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第13話 いざ、新しき冒険へ

「あのね〜、アル〜。怒らないで聞いてほしいんだけど〜。」



 ……再び、冒険が始まる……

これから俺達を待ち受けるものは一体何か?

どんな困難が襲いかかってくるのか?

はたまたどんな強大な敵が行く手を阻むのか?

 


答え。

理不尽なディッド。

ディッド

マジでディッド。



「なんだって?」

 俺の前で正座をしている二人がいる。


「だから~、この宿を今日には出発して早く旅をしなきゃいけなくなったんだよ。」

 俺達は大金持ちなはずなので、これくらいの宿屋なら何年滞在したって問題ないはず。何かこの街で都合の悪い事があるのだろうか?


「もう資金がないからね。」

 そうか、資金がないならしょうがない。大金持ちにもやんごとなき理由は存在する。


 …でも、資金があるのが大金持ちだよな?


「でも、借金作る前にラッキーが止めてくれたから良かったよ。流石ラッキー!頼りになるぅ〜。」

 そうだな、借金がなければ先に進めるよな。

いつまでも同じところでウロウロしてられないしな。うん。



 …どうやら奇跡の石の効果を試したく、俺が倒れた後に賭場へと向かったらしい。

 最初は勝ってたらしいのだが、あれよあれよと元手は減っていったらしく、本気でヤバイと感じたラックバードが慌てて止めたらしい。


「あのさぁ、毎日磨き続けるって言ってたよな?なんで一日も経たないで効果があると思った訳?」

 納得できる理由が返ってくるはずは無いだろうが聞かずにはいられなかった。


「いや~、少なくとも何かしらの実感があるんじゃないかと試したくなったんだよね〜。ほらぁ、採りたてでも奇跡の石には変わりないわけだしねぇ……ね。」

 残念だが納得できる理由は返ってくることは無かった。


「はぁ…もう、その奇跡の石もいっそのこと売………」

 俺は冒険者と呼ぶには力もないし特別な能力がある訳でもない。

そんな俺でも察知できるほどの殺気が目の前から発散されていた。


「しょうがないな。一応準備できる分の金は残ってるようだし、次の街に向かうとしようか。冒険が俺達の本分だからな。」


 平静を装いながらこの話を切り上げることにした。俺はまだ死にたくない。

…それよか仲間に向かって放つ殺気じゃない。マジで理不尽だ。そして本気で怖い。ラックバードも引いている。更に憐れみの眼差しで俺を見ている。

 魔物ならともかく、人間相手でこの殺気を向けられるのってよっぽどの相手じゃないか?普通の人なら恐怖で失神してもおかしくないと思うぞ。


 そう考えると、俺も特殊な能力を持ってるんじゃないかと思えてきた。





「それでは、私はここでお別れですね。」

「なんで?」


 ラックバードの言葉に間髪入れずディッドが返す。ああ、この口調、この間。俺はよく知ってる。そうなんだよな、早い段階でディッドは心を許してたんだよな。


 と、言うことは…


「早く準備してとっととみんなで向かおうよ。」

「あ、ハイ。分かりました。」


 勢いに押されたのだろう。ラックバードは素直に返事をしてしまっていた。何かを訴えるよにこちらを見てきたので…


「ラックバードさんの旅の目的って何なんですか?」

「世界を廻り、何か大きな事を成し遂げるために旅をしているのですが……そう聞かれると何とは…今の所……ハイ……」


 なんだ、やはりこの男も理不尽大魔王と根底では共通するところがあるんだな。曖昧すぎるし無計画すぎる。

 まあ、アレは既に逃がそうとは思ってないだろうな。


「もう歴とした仲間なんだってさ。再度改めてよろしくって事だな。」


「!ハイ、こちらこそ、改めてよろしくお願いします!アルゼさん!ディッドさん!」


「ほら〜!さっさと行くよ〜、二人とも〜!!



 これからは3人での旅が続く事となった。

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