04 魔王の呪いだとさ
「では、魔王の呪いということで間違いないようですね」
「封印中になにか仕込んだと見て良いな」
「勇者さまの髪の色と目の色も……。縮んでるのもそうか」
「体の異変は呪いの影響か。教会に協力を仰げば解呪もできるかもしれんな」
「そうですな」
大人たちと鑑定士が話を良いように解釈してくれた。
俺が急に暴れ出したのは──戦争の後遺症ということで片付いたみたいだ。
『戦争の後遺症じゃあ?』
横で魔王が退屈そうにそう話す。
『そうなのか? バーバよ』
「……」
なんかコイツがいるのも慣れたな。
干渉してこないなら別に良い。頭の中に声が響くのが気持ち悪いぐらいだ。泥にまみれるとか、何日も体を洗えないとか、そっちの方が不快だ。
『……なんじゃ、反応がないのぉ』
(クソ、どうなってやがる……魔王が俺の身体を容れ物にしたって!?──って混乱した方が良いか?)
『そっちの方が人間味があるじゃろう。わらわを倒した者にそんな反応を望んではおらんが』
(仲間にどうやって説明しようって心配くらいだな)
『仲間、か。そうじゃな、存分に悩むといい』
(そうするよ)
倒したハズの魔王が身体に乗り移ってて〜と話すか? 馬鹿馬鹿しい。何のために死ぬ気で戦ってきたと思ってんだ。
(……ん)
待て。コレで魔王を倒してないってなったら、国王との約束事はどうなる? 魔王を倒していないから異人種の解放をしないってなったら最悪だぞ……。
(この件は口が裂けても誰にも言えないか……)
とりあえず隠し通すか。
で、だ。
俺の前でそわそわしてるコイツはなんなんだ?
「どうしたの、えーと、えんぺりお」
「ガルーと呼んでください! ロイ叔父様! 魔力について調べるんです!」
ガルーね、了解。呼びやすくて助かるよ。
「鑑定ってもう終わったんじゃないの?」
「さっきのは身体の異変についてでしたので」
ああ、そう言えばそうか。別にコイツになんかしてもらった訳じゃないもんな。
「魔力を調べることで叔父様の状態を確認できるんです! 封印されている間に病気にかかってるかもしれませんし」
病気よりも魔王に乗り移られてるんだが。まぁ、それは良い。
って待てよ? 魔力を測る?
──魔族は魔力が生命力の代わりをしていて、魔力量が多い。
「ちょ! 待て! 魔力は──」
「あ、早速検査結果が……!」
「──!」
終わったー!! はい、終わったー!!
一難去ったかと思ったらまた一難きたよ。一難が折り返しリレーしてやがる! にしては区間短すぎだろーがよ!
「うそっ……!? いや、こんなことって」
そうだよね、そりゃあそんな反応するよね。
どういう原理かは知らんが、俺の身体は魔王の依代。それが魔王のホラだとしても……この刻印が全員に見えてるってことは、少なくとも身体が魔族化しているのは確定している。
「まただ……えーと、えーと……なんでだ? 故障? そんなこと……」
「どうなんだね、検査結果は? 当然、素晴らしい数値が出たのだろう?」
ふとっちょ貴族が横から手を揉みながら話しかける。そんなガキが欲しいものをねだるみたいな顔をすんな、気色悪い。
「陛下、その……」
オマエ陛下なんかい。王族って顔してないだろ。
って、王国ってことは……俺らがいた王国か? でも、顔が違うな。
「どうなんだね? ん?」
「……大変申し上げにくいのですが」
だよなあ。申し上げにくいよなぁ。
「総魔力量が0で、魔力を練る回路もすべてが壊されてしまっています」
「……は?」
「魔力がない……? どういうことだ?」
いや、まじでどういうことなんだよ……。
混乱する横で魔王の噛み殺した笑い声が聞こえた気がした。