58 戦後処理
黎明国に帰還したのは、なんやかんやあって数週間後となった。
なんでこんなに遅れたんだって?
ナモーの腕をどうしても戦利品として持ち帰りたい奴らのせいで遅れたんだよ。
で、結局、無茶をしたせいで魔障になった奴らが若干名。馬鹿じゃーんということで、教会に立ち寄って治してもらい、これ以上持って帰るのが無理だから焼却処分──って出来事があったんだよ。
獣王国との取り決めも行った。代表団との話し合いの場を設けて話し合った。
本来ならそれがもっと長くなる予定だったんだが……獣王国側には俺の話が先に行ってたし、汎人の代表もソラだからパパパッと終わった。
で、王国に帰国後にソラがその書面を王国に報告! 以上! 戦争が終わり!
……という訳にもいかないのが現実でな。
「勇者様。これはどういうことですかな」
「書面通りです、陛下」
あんな柔和な表情の陛下がちょっと怒ってるこわーい。
今は小太り王が用意した貴賓室でお話中。使用人は若干名、従卒数名、仲良し貴族が4名ほど。数に圧倒されてるよ~、こわーい。
『怒るのも無理はないぞ、バーバよ……!!』
クディは小太り王の後ろに周り、書面を見ながら深刻そうな顔。
まぁ、そこが指摘されるのは想定済みだ。
それがなにかってのは……小太り王が今から読み上げるから待っておく。
「なぜ、獣王国を手中に収め、王女を娶るという話になったのですか!?」
『ブハハハハハハハハ!! 声に出されるとヤバイのぅ!! ハハハハ!!』
腹を抱えて笑うクディに釣られそうになったので目を伏せて堪えた。
息を整える。細く長く息を吐き出したら、少しはマシになった。
だが、声が震えているかもしれないから低い声で。
「……それが必要だと思ったからです」
「なぜですか」
王様も苛つきすぎだろ、眉間のシワすっご。あー、おもしろ。
ふぅ、はぁ……ふぅ。あー、しんどい。いつまで笑ってんだよコイツマジで。
真面目モードに入ってんのこっちは。邪魔すんなよ。邪魔すんなって。
「……獣が暴徒となれば、この国は多大な被害を被ることになります」
よし、一言言って休憩だ。
『書面に書いておらんことをそうべらべらと喋れるもんじゃのぅ』
(うっせーよ、書いたらあぶねぇだろ)
『お主自身に疑いがかけられたら一発でバレるからじゃな?』
(だ)
『適当な返事するな阿呆め!』
書面には重要なことはほとんど書いていない。
というか、砦で話した内容のほとんどは伏せてもらっている。特に「魔族が内側に入り込んでいるかもしれない」という事情は一文字も入れていないし、掠った内容も示唆するような内容も書いていない。
書いた結果、全員に破邪の魔法をしましょう! ってなれば……なぁ? 我慢できる痛みじゃねぇんだよアレ。
あと、どうせいるだろ、魔族。この部屋にも息のかかった奴がいるかもしれない。いた場合、変な話をしたら計画を全否定されるだろう。なんか変なことしてんなーと思われた方が俺としては動きやすいのだ。
「獣が暴れたとしてもそこまでの被害はないでしょう」
「そこが問題です。獣の王が脳として機能していたからこそ、彼らはあそこまで領地を拡大できた。王がいない獣達を剣王国は容易く始末できる」
落ち着いてきたので、顔を上げて話をしよう。
「剣王国にあの領土を取られると国力が跳ね上がるでしょう」
周りの貴族らの顔色を確認。腑に落ちてそうだからヨシ!
「剣王国が獣王国に戦争を仕掛けた理由はご存知でしょうか?」
「内部の揉め事だと聞き及んでいる」
剣王国の実力主義的な話だな。実績作りで戦争を申し込んだって話だもんな。まぁ、間違ってはないだろう。
ただ……、
「私は鉱山だと愚考します」