第十四話:別れ。仕組まれた罪と、囚人護送馬車【前編】
あの後、俺とセレスは、ロッテを起こさないように、床に転がした暗殺者二人を、音もなく部屋の外へと運び出した。その物音を聞きつけたのか、あるいは廊下で見張りをしていた騎士が異変を察知したのか、ギデオン殿とイザベル隊長が駆けつけてきたのは、その直後だった。
状況は、最悪だった。
宿の裏手、俺たちの部屋の窓の下で、見張りをしていたはずのイザベル隊長の部下である騎士が、喉を掻き切られて絶命していたのだ。侵入者は、外の見張りをまず静かに始末してから、俺たちの部屋へ忍び込んだらしかった。
捕らえた二人の暗殺者から情報を引き出すべく、俺たちは彼らを宿の地下にある貯蔵庫へと運んだ。
「……何者だ。誰の差し金だ」
ギデオン殿の厳しい問いに、男たちはただ不気味に笑うだけだった。そして、イザベル隊長が尋問のために彼らの猿轡を外した、その瞬間だった。
二人は、示し合わせたように、奥歯に仕込んでいたのであろう毒薬を噛み砕いた。口から泡を吹き、全身を痙攣させると、あっという間にその命を絶ってしまった。
結局、俺たちは何一つ、情報を得ることはできなかった。
翌朝、俺たちの隊列は、重い空気の中で宿場町を出発した。
俺と、彼に寄り添うロッテ以外は、みな一睡もしておらず、その顔には疲労の色が濃かった。
道中で亡くなった護衛、アンナ、そして騎士団員の亡骸については、王都から正式な部隊を派遣して引き取ることとし、宿場町の教会に預けていくことになった。
半日ほど街道を進んだところで、道の向こうから、砂埃を上げて近づいてくる一団が見えた。
それは、十数騎の騎士たちと、数台の馬車を含む、大規模な部隊だった。先頭には、ヴァロワ公爵家の紋章と、王立騎士団の紋章が掲げられていた。
お読みいただき、ありがとうございました。
「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思っていただけましたら、ブックマークや、ページ下の【★★★★★】から評価をいただけますと、大変励みになります。
次回は本日の23時の更新を予定しております。またお会いできると嬉しいです。




