったじゃん。」

 ああ、確かに言ってたな。



「で、アル。いくら持ってきたの?」




 頭が真っ白になった。金なんて持って来てる訳ないだろ!俺達の部屋から根こそぎ持って行ったのはお前らだろ?胸に手当てて思い出しやがれ!

 俺らまとめて捕まってどっかに売り飛ばされるのかな?でもさあ、俺なんて箸にも棒にもかからないよ。このままじゃ一生奴隷生活になっちゃうんじゃないの?そんなのは勘弁して欲しい。


 とは言え、なんとか金目のもの探さないとな……そういえば、ディッドの持ってる奇跡の石………って、ダメだ絶対!コイツはそれだけは絶対渡さないだろう。毎日磨いてる時の顔見てるだろ?完全に悪魔を崇拝してる邪教徒と同じ目をしてんだぞ。下手すりゃ全力で暴れ出すに違いない。

 無理矢理奪おうとしたものならどんだけ死人が出るか分からない。そんな事になったらこの国で全員まとめて処刑されてしまう。


 奇跡の石がバレないように祈ってディッドを見た。




懐をさすりながら目を泳がせている。




バレバレだった。

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