表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第二部【王都陰謀編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/127

第四十三話:館からの帰還と、魔女の憂鬱【前編】

 王都へ帰ると、俺は王都にあるギデオン殿の私邸に伺った。どんな話し合いをしたのかを後見人であるギデオン殿に報告しなければならないからだ。もちろん言える範囲でのことになる。ギデオン殿やセレスに隠し事をしなければならないことに、心苦しさを感じていた。


 門の前にはセレスが、そわそわと落ち着かない様子で待っていて、俺が馬車から降りると駆け寄ってきた。


「ライル様、ご無事のご帰還で安心しました」

「ご心配をおかけしました」

「……それで、どんなお話をされたのでしょうか?」


 その時、屋敷の方からギデオン殿の声が聞こえた。


「セレス! 帰ったばかりのライル殿になにか!そもそも 外でする話ではないだろう!」


 セレスはその声に飛び上がるように反応した。


「も、申し訳ございません。つい慌ててしまい。どうぞ屋敷の中へ。お食事の用意もできています」

「ありがとうございます。それは助かります」


 俺はなんだかぎくしゃくと動くセレスの後について館に入った。テーブルには俺用に野菜やそば粉などを使った食事と、普通の食事が程よく並んでいた。ギデオン殿は椅子から立ち上がると、「お疲れであろう。食事でもしながら話を伺わせてもらえるか」という言葉に、俺が礼を言って椅子に座ると、椅子をひとつ置いた隣に、後からついて来たセレスが座った。彼女は先程とは別人のように、俺の方を見ずに目の前に置いてある、野菜を煮込んだスープに集中しているように見える。

 全員がテーブルについたところで、最初に口を開いたのはギデオン殿だった。


「それで、どうであった?」


 俺は水差しからコップに水を注ぎながら、


「綺麗な方でした」と答えた。

「ほぉ」


 と応じるギデオン殿の声に、セレスがスープを取ろうとしてスプーンを落として出した(がちゃり!)という音が重なった。ギデオン殿は軽く咎めるような目でセレスを見つつ話を続ける。


「その他にはどんなことが?」

「色々俺のお考えを聞かれて、弟子になりたいとおっしゃいました」

「なに!?」


 と大きな声を上げたギデオン殿の横で、水を飲んでいたセレスがむせて、ごほん、ごほんと苦しそうに咳をした。


「王太子殿下がライル殿の弟子になりたいとおっしゃったのか!?」

「はい」

「それで、ライル殿はなんと!?」

「『弟子というのは分かりませんが、お教えすることは構いません』と。もちろん陛下のご許可が出ればということでですが」


 ギデオン殿とセレスが驚いた目で俺のことを見ていた。その時、二階へと続く階段から声がした。


「幽霊太子様がライル様の弟子にですか。これはまた面白いですわね」


 声の主はルナだった。銀色の髪に金の瞳を輝かせて階段を下りてくる。今日は学校の制服を着ていた。深い紺色のガウンは銀色に縁取られ、この色で学年を示している。自分の髪と同じ銀色でルナはお気に入りらしい。そして、胸元には学年首席にのみ与えられる白銀の水晶があしらわれたブローチが、彼女の才能を誇示するかのように輝いている。


「ルナさん、ご無沙汰しています」


 ギデオン殿やセレスとは日常的に会うが、ルナと会うのは久しぶりだった。彼女は階段を下りると、にっこり笑いながら当然のようにセレスと俺の間に空いていた椅子に座った。セレスがなにか抗議の声を上げようとするが、その前にルナが口を開いた。


「いかがでしたか? 王太子殿下は噂通りのご病弱でしたか?」

「……いや、健康そうに見えた。それに……」


 ルナが金色の瞳を輝かせる。


「それに?」

「とても、芯の強い方だと思った」


 俺の答えに、ルナは、その金の瞳を興味深そうに細めた。


「……ふぅん?芯が、強い……ねぇ」


 その後は、冷静さを取り戻したギデオン殿に、差し障りのない範囲で殿下と話したことや、明日陛下に一人でお目にかかって今日あったことやアレクシウス王太子から、自分の弟子になりたいという申し出があったことを伝えるつもりであることを話した。それから隣りに座るルナを見た。いつもに比べて口数が少なく、元気がないように見える。


「ルナさん、なにかあったのですか? お疲れのようですが」


 フォークで皿に取った豚肉を突いていたルナが、目を瞬かせて俺の顔を見た。


「あらやだ、そんな風に見えますか?」

「ええ、少し」


 隣のセレスも改めてルナの顔を見る。


「本当だ、あなた大丈夫?」


 ルナは珍しく「う〜ん」という風に、何を言おうか迷っている様子だったが、やがて何事か決意したように、居並ぶ全員の顔を見渡した。


「ちょっとね、学校の方で」

「また、なにかやったのか!?」


 ギデオン殿が気色ばんだ声を上げた。成績は抜群のルナだが、素行不良が重なり、除籍も検討されていたところを、クーデターの際の働きぶりを陛下に認められ不問とされたことがあるのだろう。


「お父様、違います」


 とルナは軽く手を振ってこれを否定すると、少し声を潜めて話し出した。


「……実は私の学校で、最近、行方不明者が出ているの」

お読みいただき、ありがとうございました。

「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークや、ページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります。


次回は本日の23時の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ