「私達日本語話せます」に騙されてアテネの旅行社に入店してしまった話
ギリシア滞在中、普段の昼食は屋台のギロ(ケバブに似た肉と野菜を一緒にピタやパンに挟んだサンドイッチ。店によって具やソース・肉の種類などが違って毎日食べても飽きなかった)とミネラルウォーター、とかで済ませていた。
でもアクロポリスに行った帰り道、モナスティラキで客引きしていたおじさんに捉まって飲食店で串焼き肉を注文してしまった。ピタ、オニオンとハーブのサラダ、フライドポテトとセット。
リスト片手にワインを勧められたので、ハウスワインもボトルで頼んでしまったよ。
ギロならひとつ100~200ドラクマなんだけど、二人で4534ドラクマも使ってしまった。
毎度こういう押しに弱いところが悪いと反省するんだけど、性分はなかなか治らない。同行の友人も似たようなもの。
ちょっと酔っぱらっちゃってるなぁ、と思いながら日本人がやっていると聞いた旅行代理店へ足を運んだけど
「あちゃ……?!」
地図を頼りに探し当てた店舗に「移転しました」の張り紙。
移転先の住所をメモしていると、向かいの旅行代理店から貫禄たっぷりのおばさんが二人出てきて
「私達日本語話せます。どーぞ、どーぞ」と言う。
なんか、あんまりにもパワフルなんで気圧されて店に入ってしまった。
店内にはおばちゃん達と対照的に痩せたおじさんが一人いて、さっきの「日本語話せます」はどこへやら、3人で交互にマシンガンのような英語を浴びせかけてくる。
こっちが目を白黒させている間に、「ここと、そこに行って、あ、移動や観光が続くと疲れるから何もしない日をいれて……」っていう大雑把なこちらの希望を聞き出して、あっという間に行程表を組みあげてしまう。そして
「全交通、全宿泊、全朝食付きで、なんの面倒もない。ホテルはデラックス! しかも朝食は豪勢なアメリカンブレックファスト!」
と一人が一気にまくし立てると、もう一人が
「ベーコンエッグに大きなソーセージ、フルーツ入りのヨーグルト、コーンフレーク、ジュースにコーヒー……」
なんか、ミュージカルみたいにリズミカルに畳みかけてくるんですけど……。
「うちで手配していけば、現地で個別に手配するよりずっと安い! おまけに安心!」
「ホテルから空港へも車で送るよ」
映画のワンシーンかと思えるような息のあったパワフルな口上に圧倒され、気が付くと高額な布団を買わされた年寄りのように三日後からのエーゲ海巡りの手配を申し込んでしまっていた。
空港までの送り、アテネからクレタ島のハニアまでの飛行機、イラクリオン→サントリーニ島→ミコノス島→アテネのピレウス港の船、朝食付きのホテル、15泊16日を1人75350ドラクマで。
アテネの宿が一泊1250ドラクマという事を踏まえて店を出てから計算したら、飛行機代と船賃を含めても、当初予定していた通り行った先々で安い宿を探す方が余程安くつく。
うわーっ、やってしまった!
でも一部クレジットカードで払ってしまったし(取り消しておくと言われてカード利用料だけ引かれてしまったら目も当てられない)、英語で取り消し云々の交渉をする気力もない。
本当にデラックスホテルなら確かに安いと思うし、予算オーバーには目をつむってホテルの質と朝食に期待するしかないか、と契約してしまった事自体は受け入れたのだけど、あれ? ハニアからイラクリオンまでのバスがセットされていない、と気づいて店に舞い戻った。
「全交通付きって言ったじゃない!」と頑張って、追加料金なしで長距離バスのクーポンをゲットした。
こちらの言いたい事がポンポン言える英語力はないのに、早口でまくしたてられても相手の言っている事は大体わかる(お馴染みのトラベル用語がほとんどだったし、むこうも心得ていて難しい言い回しは使わない)、っていうのは何て言うか……。
押しに弱い性格なのが悪いんだけどね。酔ってちょっとばかりボーっとしてたし。
結局「私達日本語話せます。どーぞ」以外の日本語を聞く事はなかった。
ホントはアント・ツアーズっていう名前だったんだけど、おばさん二人の体格とパワーで「どすこいトラベル」とあだ名をつけた。
1991年の出来事。当時1ドラクマ90銭しない感じかな。両替した日によっては82銭くらいの事も。
結局、この契約を後悔する事になりました。エーゲ海巡りに関する話はまた後日。




