第12話 効果と効用
「コッチが見つけたかったのに〜。」
恨めしそうにディッドが俺を睨む。
「まあまあ、目的は果たせたのだから良いじゃないですか。」
ラックバードが嗜めてくれる。こういう時は味方をしてくれて安心する。
それに、何故かディッドはこの男の言う事を素直に聞く。その何分の一でも良いから俺の希望も聞いて欲しい。切実だ。
「一応街に帰ってしっかり鑑定してもらおう。間違いは無いと思うけどね。」
今迄見たこともない光沢を放ち、また龍の鱗も及ばないくらいの深いグラデーションを携えている。宝飾品に興味はないが、流石にこれは見ているだけで息を呑む。
「それと、龍を殺しちゃったことも言わないとダメかもな…‥」
そう簡単にはお目にかかれる魔獣ではないので、ここはしっかりと報告すべきだろう。しかも、卵まで持って来てしまっている。この山の生態系にも影響が出るかも知れないし。
まあ、この辺りの色々な種を軒並み叩き潰してしまったので今更ではあるんだが……
でも、一つ忘れてたことがあった。ここに最初に来た時の事を……
「やっぱり、ここから降りるしか無いんだよな…」
俺は現実感が全く感じない程の景色を見下ろしている。自然に吸い込まれていく様な錯覚に落ちてゆく。
何だったらいっそ落ちて楽になってしまおうかと思ってしまうくらいだ。
「大丈夫だよ、アル。降りるほうが全然すぐだよ。
ラッキー、ちょっと先で安定した場所に着いたら合図してね。」
「!はいはい。何となく分かりました!」
そう言うとラックバードはスルスルと崖を下っていき、おもむろに手を振る。
その様子を見ていた俺の身体には覚えのあるロープが巻かれていた。
確かに降りるのは早かった。
異常な身体能力を持った二人がキャッチボールをしながら降りてくるだけだしな。
体に巻いてあるロープも万が一用の命綱であって、基本的には放り投げられキャッチされの繰り返しだった。
しかも、慣れてくるとリズムがどんどん上がっていく。マジでこの二人遊んでるだろ?
失敗したら俺、死ぬんだけど………
悪魔が2体に増えたのを確信した。
「すまないが、これが奇跡の石かどうか鑑定してもらいたいのだが。」
ディッドは俺達以外の人にはやや高圧的に対応をする。確かに本来の雰囲気と言動がハイレベルな冒険者感を出していて都合がいい。
そして、街に着くや否や鑑定した結果、間違いなく奇跡の石との事だった。
「良かったな、で、その石は何に加工するんだ?
刀に打てば魔力をおび、鎧にすれば何でも弾き返す奇跡が約束されるって言ってたぞ。」
「なんで?」
俺、意味不明なこと言ったかな?
普通自分だけの武器とか神秘の力が宿るとかってロマンじゃないの?
鑑定してくれた人でさえうっとりとした目で教えてくれたじゃない?
「それじゃあ、どうすんだ?それ。」
俺には理解できない答えがあることを思い知った。
「んふふ、この石をさ〜、毎日磨いて大事に大事にしてあげると物凄く運気が上がるんだってさ〜。そしたらさぁ、きっとコッチは負け無しじゃん?凄くない?ンフフ〜。」
さっきまでの威厳など一欠片もない言動と表情に俺は脱力感が一気に襲ってきた。
「だからさ~。
この石を盗むやつがいたら確実に コ ロ ス。」
俺は意地でもその石に関わらないことを決心した。
「それで、あの龍の卵はどうでした?本物かどうか鑑定する方法はあるのでしょうか?」
ラックバードが聞いてきたのだが、何かしらの方法があるらしい。俺達には教えてくれないが、その代わり俺達は大金持ちである。この事実が本物の証拠だろう。そう伝えた。
これだけの収入があったのだ。しばらく悠々自適な生活をして趣味で旅するのもいいだろうな。ハングリーさは無くなるかもな。元から無いけど。
「俺はもう限界だからな。石や金貨、盗まれないように管理しといてくれよな。あとは、……」
色々言いたいことがあったが、本当に限界は越えていた。どこで落ちたかも思い出せないが、気が付くとベッドで寝ていた。
多分あいつらが運んでくれたのだろう。ふかふかの布団に包まれ至福の時間を過ごしていた。
もう暫くゆっくりしてから旅立とう。
それくらいの贅沢をしても許してくれるだろう。
そう心に決めた時、窓の外から希望の光が差し込んできたような感じがした。




