第二十五話:国家転覆(クーデター)計画と、変わる時代【前篇】
「どういう意味だ?」
ギデオンの声には、いい加減なことを言うことは許さんという響きがあった。
ルナはにこりと笑うと、それに臆することなく答える。
「そもそもおかしいではありませんか。なぜライル様が御前試合に引き出されるのか? シャルロッテ様襲撃の犯人として裁くのであれば、普通に処刑すれば良いことです。それをわざわざ病床のヴァレリウス王の前に引き出すのがおかしいのです」
そこでルナはセレスに向き直る。
「お姉様の夢は御前試合で勝つことでしたね」
突然、話を振られたセレスが驚きながらも答える。
「え、ええ。剣士としての誉れは王をはじめ六王家が居並ぶ御前試合で自らの実力を示すことですから」
そう言ったセレスがはっとした。
「御前試合には陛下を含む六王家が集る!」
ギデオンがイザベルの顔を見て、
「それが狙いか」
と言った。
イザベルが口を開く。
「ギデオン殿、御前試合の日時については何かご存知ですか?」
ギデオンが腕を組み答える。
「十日後の十時と聞いている」
イザベルの眉間に皺が寄る。
「随分急ですね……。通常御前試合の布告は最低でも一月前に布告されるものですが、その日程では辺境のアイゼンハイド家や、ヨーク家が参加するのは難しいでしょう」
ギデオンが、
「……むしろそれが狙いか」
と呟いた。
「どういうことですか?」と尋ねるセレスにイザベルが答える。
「恐らくアイゼンハイド家とヨーク家は、急であることと、名も無い罪人を引き出しての御前試合ということを理由に王都に居る代理人を出席させるでしょう。となると実質的には、陛下のアウレリウス家、ヴァレンシュタイン家、ベルンシュタイン家そしてランカスター家の四家のみとなります」
その後をギデオンが続ける。
「そのうちのヴァレンシュタイン家とベルンシュタイン家が何かを企んでいる。ランカスター家は本来は王への忠誠は厚いが、先日のシャルロッテ様の襲撃事件で疑心暗鬼になっているうえ、その犯人が御前試合に登場するというのでは落ち着かんだろう」
「まあ、御前試合とは名ばかりで処刑でしょう」
イザベルがざくりと言い放った言葉に、セレスが息を呑む一方で静かにギデオンが頷く。
「間違いなくそうだろう。……つまるところこれは、ルナの言う通り口実だ。そして本当の狙いは……」
「クーデターですわ」
その言葉で再び全員の視線を集めたルナが満足そう笑った。
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