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病弱だった俺が謎の師匠に拾われたら、いつの間にか最強になっていたらしい(略称:病俺)  作者: 佐藤 峰樹 (さとう みねぎ)
第一部【王都クーデター編】

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第二十八話:三人の罪人と、裁きの始まり【後編】

 観客の熱狂に応えるようにゲルハルトが声を上げる。

「その前に、改めて今日の処刑人を紹介しよう。一人目!『牛殺しのゴーム』!もともとは牛の屠殺を生業にし、その一撃で巨大な雄牛を叩き殺す腕力を、酔って人に振るい人殺しで捕まった死刑囚である。しかしその腕を惜しまれ、いまではその巨大な戦斧で、百人を越える罪人を裁いた処刑人! 既に見た通り、その一撃は鎧兜ごと体を打ち砕き、後には肉片が残るだけ。文字通りの最悪の屠殺人!」

 牛のような角がついた兜を被り、ジークの血が滴り落ちる戦斧を担いだ大男が、首を大きく回しながら、地を踏み鳴らしながら進み出てくる。


「二人目!『双刀のケイル』! その名を口にするだけで、南の海洋都市国家群スーフラの商人たちが震え上がらせた、最悪の海賊! 海荒れる南方海域で、暗殺術と二刀流を極めたこの男は、その動きから『海の毒蛇』と呼ばれ恐れられた。 此奴が操る二本の毒々しい曲刀は、一度(ひとたび)獲物を捉えれば、嵐のように、あるいは毒蛇の牙のように、止まることなく相手を切り刻む! 拿捕した船の乗組員を、一人残らず惨殺し魚の餌にしたことから、『究極の惨殺者』としてスーフラ海軍から指名手配されていた男!」

 小柄だが蛇のようにしなやかな体つきの男が、二本の毒々しい曲刀を構えこちらを睨めつけてくる。


「三人目!『幻惑のモーウェン』! その出自、性別、年齢、一切が不明!ただ一つ確かなことは、この者が、人の精神を内側から喰い破る、最悪の幻術使いであるということのみ! かつて、北の部族連合との戦いで、たった一人で敵の一大隊を一夜にして壊滅させたという伝説を持つ。僅かに生き残った者は、皆、仲間同士で殺し合った末に発狂していたという。そのあまりに危険な能力ゆえに、普段は魔力を抑える『封魔の指輪』をその指にはめることを義務付けられている魔人! だが、今日、この御前試合に限り、特別にその指輪を外すことを許可する! 罪人ライル・アッシュフィールドに、最悪の悪夢と、永遠の狂気を与えるのだ!」

 性別も分からない、不気味な仮面をつけた人物が、ゆらりと陽炎のように立っていた。骨ぎすの左手にはくすんだ銀色の指輪がはめられている。それを右手で取り外すと、ポトリと地面に落とした。

 その様子に観客席からは、恐怖と興奮が入り混じった、地鳴りのような歓声が上がる。


 長い口上を語り終えたゲルハルトが、聴衆の反応に満足するように見回すと、マルディーニを見て一度、頷く。それを見たマルディーニが腕を大きく振り下ろす。


「――それでは、始めぃ!!!」


(第二十八話 了)

お読みいただき、ありがとうございました。

「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークや、ページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります。


次回は明日の11時の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。

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