表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/60

29 どう考えてもさ……



「お待たせしました。メルトンのおかげで無事に解呪ができました」


 来賓室に戻るとざわざわとし始めた。

 本当に勇者だ、とか。伝説が目の前にいる、とか。

 ガルーに頼って良かった。凄い評判がいいよ、この身体。


『勇者はですね! もっと顔面がしゅっとしていて、髪の毛ももっと長めで!』 


 興奮した様子のガルーの言うことを聞いて姿を変えていったが、本当にこだわりがすごかった。完成したかとおもったら修正箇所が本当に多くて、結構時間がかかった。


 メルトンも終始暇そうだったしな。解呪すると思って準備もしてきてくれてたし。

 

『──よし! これで完成です! 後はこの服を着てもらって!』


『よーし、じゃあ、皆にお披露目と行くか!』


『叔父様! もっと話し口調を丁寧にしてください! 勇者は紳士で冷静で愛情に溢れた人なんですから!』


 といろいろな指摘を受けて、今の勇者像が完成した。


 こんな姿が皆好きなのか。こんな奴、世界のどこを探してもいないだろ。


 魔王を倒したっていう功績から、世界を救った英雄の姿を都合よく考えていった結果、出来上がった男の姿。


 神を見たことないが神を描いた。天使を見たことがないが天使を描いた。ソレと一緒だ。勇者はある種の神格化された存在なのだろう。


(メルトンも別れ際に言ってた。勇者は神と同義だと)


 虚像に塗れ、正しくその姿を知る者はいないというのに、未だに根強く信仰されている存在。それが神だ。


 神がいた時代から生きるエルフにとって【神と同義】という言葉の重みを推し量るのは、俺には難しい。


 まぁ、なんとかなるだろう。出来なきゃ死ぬだけだ。死にたくはないがな!


「お体の方は問題はありませんか?」


「ええ。解呪後に私の姪に鑑定もしてもらったので」


 大嘘ついた。ガルー以外に鑑定されて変なのがバレたら困る。


「では、解呪も出来ましたので、国に帰らせていただきます」


「え、ええ……」


 帰国することになった。帰国と言いながら、このまま獣王国に行くんだが。

 だが、挨拶をしてから代表の笑顔が引きつってる。なんでだろう。

 そんなに鑑定をやりたかったのか?


「きっと、エルフが対応したからでしょうね」


 ジルが耳打ちをしてくれた。


「というと?」


「我々は勇者様の解呪を任せるという恩。そして、彼らは解呪をしたという恩があります。だが、実際に解呪をしたのはエルフ。エルフの技術は我々が理解できない種族魔法が多いでしょう」

 

「あー……そういうことか」


 汎人の誰かが担当をして、俺等へ恩を売る、ないしは実績とする。


 それが異人種となればしにくいのだ。


 異人種に対しての風当たりというのはここも強いだろうし。強引に聖王国の実績とできるだろうが、バレた時に「異人種を頼った」と恥をかくのは避けたいだろう。


 それに、解呪という名目でこの国に拘束をしておきたかった……とかもありそうだし。


「悪いことをした」

 

「気にせずとも良いです。向こうがよしとしたのですから」


 思ったよりもそこら辺が面倒くさそうだな……気を付けないと。

 帰りのリフトに乗る時に後ろを振り返る。

 雲が近く、いくつも塔がそびえ立ち、街には魔法使いが溢れていて、商人のような身なりの者達も見えた。


(なぁ、クディ)


(クディタスじゃ。なんじゃ)


(魔王派閥の魔将は三人いたよな)


(お主らが殺したがな。何を言いたい?)


 ──この国のこの浮遊都市は魔族の力。


(魔将は全員で何人いるんだ?)


(七人じゃの。お主についたのが二人。わしに三人。そして、中立派が二人)

 

 これが普通の魔族にできるとは思えない。となると、魔将の仕業だ。

 だが、その気配が一つもないし、疑問視をしているのも一人もいない。

 

「勇者様? 降りますよ~」


「ああ、分かった」

 

 何がとは言えんが、不気味だ。

 非常に、不気味だ。


(まぁ……知ったことではない)


 問題になってないなら優先度は低い。

 それに、今の最優先は獣王国に行くことだ。

 ……だというのに。


「では、これから勇者様とアンスロ達との戦いを始めます!」


 なんで、こうなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ