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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

些細なこと

作者: 吉姜


「敏感すぎるよ」

「そんな些細なことで、心が折れるわけがない」


そう言われる。


一度、話を遮られただけ。

食事中に、一言、嫌味を言われただけ。

質問しても、誰も返事をしなかっただけ。

あるいは――もう一度、こちらを見ただけ。


「それの、何がそんなに辛いのか?」


彼らは、そう聞く。


知らないのだろう。

「些細なこと」が起きるたび、

まだ前回のダメージを引きずっていることを。


痛みは、突然やってくるものじゃない。

積み重なる。蓄積される。


眠っている間も、夢の中で責められる。

目が覚めた瞬間、また一発食らう。

それを、毎日繰り返している。


私はガラスじゃない。

穴だらけのまま、まだ崩れきっていないだけだ。


笑おうとした。

黙ろうとした。

「大げさすぎるのか」と自分に問いかけたこともある。

感じないようにしようとしたこともある。


だが、感じる。

消せない。


言葉の裏にある失望。

声のトーンに混ざる苛立ち。

一度も本気でこちらを見たことがない、その目の奥の空白。


彼らにとっては、「ただの生活の一部」。


私にとっては、世界の屋根が崩れていく音。



---


昔は思っていた。


自分が弱いからだと。

みんなは笑って流せるのに、

自分だけが立ち止まり、痛み、涙を流す。


自分が悪いのだと。


だが今は分かる。


――敏感すぎるのではない。鈍すぎるのだ。

――脆いのではない。正直なだけだ。


「これは本当に痛い」

そう認めることで、生き延びている。



---


だから書く。


すべての目線。

すべての言葉。

すべての「些細なこと」。


書き残すのは、復讐のためじゃない。

誰かに理解してもらうためでもない。


自分自身に刻むためだ。


> 「これは、些細なことじゃない。

痛いのには理由がある。

まだ書いている。まだ呼吸している。

それが勝ちだ。」





---


もし、今苦しんでいるなら。


「大したことじゃない」とは、もう言うな。

「考えすぎかも」とも、「手放さなきゃ」とも、言わなくていい。


間違っていない。


目を覚ましている者は、傷つく。

それだけだ。


忘れるな。


> 「これは、些細なことじゃない。

お前は、確かに前に進んでいる。」


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