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病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第一部【王都クーデター編】

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第三十一話:混乱、混乱、また混乱【後編】

 観客席に辿り着いた俺は、真っ直ぐ階段を登り始めた。

 途中、不思議な気配を持った老人とすれ違った。見た目は老人なのだが気配はもっと若く、なにより巧みに気配を隠そうとしていることに驚いた。幸い何もなく進むことができた。

 更に進んだところで、アークライト家の稽古場で会ったユリウスが斬り掛かってきた。あれ以来、今日まで姿を見ていなかったので少し心配していたのだが、元気そうで安心した。とは言え、今はとても稽古に付き合っている時間はなかったので、悪いと思ったが軽く足を掛けて、そのまま進んだ。

『間の悪いが悪い奴に情は無用』

 と師匠は言っていたが、また機会があればちゃんと稽古に付き合おうと思う。


 そのまま階段を登りきったところに彼はいた。

 彼の身を守るべき人は誰もおらず、孤独だった。

 豪華な椅子に座ってはいたが、その瞳は虚ろで力がなく、肌の色も土気色でとても生者のものとは思えなかった。なによりも気が薄くスカスカでまったく手応えがない。それでも俺が目の前に現れたことは分かったようで、ゆっくりと視線を俺に合わせようとしていた。

 俺はしゃがみ込むと、できるだけ彼を驚かせないように足元に静かににじり寄って声を掛けた。


「……顔色がお悪いようですが、大丈夫ですか?」

 俺の問いかけに対して、彼の中に恐怖が生じるのを感じた。

 俺はそれ以上近づかずその場で、できるかぎり自分の気が透明になることを意識した。スッと周りの喧騒が遠くなる。そのままの状態で何もしようとせず、ただ自分の透明な気を彼が受け入れてくれるのを待つ。

 暫くすると薄く軽く触れただけでも砕けてしまいそうだった彼の気が、僅かだが彼自身の存在の輪郭を取り戻しつつ、俺の透明な気を受け入れる気配がした。


「手をお貸しください」

 俺の言葉に彼はゆっくりと右手を差し出してくれた。 俺は両手でその手をそっと包んだ。彼の手は冷たく酷く慄えていた。

「大丈夫です」

 俺がそう言うと、彼はわずかに頷いた。


(第三十一話 了)

お読みいただき、ありがとうございました。

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次回は明日の11時の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

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